トヨタ自動車が高級ミニバン「アルファード/ヴェルファイア」をフルモデルチェンジして発売した。「高級セダンに匹敵する」とトヨタが自信を示す快適性やプラグインハイブリッド車(PHEV)の追加などトピックは多いが、気になるのは顔だ。フロントのデザインが前よりスッキリと落ち着いて、よくいえば上品になったし、悪くいえばキャラが薄まったともいえそうな今回の顔だが、開発陣はどんな考えで「アル/ヴェル」の表情を決めたのか。発表会で聞いてきた。
○よりギラギラさせる選択肢もあった?
トヨタのアルファード/ヴェルファイア(略してアル/ヴェル)といえば、顔が売れているクルマだ。先代モデルのフロントマスクは銀色のメッキ加飾がギラギラと目立っていて、よくいえば押し出し感が強くて迫力満点、悪くいえばいかつい表情だった。これをカッコいいと思う人もいれば、怖いと感じる人もいたはずだ。では、新型はどんな顔になったのか。
印象としては上品でスッキリとしたシンプルな顔になっている。新型アル/ヴェル発表会の会場でデザインの担当者に聞いてみると、新型の顔はあえてシンプルかつ上質な作りとしたそう。「もっと刺激が欲しい」というユーザーには、メッキ加飾でばっちりきまった顔が作れるアフターパーツを展開するという。
先代の顔は好き嫌いがわかれたと思われるが、インパクトの強い顔つきは個性でもあった。今回のモデルチェンジでは個性を強める方向に舵を切ることもできたはずだが、それをしなかった理由とは何か。トヨタのデザイン担当は「そこは迷ったところもあったんですが、そういうお客さま(ギラギラした顔つきを好むユーザー)には、こちらから何かを与えるというよりも、ご自身で好きなようにやっていただいた方が満足していただけるのではないかと考えました。ただ、アルファード/ヴェルファイアの『強さ』のようなものはなくさないようにしました」と話していた。
フロントデザインで気になるもうひとつのポイントは、新型アルファードの正面のエンブレムがトヨタのマークになっていること。アルファードといえば「α」をモチーフにした専用のエンブレムを装着していたが、新型ではやめてしまったのか?
このあたりについてデザイン担当に聞いてみると、フロントマスク中央のエンブレムをトヨタのマークに統一しているのは全社的な流れだとしつつも、アルファード専用エンブレムが消滅したわけではないと教えてくれた。実は横から見ると、Bピラー(クルマの前席と2列目の間に入る柱の部分)に例のマークが残っているというのだ。
Bピラーの中央というのは、クルマに乗り込む際に必ず目に入る場所だ。そこに専用エンブレムを配することで、乗る人の「所有感」を高めたいとの考えなのだという。クルマのキーにもこのマークを刻印してあるそうだ。
たぶん、ユーザーの中にはフロント中央のトヨタマークもアル/ヴェル専用エンブレムに取り換えたいと考える人もいるはず。そこへのアフターパーツ展開についてはトヨタも検討してみたそうなのだが、とりあえず、今のところは販売していない。まあ、トヨタが作らなくても誰かが作りそうな気もするが……。
アル/ヴェルはまさしく高級ミニバン界の“顔”なわけだが、先代モデルは顔の印象が強すぎたきらいがある。新型はショーファーカーとしての利用も多い高級ミニバンらしく、ボディサイドの面の抑揚にもかなりこだわり、ワンランク上の世界観に持っていくべくデザインを進めたそうだ。新型の顔を見て少し物足りないと感じた人はいるはずだが、それも見越したうえでトヨタが新しく作りだしたアル/ヴェル。先代よりも多くの人に受け入れられそうな雰囲気だと思うのだが、どうだろうか。