東京新聞紙面連動企画「PFASを追う~横田基地の周辺 最高濃度」

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6月5日(月)放送後記
毎週月曜日は東京新聞との紙面連動企画。今日取り上げるのは、「PFASを追う」という、東京新聞が独自に分析を行った、多摩地区のPFASに関する特集記事です。
PFASというのは、体に有害な化学物質で、それが全国、そして東京の地下水にも紛れ込んでいる、それがどうも米軍基地と関係があるのでは、とされる物質です。
多摩地区では一部の水道水源に井戸水を使っているので影響が大きい。しかしその井戸水の調査結果は、水道局、環境局、国の環境省が縦割りで持っていて、全体をまとめるものがないことから、東京新聞が独自に集めてまとめて分析しました。
その分析結果はどうだったのか。東京新聞立川支局の松島京太さんに聞きました。
東京新聞立川支局 松島京太記者「一番濃かった地域は立川市になります。立川市というのは、米軍横田基地のすぐ東というところにあたってまして、で、濃度としては1340ナノグラム/リットルという濃さです。50ナノグラム/リットルというのが、国の暫定指針値ですね、あの水質管理の目安にしてくださいよという値なんですけれども、これの約27倍ですね、27倍の数値で立川市で検出されていたということを、我々突き止めまして、この値が都内の最大値だったということですね。で、最大値だった地点っていうのが、米軍横田基地、そのすぐそばだったということが分かりました。まあ、横田基地が、この多摩地域のPFAS汚染の汚染源ではないか、という疑いが強まる証拠の一つになった、と私は考えています。」
濃い地域、薄い地域ありましたが、一番濃かったのは立川市。その立川市で最高濃度だったのが、「横田基地モニタリング井戸」という名前の、横田基地のすぐそばの井戸の水。国の水質管理の目安の50に対して、27倍の1347ナノグラムという数値であることを突き止めました。立川市内では、他にも1000ナノグラムを超える井戸が複数ありました。
また、立川市と同じく、基地の東側の武蔵村山市や国分寺市、国立市なども500を上回って比較的高く、西側の福生市や羽村市、瑞穂町などは低い、ということも分かりました。
では、今回の東京新聞の分析について、PFASに詳しい専門家はどう見たのか。環境衛生学専門の、京都大学准教授、原田浩二さんに伺いました。
京都大学 原田浩二准教授「横田基地がある所から東西、福生と立川と、ここの所で非常に境目がハッキリしたと。そのことはですね、少なくともこの二つの間に何らかのモノが無いと説明できない、ということですよね。それがじゃあ何かと言うと、その間に在るのは横田基地であるわけですから、だから横田基地というのは、やはり大きな汚染源として在るのは、まあ間違いないというところですね。えっとですね、その点で言うと、やはりですね、ホントに原因がどこに在るのかというのを、より突き詰めていくには、今回東京新聞さんが使われたデータというのは、もちろん利用できる、最も良いものではあるのですが、望ましいのはやはり具体的に、同じ立川市の中でも、どこが高いのかとか、そういった所のよりはっきりしたものがまだ見えてないと。そこのところは少し、まださらにやらないといけない所ですね。」
自治体レベルでの色分けが出来たことで、横田基地の東西に大きな差があり、基地が大きな汚染源として在ることは間違いなさそう、ということが東京新聞の分析で分かった。
しかし、基地の東西という引きの絵ではなく、もっとピンポイントのデータが欲しい。例えば井戸の汚染源からの距離と同様に重要になるのが、水を取る深さ。これらがしっかり見えるような調査を、行政自身がやる必要がある、とおっしゃっていました。
では行政は調査を行う姿勢があるのか?行政の姿勢について、松島記者はこう話します。
東京新聞立川支局 松島京太記者「いま多摩地域っていうのは、だいたい278本、水道水源に使っている井戸があるんですね。で、この中の34本がPFASの影響で取水は停止していて未だに再開できていない状況にあるわけです。かなり都としては被害を受けているわけなんですけれども、結局被害を受けても黙ったまま、とりあえず危なそうな井戸は止めて、どうにかしているっていう状況を続けているわけですね。水道水源が汚染されているわけですから、都としては、被害を受けている立場として、汚染源として疑われる施設に対しては、こういうデータを持って、あなたの所と関連があるんじゃないですか?という形で、説明を求めたりするべきなんですけども、それをしていない。消極的ですね、ちょっと自分も取材してて、一国民としてすごい情けないな~と思いますけどね。こちらとしては疑わしいというデータを出すのが限界かなと思っています。結局、最終的には行政が動かなければいけないところだと思っていますので、そういった所を動かすように、正確なデータを持って報道を続けていきたいなと思っています。」
東京都は、危ない井戸からの取水は止めているので大丈夫ですよ、と言っているそうですが、原田先生によれば、PFASは一度土壌に染みると残りやすく10年経っても、せいぜい半分程度にしか減らない。
日々使い続ける水道水。今、取水は止めていても、今まで使っていたのは大丈夫なのかも当然心配ですし、止めている井戸が、10年後も20年後も使えない状態となる可能性は高いというのも、放置できない問題だと思うのですが・・・。
松島さんは、現在行われている、市民団体による住民の血液検査のデータも、今回の分析のマップに重ねて、より具体的なものを作って、国や都が動くまで、ドアをたたき続けたい、と話していました。
米軍基地となると途端に腰砕けになってしまう・・・。
行政は住民の側に立って動くのか、そうではないのか。国も都も、しっかりと対応して欲しいと改めて強く思いました。