NTT西日本は8月、大都市のインフラを支える「とう道」をメディアに公開した。とう道とは電話回線や光ファイバーケーブルなどが通る、都市の地下20m前後に張り巡らされた通信トンネルのこと。その範囲は大阪市内をすべて網羅できるほどの広さがあり、しかしNTT職員でも限られた人間しか入れないエリアとなっている。
「とう道」のメリットとは?
この日、メディアに公開したとう道は、主に都市部に建てられたNTT西日本のビルとビルを繋ぐ役割を担うもの。案内した担当者は「NTTの基幹ネットワークを守る構造物です。ここには約1,000万超の光インターネット回線、約800万超の電話通信回線が集中しています」と説明する。なおセキュリティの観点から、とう道が何処を走っているのかは明らかにしていない。
直径3~5mの広いとう道まで出ると、なるほど左右の壁をケーブルの束がびっしりと這っている。ものすごい数だ。直径1~2cmの細いケーブルには、光ファイバーを100~1,000本ほど収容している。そして現在もフレッツ光など各種サービスを拡充するとき、新たにケーブルを追加しているという。一方で、電話回線のケーブルは太い。「なかにはカバーが付いているケーブルもあります。これは耐火カバーで、火災が起きたときに延焼を防ぎます。もっとも最近の光ケーブルは、ケーブル自体が耐火構造になっています」と担当者。
とう道のメリットには強靭性が挙げられる。地震にも強い。阪神大震災のときも、とう道を使って接続していた箇所はケーブルが切れなかったそうだ。担当者は「とう道で接続したエリアは様々な耐震対策が取られているためネットワークの信頼性が高いといえます」と説明する。
行けども行けども、果てしなく続くトンネル。担当者は「基本的に、とう道だけで大阪市内の何処にでもたどり着けるくらい、広大な範囲にトンネルが張り巡らされています」と笑顔で明かす。
トンネル内にいる作業者の安全を守る仕組みも考えられている。火災センサー、二酸化炭素センサー、ガスセンサーなど各種センサーを配置し、異常時にはアラームが鳴る。地下水の浸水対策としては、防災扉でくい止めるほか、各所に排水ポンプを配置。浸水時には、そのまま排水できる設計となっている。
地下20mということで、気温は1年を通して18~20度くらいに保たれているそう。定期的に地上の空気も取り入れるなどしており、非常に快適だ。とう道の中では電波が届かないエリアもあるため、現場の作業員は地上とやり取りするために「電話器」を持って入り、所定の場所でケーブルを繋いで地上と会話しているとのことだった。
「とう道は、平成元年あたりに作られたものが多いんです。平均しても30年ぐらい経っていますし、古い箇所では50年が経っています。そこで常に保守点検しながら使っています」と担当者。NTT西日本のケーブル監視センターでも24時間365日、異常がないか監視を続けていると話した。
毎年、9月1日防災の日の時期などに定期的にメディアなどに公開しているというNTT西日本のとう道。電気、水道、ガスなどと並び通信が日常生活に必要不可欠なライフラインとなった現代において、同社がどのように通信の信頼性を担保しているのかが知れて、とても興味深かった。
近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら