サヨナラ男の異名を襲名したシーズンだった。安田尚憲内野手はクライマックスシリーズを含めると今シーズン4度、サヨナラヒットを放った。中でも「幕張の奇跡」と呼ばれる10月16日、本拠地ZOZOマリンスタジアムでのクライマックスシリーズファーストステージ第3戦のサヨナラ打は記憶に新しい。
「皆さんに打たせてもらった。流れのままに打たせてもらった印象。シーズン終盤から取り組んでいる力を入れすぎない打撃が出来た結果だと思う」と安田は振り返る。
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今年のシーズン終盤から「力まないこと」を打席で意識するようになった。福浦和也ヘッドコーチから「肩に力が入りすぎだ」と指摘され取り組んだ。その中の練習方法として7メートルから8メートル程度の距離を置き、トスされたボールを芯でとらえるように軽く打つトスバッティングを繰り返し行った。打席でもこのトス打撃の感覚を意識。するとバットがスムーズに出るようになった。
「打てない時期は焦りが出て、力みにつながっていた。打たなくてもいいボールに手を出したりして悪循環にハマっていた。気持ち的な部分が大きかったと思う。シーズン最初の方は良かっただけに悔しいですし、もったいないことをした。自分から崩れていった感じ。ただ、シーズン終盤は力を抜くようにして、いい感じになりました」と安田は言う。
幕張の奇跡は、力まず、コンパクトに打った結果だ。ちょっと甘く入ってきた149キロストレートを素直に打ち返すと打球は右中間に飛んだ。スタンドは総立ちとなり、大歓声を一身に浴びた。
「素直にバットが出たイメージ。一塁走者は足の速い岡さんだったので、もしかしたらと思った。ホームインした瞬間はうれしすぎて覚えていない。すごい歓声だった。夜も眠れないくらい興奮した」(安田)
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手応えを残したシーズンではあるが、20本塁打以上を目標にスタートしたシーズンは9本塁打。不完全燃焼に終わってしまったのも事実だ。
「悔しいシーズン。情けないシーズン。ただ、意味がなかったこととは思っていない。やれたことは少ないけど、プロで初めてサヨナラ打を打てた。ポストシーズンでもサヨナラ打を打てたことはしっかりと次につなげたい。来年は25歳。ずっと先輩に引っ張ってもらってきているので、来年は自分がチームを引っ張る存在になりたい。一年を通して、チームに貢献できるようになりたい」と意気込む。
大型内野手としてドラフト1位の期待を背負い入団をして6年の月日が流れた。チームの中心選手としての自覚が芽生えたシーズンでもあった。そして何よりも本拠地で行ったポストゲームの雰囲気が忘れられない。「マリンがすごい雰囲気になっていた。いつもすごいけど、また違う雰囲気。ファイナルステージ、そして日本シリーズをマリンでやりたいとつくづく思った」と話す。2024年は背番号「5」がチームの中心として躍動する。迷わず、力まず、最高のラストシーンまで前に進む。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)