Z世代が日産自動車のクルマをいじるとどうなるのか。「Nostalgic 2days」(ノスタルジック2デイズ、2024年2月17日~2月18日にパシフィコ横浜で開催)の会場で「日産自動車大学校」の学生がカスタムを手掛けた2台を発見したので、じっくり観察してきた。
キューブとブルーバードが禁断の合体!
日産自動車大学校はプロフェッショナルな自動車整備士を育てる専門学校。Z世代の間では「昭和レトロ」「平成レトロ」が流行していると聞くが、「Nostalgic 2days」の展示車両2台もノスタルジーを感じさせる仕上がりとなっていた。
「SETO」と名付けられたブルーの1台は、中古のZ12型「キューブ」に昭和の名車であるB410型「ブルーバード」のフロントグリルやバンパー、テール部を移植したユニークなカスタムカー。ブルーバードのパーツは日産のヘリテージコレクションから譲り受け、あとは好きな車体と組み合わせて予算100万円以内で製作するというのが課題だったそうだ。
当然だが、それぞれのパーツを「ポン付け」することはできないので、キューブのフェンダーを削ったり盛ったり、溶接したりして形状を変え、チリ合わせまできっちりとやって仕上げたという。リアの灯火類はオリジナルが赤一色だったので、SETOはウインカー用に別のものを装着している。ドアハンドルは410のものを使用。「DATSUN」や筆記体の「Bluebird」のバッジを取り付けて雰囲気を出した。
結果として、正面から見ると410ブルーバード、サイドはキューブという絶妙なクルマに仕上がっている。ちなみに車名のSETOは、製作した実習生が7期生なのでフランス語の7(sept=セットゥ)の発音から考えたのだとか。ユーザーイメージとしては家族で使用するクルマで、長女は22歳で古着好きのオシャレ好き、お母さんは日産のパイクカー「パオ」に乗っていたなどイメージ設定は完璧だ。2023年の4月から半年かけて製作したという。
マーチがフェアレディを目指す?
もう1台は、クラシカルなスポーツカーのSR311型「フェアレディ」とそっくりの顔を持つ水色のオープンカーだ。ベース車両はK11型「マーチコンバーチブル」。コンセプトは「ネオ フェアレディ」、車名は「I’m march」となっている。
カスタマーターゲットは20代の古着好きのカップル。スポーツ走行にも適した「RECARO」のバケットシートやC-WEST製のリアウイングで迫力をアップしている。こうしたパーツ類は経費で購入するだけでなく、学生たちが自ら企業やメーカーに出向き、交渉して調達することもあるそうだ。そうした経験も、社会人になるためには大事なところ。カスタムカー製作というのは、クルマを作ったり直したりする技術以外にも学べることの多い課題だ。
どちらも日産のヘリテージを感じさせつつ機能や性能を楽しめるクルマに仕上がっていて、感心させられる出来栄えだった。
原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら