[社説]「里親解除」最終報告 指摘を重く受け止めよ

那覇市の夫婦が生後2カ月から5歳まで養育してきた女児の里親委託を解除された問題で、専門家による調査委員会が最終報告書を玉城デニー知事に提出した。
子どもの気持ちを中心にしたソーシャルワークの欠如が、女児、里親、実親をそれぞれ傷つけていたことが改めて浮き彫りになった。
県と児童相談所は、猛省する必要がある。
女児は2016年7月に里親委託されたが、21年12月に実親が委託の同意を撤回。児相は直後に里親へ委託解除を通告し、22年1月4日に女児を一時保護した。
問題を受け、同年4月に設置された調査委員会は、関係者らとの面会やヒアリングを行い、県の関係部に資料提出や説明を求めて最終報告をまとめた。
課題として、一時保護所内で女児の意向が「無視され続けていた」と厳しく指摘する。
子どもの気持ちに主眼を置くべきだとし、実親と里親の良好な関係に向けて児相だけでなく市町村などと連携する必要性に言及している。
児相が弁護士を前面に出したことで里親との対立が深まり、福祉的なケースワークが放棄されたことも批判。
実親の受け入れ環境を考慮せず、女児を戻すよう促した児相の対応についても問題視している。
「常に子どもの権利保障との理念・原点に返る」という最終報告で指摘されたことについて、県や児相は重く受け止めるべきだ。
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最終報告では、課題を踏まえ、六つの改善策を提言している。中間報告と基本的に相違はないが、現行制度では里親の権利がないがしろにされているとし、里親の権利保障に向けた法整備の必要性を新たに盛り込んだ。里親支援制度の導入や里親の声を聞く広聴制度創設も求める。

里親委託を突然解除され、里親と行政との間でトラブルになるケースは全国各地で起きている。里親の法的権利についての議論も必要だろう。
一方で、実親の事情にも十分に目を向ける必要がある。
実親が里親委託に同意できなくなったきっかけは、実親の存在を伝える「真実告知」の調整が児相と里親の間で進まず、数年にわたって女児と会えずに不安を募らせてしまったためだ。実親が女児や里親に書いた手紙も児相止まりになっていた。
委員の一人が指摘した「児相と連携した里親と実親の協働」の在り方についても積極的な対応が求められる。
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調査委員会は「昨年6月の中間報告後、県側が課題改善に向けた提言を具体化した形跡は見えない」と苦言を呈した。調査においても資料要求が難航するなど「組織防衛的対応があった」と指摘している。県や児相の姿勢には首をかしげる。
必要なのは児相の職員を増やし、県外と比べて非常に多いといわれる業務量を減らすことだ。
報告書を受け取った玉城知事は「子どもファーストの観点」からの対応を強調した。県の本気度が試される。