例年の秋開催から季節を春に変更したF1日本グランプリ。レース開催で華やぐ鈴鹿サーキットをさらに彩ったのが、コース周辺に咲く満開の桜だった。決勝日(4月7日)は朝から現地入りしてレースを堪能できたので、会場の雰囲気をレポートしてみたい。
春のF1を楽しんできた
決勝日は例年通り、早朝からサーキットへ向かう人たちの行列で大混雑。しかし、その沿道に咲く満開の桜がいつもとは違う光景だ。これなら、いつ到着できるのかというイライラ気分も軽くなる。
入り口付近はドライバーの入り待ちをするファンでいっぱい。上空ではVIPたちが乗るヘリコプターが爆音を轟かせていた。
チームパドックの2階に設置されたアストンマーティンのパドッククラブ(オーナーやディーラーなど関係者らが集う場所。普通に入れば超高額)に到着すると、華やかな着物姿の女性や提灯にF1(往年の葉巻型F1のホンダRA271?)を描く絵描きさんらが和洋折衷の雰囲気で迎えてくれる。1階のパドックに降りることができる「パドックツアー」では、レーシンググリーンに塗られたフェルナンド・アロンソが駆るF1マシン「AMR24」を整備する姿を見学することができた。
火を入れたエンジンの爆音に耳を塞いでいると、すぐ目の前にはこちらもグリーンに塗られた必勝ダルマが鎮座していた。昨年のボディに描かれていた「サムライ魂」の文字といい、今年のダルマといい、このチームは遊び心をきっちりとキープしているようだ。今年の日本GP用のアロンソのスペシャルヘルメット(BELL製)には、葛飾北斎の富嶽三十六景のひとつ「神奈川沖浪裏」を模したイラストが描かれていた。
角田選手が母国開催で初入賞!
午後2時にスタートしたレースは開始直後のクラッシュで赤旗中断という波乱の展開に。今季4戦連続でポールスタートとなったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダRBPT)が王者の走りを見せつけてポール・トゥ・フィニッシュを決め、早くも今季3勝目を挙げた。ラスト1週を示すサインボードを出した後、ピットからコース脇まで飛び出して彼のゴールを祝福するスタッフらの姿はなかなか感動的だった。2位には同チームのセルジオ・ペレスが入った。
10位スタートの角田裕穀(PBホンダRBPT)は一時、12位まで順位を落としたものの、ピットクルーの素早い作業のおかげもあってスタートと同じ10位でフィニッシュ。母国開催で初入賞を果たした。
秋開催だったF1日本GPは、時期的にもチャンピオン争いが絡んでしまうため、いつもはもうちょっとピリピリした雰囲気が漂っていた(1990年代のセナ・プロ問題が好例)。それに比べて春開催の今年は、純粋にレースを楽しむことができた。
満開の桜の下で観戦した10万人を超えるファンたち(3日間の累計で22.9万人)も、きっと同じように満足したに違いない。
原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら