「串カツ田中」の常連であれば、今季から導入された“あのソース”がウマすぎることに気づき始めているはずだ。しかし、あれがどんな経緯で開発されたかを知る人はそう多くないだろう。
“あのソース”とは、7月から店頭に置かれるようになった串カツ用ソース「串ポン」のことだ。実はこれ、味ぽんで知られる「ミツカン」が串カツ田中と共同開発したものなのだが、ソースのラベルや店内のポスターに「ミツカン」の文字はない。多くのユーザーは、ミツカンが関係しているとは知らずに舌鼓を打っているのである。ミツカン、なんて奥ゆかしいんだ。
「串ポン」の登場を記念して、8月7日、串カツ田中 有楽町店でミツカンの吉永智征社長と串カツ田中の坂本壽男社長のトークイベント兼試食会が開催された。そこで明かされた「串ポン」誕生の背景とは――。
○■「串ポン」の登場は、社長同士の“居酒屋トーク”がキッカケだった!
「『どうやら串カツ田中の社長が若くて爽やかな人間に交代するらしい』ということを聞いていたのですが、たまたま共通の知り合いがいたので、一緒にお酒を飲むことになったんです。そこで、『もうちょっとさっぱり系のソースがあれば、お客さんはもっと串カツを食べられるんじゃないか』という話をしたら、『それでは一回、提案してください』と言ってくれて……」
ふたりの出会いについてこう振り返ったのは、ミツカンの吉永社長だ。
一方、串カツ田中の坂本社長は「ぜひ、串カツ田中のソースをミツカンさんに作ってもらいたいな、と思ったんです。実際に提案していただいたときは、3種類くらいソースを持ってきてくださって。その中でもこの『串ポン』が一番美味しかったので採用することになりました。試作段階では30種ほどの串カツ具材との食べ合わせもしたと聞いて驚きました」と応じた。
そうして完成したソースは「串ポン」と名付けられたが、このネーミングについて坂本社長は「何種類か候補はあったのですが、串ポンは『単純だからこそ覚えてもらいやすい』と思って採用しました。やはりシンプルな名前のほうが浸透しやすい気がしますね」と主張。吉永社長は「今は検索しやすさなども大事ですからね。面白くて覚えやすいと、お客様が勝手に調べてくれますから」と同調した。
また、ソースのラベルやポスター上で「ミツカン」の名前を伏せたことについて吉永社長は「たとえば、『この店のラーメンは◯◯食品の乾麺を使用しています』なんて書かれていたら、お客さんが冷めちゃいますよね。こういう場合、企業名を入れないほうがいいと思いました」と理由を明かした。
○■野菜や白身肉にめちゃくちゃ合う! 「串ポン」を実食してみた
実際に串カツを「串ポン」で食べてみよう。吉永社長によると、「野菜や白身魚、豚肉に合う」とのことである。
さっそく「玉ネギ」や「なすび」にかけて食べてみると、確かにこれは合う!
「串ポン」はりんご酢、米酢、醸造酢の3つをバランスよく配合しているらしく、爽やかな酸味とともに、まろやかさ、フルーティーさなども感じられる。同時に濃厚な甘みも感じるが、これは野菜やりんご酢に由来するものだろう。野菜の串カツの甘みともマッチしているし、串カツの脂っぽさが大幅に軽減されているように感じる。これならどんな串カツでもさっぱりと食べられそうだ。
続いて、「アジフライ」や「串カツ豚」にも「串ポン」をかけてみることに。
吉永社長の言うように、これも本当によく合っている。魚や豚は基本的に、味のベースが淡白だからか、「串ポン」の爽やかな酸味と甘みがダイレクトに感じられるようだ。もちろん、「串本」によって魚や豚の旨味もより一層引き出されてもいる。
追加で届いたのは、坂本社長の“推し”だという「豚ヒレ」「レンコン」「餃子豚巻き」の3種類。「餃子豚巻き」は豚肉で餃子の餡を巻いた新商品だという。
実際に「餃子豚巻き」を「串ポン」食べてみると、とてもジューシーでニラと豚の旨味がじゅわっと溢れ出してくるではないか。ジャンクな旨味がたまらない一品だが、「串ポン」をかけたことで後味は驚くほどすっきり。これもものすごく相性がいい。
味ぽんは元来より夏に売上が伸びる商品だが、確かに食欲が落ちがちなこの時期は、こうしてさっぱりと食べられる「串ポン」のようなソースはまさに重宝するに違いない。
実際、「串ポン」は常連たちにも好評で、串カツ田中のお客さんたちは、すでに約4本に1本は「串ポン」で串カツを食べているという。「このソースを買って帰りたい」という声もチラホラと上がっているようだが、それも納得の味わいだ。
「夏場はあまり脂っぽいものが食べられない」という人もいるかもしれないが、きっと、「串ポン」で食べる串カツは例外になるはず。ぜひ一度、近くのお店で試してみてほしい。