自衛隊では常識の「防弾チョッキ」の“鉄板抜き” 元レンジャー教官が内情を告白

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陸上自衛隊日野基本射撃場における銃乱射事件に伴い、防弾チョッキ着用の有無が話題に上っている。
しかし、ほとんどの自衛官たちは、防弾チョッキを着けていてもじつは「防弾チョッキ内の鉄板を抜いて」おり、着用していても意味のない状態になっているのだ。元第10師団レンジャー教官であった筆者が明らかにしていく。
少し詳しい人は知っているが、自衛隊の防弾チョッキは、ポケットに鉄板を収納して初めて防弾性能が伴う。鉄板は着脱が容易で、抜くこともできる。
しかしその鉄板はとても重いため、ほとんどの自衛官たちは、鉄板を入れることなくチョッキを着ている。チョッキを着ている写真を見ても、ほとんどの場合鉄板は入っていないため防弾性能はない。
自衛官人生で一度も鉄板を入れたことがないまま定年した自衛官も多い。事実として、私は10年以上に渡る自衛隊との関わりの中で、一度も防弾チョッキに鉄板を着けたことがない。
最前線の普通科隊員であり、陸自普通科教育の総本山富士学校で幹部レンジャー課程などを出たのに、である。より後方支援職種は言うまでもない。
空包を射撃するような訓練でも、鉄板どころか防弾チョッキすら着けていないことも多かった。全国の自衛隊の訓練写真を見てもらいたい。
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防弾チョッキの鉄板を抜くことは自衛隊では常識であり、陸士から記者会見するような自衛官まで、知らない自衛官はいない。記者会見するような自衛官でも、自身の訓練の際に鉄板抜き防弾チョッキを着けている可能性は極めて高い。
「事実を確認する」という展開になったとしても、確認するまでもなく隊員や関係者なら誰でも知っている。鉄板を入れて訓練しているのは、一部の特殊な部隊のみである。
今回の小銃乱射事件であらためて明らかになったが、たった1発の銃弾で人は亡くなってしまう。しかしながら、「重たい、搬出が面倒、動きにくい」などの理由により防弾チョッキを着けずに訓練する部隊は多い。
取り扱いに注意している装備のため厳重に管理するのはよいが、アナログな自衛隊の体質のせいで鍵の管理から出納の管理まで、簿札に逐一手書きする必要があり、みんな搬出したがらない。
また、外国軍の物に比して可動域が狭く、着けると射撃がしにくくなるほど動きにくくなる。
防弾チョッキがなければたった一発で死に至るにも関わらず、着けなくてよいのだろうか。訓練でやってきていないことを、いきなり実戦でできるのだろうか。
鉄板を入れなければ防弾性能がないため、入れないことはおかしいと常々感じていたが、入れることを提案する勇気すら湧かないほど自衛隊では鉄板抜き防弾チョッキが蔓延していた。
今後自衛官の訓練写真を見たときに防弾チョッキを着けていない場合、たった1発で絶命してしまうと思ってもらいたい。
また、鉄板入り防弾チョッキは本当に重たいので、駐屯地や訓練見学の際に広報室等の許可が降りたら実際に持たせてもらうとよいだろう。
この度の事件のような悲しい出来事を繰り返すことのないように、今後は鉄板入り防弾チョッキを着けていない自衛官の写真を見ることがないことをただただ願うばかりである。
安丸仁史(やすまるひとし):1994年福岡生まれ、福岡育ち。防衛大学校(人文・社会科学専攻)中退後、西南学院大学文学部外国語学科卒業。 2017年陸上自衛隊に幹部候補生として入隊。
職種は普通科で、小銃小隊長や迫撃砲小隊長、通訳などを務める。元レンジャー教官。 現在は複数事業を経営。