東京都は19日、築地市場跡地(中央区、約19ヘクタール)の再開発「築地地区まちづくり事業」を担う事業予定者に、三井不動産や読売新聞グループなど11社で構成する企業グループを選定したと発表した。野球やサッカーなどのスポーツに加えてコンサートや展示会なども開催できる約5万人収容のマルチスタジアムを中心に、商業施設やホテル、オフィスなどを配置する予定。一部施設は2029年度に先行オープンし、30年代前半の開業を目指す。
東京都心に残された、数少ない一等地・築地市場跡地に、次世代型スタジアムが誕生する。2018年の豊洲市場への移転により土地利用が可能となった大規模な都有地に、野球、サッカー、アメフト、eスポーツなどのあらゆるスポーツや、コンサートなどを開催できる巨大マルチスタジアムが作られることが分かった。
都が19日に選定した、三井不動産を代表とするグループによる再開発計画は、総事業費約9000億円。中核となるスタジアムは、屋根のある全天候型。最大の特徴は、変幻自在に内部の形が様々な形に変わる“超可変性”だ。
約5万人収容を基本にしながら、可動席や仮設席を活用することで目的に応じてフィールドと客席を移動させることが可能。2万~5万7000席の中で、観客にとってベストの観戦体験と環境を生み出すことを目指す。スポーツだけでなく、音楽ライブ、演劇、大規模な展示会での使用も視野に入れる。最先端のデジタル技術、音響・演出装置などの導入も予定している。
さらに、従来の国内スタジアムでは“弱点”となっていた迎賓機能を強化。VIPルームなどを充実させるほか国内最大規模のラウンジも備える予定で、多目的施設として世界中から多彩なイベントを呼び込むことを目的としている。常設の車いす席も多数設置。視覚や聴覚など感覚過敏の症状がある人らが安心して過ごせる「センサリールーム」や「クールダウン室」を設けるほか、視覚・聴覚障害者向けに音声・文字情報の提供も想定しており、ユニバーサルデザインを徹底する。
現在、日本のスタジアムは、集客力や収益性に加えて公共性の向上も課題とされている。政府も目指すべきスタジアムの姿として、「スポーツを中心に動かすのではなく、その地域にとって必要な“インフラ”となることを目指すべき」としている。
新たなスタジアムにはその課題を克服できる条件がそろっている。国内スポーツだけでなく、世界中から大規模イベントを誘致したり、一流アーティストが来てくれる可能性も広がり、世界中の人々が集う一大観光地となる期待感も膨らむ。18年の市場の豊洲移転から6年。築地が、日本のエンターテインメントの中心となる。
◆世界の主なスタジアム
▼ローズボウル(米カリフォルニア州パサデナ)1922年に完成した北米最大の多目的球技場。収容人数は約9万人。カレッジフットボールの会場として知られるほか、94年サッカーW杯では決勝戦が行われた。
▼ドジャースタジアム(米カリフォルニア州ロサンゼルス)ブルックリン・ドジャースのロサンゼルス移転を機に、62年に開場した野球場で、5万6000人収容。現在もドジャースがホームスタジアムとして使用。現ナショナルリーグでは唯一の左右対称球場。
▼ウェンブリー・スタジアム(英・ロンドン)英サッカーの聖地。1923年に完成。48年ロンドン五輪のメイン会場、85年にはチャリティーコンサート「ライブエイド」が行われた。2003年に解体され、07年に再建。現在の収容人数は約9万人。
▼カンプ・ノウ(スペイン・バルセロナ)サッカー専用スタジアムとして1957年開場。収容9万9354人は欧州最大で、サッカー・バルセロナがホームスタジアムとして使用。26年までに10万人規模の屋根付きスタジアムに改築する予定。
▼マラカナン・スタジアム(ブラジル・リオデジャネイロ)1950年開場のサッカー競技場。2016年リオ五輪の開閉会式が行われた。以前は20万人以上の収容人員を誇ったが、92年のスタンド落下事故を機に大幅削減され、現在は約8万人。