命令には逆らえず返事はすべて「レンジャー!」 陸上自衛隊の精鋭“レンジャー隊員”とは

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日々、厳しい訓練をしている自衛隊の中でも、さらに地獄の訓練を乗り越えた一部の自衛官しかなれない「レンジャー隊員」と呼ばれる精鋭が存在する。どのような訓練をしているのか、地獄の訓練とは何か、元レンジャー隊員の筆者が明らかにする。
レンジャーとは、陸上自衛隊において約3ヶ月にわたって実施される厳しい訓練を修了した隊員に付与される資格。陸上自衛隊全体の約8%のみが該当し、レンジャー徽章(きしょう)というダイヤモンドと月桂樹のバッジを制服や戦闘服の左胸に付けている。
このバッジを付けていると自衛隊で一目置かれ、ときに知らない自衛官から話しかけられるほど目立つ存在になる。
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レンジャー訓練は完全志願制だ。訓練に参加するためには、厳しい選抜試験に合格する必要がある。
選抜試験は、体力試験と身体検査で構成されている。体力試験は、腕立て伏せ、懸垂、銃を携行しての長距離走、重量物運搬等を行うのだが、日頃からしっかりと準備していないとと受かることが出来ない。身体検査は、3ヶ月の訓練に安全に参加出来るよう、心臓や肺、視力等の検査を行う。
志願制なので行きたくなければ行く必要はないが、行きたくない人が修了できるほど甘くない“地獄の日々”が続く。よって、あまり志願者がいないのが実状である。
3ヶ月に及ぶ訓練中の返事は全部「レンジャー」である。訓練当初は不慣れなため、普段の癖で「はい」などと言ってしまうが、そうなると“悲惨な目”に遭う。具体的な事例は想像に任せるが、正直、目もあてられない。
なお、レンジャー訓練中は「NO」「断る」という概念は存在しない。何か言われたら、全力で「レンジャー!!」と叫んで命令に従わなければいけない。
余談ではあるが、参加期間中駐屯地内のコンビニで店員にお箸を付けるか否か聞かれた際も、無意識に「レンジャー」と答えてしまう。それほど無意識の内に訓練の体験が刷り込まれるのだ。
レンジャー訓練ではこの他にも突き抜けたエピソードが沢山ある。沢山ありすぎて、挙げればきりがない。通常の自衛官でも驚くような、過酷なエピソードだらけである。
レンジャー訓練の修了者に、自衛官生活の中で最も過酷な経験を聞くと、多くの人が「レンジャー訓練」と答えるほどだ。陸上自衛隊のレンジャーOBと会うことがあれば、尋ねると面白いはずだ。もちろん、情報保全上問題のない範囲でお願いしたい。
安丸仁史(やすまるひとし):1994年福岡生まれ、福岡育ち。防衛大学校(人文・社会科学専攻)中退後、西南学院大学文学部外国語学科卒業。 2017年陸上自衛隊に幹部候補生として入隊。
職種は普通科で、小銃小隊長や迫撃砲小隊長、通訳などを務める。元レンジャー教官。 現在は複数事業を経営。