移住人気で物件足りず “ほどよい田舎” 千葉・いすみ市 空き家掘り起こしへセミナー 所有者に活用促す

移住先として人気の千葉県いすみ市で、移住希望に対して住宅物件が不足している。物件の掘り起こしを図ろうと市は、空き家所有者に活用を促すセミナーを開催。市内外から23人が参加し、不動産業者や物件所有者らの活用事例や体験談、空き家バンク制度の説明に耳を傾けた。
いすみ市は人口およそ3万6千人。都内に比較的近い“ほどよい田舎”の住みよさが支持され、雑誌の住みたい田舎ランキング人口3万~5万人のまち部門で全国1位の評価を受けたことがある。さらにコロナ禍で働き方が見直されるようになると、市への移住相談はコロナ前と比べ2・5倍の約740件に急増。昨年度は少なくとも130人が移住した。
市内は人口減少の影響で空き家が増加傾向。2600戸以上あるとされ、放置されたままの物件も。空き家があふれているにもかかわらず情報が少なく、移住希望者から「住みたい物件が見つからない」との声が上がっていた。
市は移住・定住促進策で、賃貸物件を紹介する空き家バンク制度を2010年に創設。近年は家を探す新規登録が年間60件ほどあり、累計登録数は約560件に上る。一方で、登録物件数は毎年1桁がほとんど。累計でも約120件にとどまる。空き家物件が登録されるとすぐに借り手が見つかる状況で、需要に供給が追い付いていない。
空き家が放置されると景観の悪化や犯罪の温床になると懸念される。市は空き家を減らし移住者増加を図ろうと、空き家所有者に理解を深めてもらい、空き家バンク登録につなげるセミナーを開くことにした。

市内の不動産業者が空き家や中古物件のニーズが高まっている現状を解説し「古くても取り壊さず、家の傷みが進む前にリフォームした方がいい」とアドバイス。空き家バンクに登録した物件所有者は、登録前にあった入居者トラブルや登録後の体験談を披露した。
参加者は熱心にメモを取りながら「リフォーム費用はいくらぐらいか」「農地付きの物件でもいいのか」など次々に質問。市の担当者は「みなさんの関心の高さがうかがえた。空き家バンクの登録物件は慢性的に足りていない。助成制度もあるのでぜひ相談してほしい」と話す。
移住や空き家バンクの問い合わせは市企画政策課移住・創業対策室(電話)0470(62)1332。