AOKIが取り組む2032年「4:3:3」に向けた業態進化とは? – 事業戦略説明会から

紳士服の市場規模が縮小するなか、ビジネスウェアが売上高の7割弱を占めるAOKIでは業態の最適化に取り組んでいる。キーワードは4:3:3で、これを2032年までに実現するという。都内では14日、AOKI代表取締役社長の森裕隆氏が事業戦略について説明した。

○■縮小したスーツ市場

働き方・ライフスタイルの変化にともない、ビジネスウェアのカジュアル化が進んでいる。さらに2020年春にはコロナ禍があり、テレワークが推奨されたことによりスーツ離れが加速。調査会社によれば、いまだスーツ市場はコロナ前の水準まで戻っていないという。そこで『ファッションで喜びを創造する』をミッションに掲げるAOKIでは、時代と顧客のニーズ・ウォンツに沿った商品開発を進めている。

AOKIの2022年の売上高に占める割合は、ビジネスのカテゴリが67%、カジュアルが12%、レディスが21%だった。これを2027年にはビジネス50%、カジュアル20%、レディス30%、そして2032年にはビジネス40%、カジュアル30%、レディス30%まで変化させたい考え。しかし森社長は「フォーマルのスーツを減らしていく、ということではありません」と強調する。

「あくまでビジネスのトップラインは上げていきながら、この4:3:3を実現したい。では、どうやるか。AOKIでは、一昨年からQOS(クイックオーダースーツ)に取り組んでいます。たとえば、細身のスーツをつくりたい、だから上下で別々のサイズを選択したい、といったニーズは多々あります。ベストやスペアのスラックスなども追加したい、というお客様もいる。QOSでは、そんなお好みの1着のオーダーを最短4日で仕上げます。いま非常に好評を得ている、このQOSを来年度には全店舗に導入することで、ビジネスのトップラインを上げていきます」(森社長)。

またARS(AOKIレンタルサービス)を2023年6月末には全店舗まで拡大する。「結婚式に必要なモーニング(タキシード)を4日間1万5,000円でレンタルできるサービスです。うちの従業員がしっかりとフィッティングするので、新婦のお父様などに非常に喜ばれています。一方で、たとえば学校の先生などは、毎年のようにモーニングを使うので多くの方は購入される。ARSをスタートしても、モーニングの売上は落ちませんでした」と森社長。

ではカジュアル、レディースはどうやって伸ばしていくか。カジュアルに関しては、コロナ禍で始めた”パジャマスーツ”の売上がいまも伸びている。もともとリモートワーク向けに開発したもので、襟がないノーカラーの商品を出していたが、最近はビジネスの現場でも使える襟付きのパジャマスーツの販売もスタート。すると副次的に、Tシャツやポロシャツの売上も上がったという。

レディースに関しては「マーケットの可能性がまだまだ残されている部分だと感じています。女性の社会進出ということもあり、AOKIの女性社員も『自分がほしいもの』『素敵に見えるもの』を販売したいという思いが強くなっています。そういった意味では、カジュアルより先に30%に到達するのかな、と見ています」と説明する。

もちろん顧客体験の向上も目指している。たとえば店舗、ECのシームレス化をはかるOMO(Online Merges with Offline)を強化中。オンラインで店舗に取り置き予約する、オンラインで購入して店舗で受け取る、店舗でウェブオーダーして自宅に届けてもらう、といった利用法で顧客の利便性を向上する。また、コロナ禍で生まれた新たな接客スタイル「チャット接客」を現在も継続している。これは顧客のチャットの問い合わせに、実際の販売員が回答するサービス。育児中で店頭に出られる時間が限られるスタッフなども、この仕組みにより勤務を継続できるメリットもあると話す。

このほか戦略的にリアル店舗を出店しながら、同時に店舗の遊休スペースはグループ会社(フィットネスジムのFiT24など)、あるいは他社(大手通信事業者、ゴルフ用品店、眼鏡店など)に転貸することで収益性の向上をはかっていく。そして従業員満足度の最大化をはかること、またSDGsに取り組みサステナブルファッションに注力すること、といったことにも積極的に取り組んでいく、と説明した。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら