緊急企画「調味料総選挙」 塩、醤油をおさえてトップ当選した調味料とは?

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音楽評論家にして、元マーケッターのスージー鈴木です。
広告代理店のマーケティング部門で働いていたとき、数々の食品メーカーを担当しました。そのときずっとコンプレックスがあったのです。自分が料理にまったく詳しくないことに。
自分で料理もほとんどしなかったし、あと味覚についても、どうも他人より劣っている感じ。だから当時、冷や汗をかきながら、食品の仕事をしていたのですが、もしかしたら逆に、そういう自分だったからこそ、ずっと気になっていたことがあったのです。
それは調味料のこと。
「料理の話というと、みんな素材の話ばかりしているけど、素材よりも調味料の味が主張している場合が案外多くないか? 調味料の方が強く主張しているメニューが多くないか?」
私にとって、その代表は焼肉ですね。みんなでワイワイと焼肉を食べるのは楽しいのですが、食べながら、「あれ? いま口の中に広がっているのは、焼肉の味ではなく、焼肉のタレの味じゃないの?」と、ずっと思っていました。
あと、とんかつの味はとんかつソースの味。餃子の味は、ラー油と醤油とお酢の味の方が強い、強過ぎるじゃないかと。
ということは、素材・具材だけでなく、調味料の味にも、実は受容性の格差があって、それは、食品メーカーの方々や、私の後進である、食品メーカー担当のマーケッターにとって、極めて有意義なデータとなるのではないか。よし、「ニッポンの民意」を問おう!
これが、今回の「調味料総選挙」企画の背景でした。言い換えると、脇役扱いされがちな調味料を主役として捉えた、日本初のマーケティングリサーチ、かも。
質問文は「以下に並んでいる調味料の中で、味そのものとしてお好きなものを3つ選んでお答えください」。「味そのものとして」とあえて定義することで「主役」としての調味料を意識してもらいました。
また下記のように調味料の選択肢が18もあり、かつ調味料の味の好き/嫌いなんて、聞かれた方にも明確な基準がないと思ったので、「3つ選んでお答えください」ぐらいの緩い聞き方が妥当だと判断しました。
選択肢は、オリーブオイル/からし/ガーリック/ケチャップ/こしょう/ごま油/砂糖/塩/醤油/酢/ソース/バター/マーガリン/マヨネーズ/みりん/ラー油/料理酒/わさび(五十音順)。
すいません、料理に詳しくないので、調味料の定義が分からなかったので、ささっと検索して並べたものです。でも「調味料」の定義ってあるのかしら?
さて、結果を見る前に、調査の分析には「仮説」が必要です。どんな結果が出てきそうかを事前に考えておく。そして、その考えと結果の落差から発見を導く。これが調査の基本のキ。調味料で言えば「サシスセソ」(若い方は検索を)。
私は「バター」を1位と予想しました。たまーに料理をするとき、直方体のバターを見ると、無性にかじりつきたいという衝動に駆られるほど好きなのです。子供の頃は、冷蔵庫にあるバターに実際にかじりついて、歯型を付けて、母親によく怒られたものなのです。
ただ、そんな感覚は、脂ぎったオヤジ特有のものだとも思うので、男性寄りの評価じゃないかな、女性では人気が伸び悩むんじゃないかな、などと考えたのですが。
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では結果を見ていきます。まずは、合計でのベスト5。

何と、1位は「マヨネーズ」。続いて「醤油」「ケチャップ」「ごま油」、そして仮説1位の「バター」は5位でした。
注目は「マヨネーズ」のポイントです。何と15.8%で、2位の「醤油」を3ポイント以上引き離しております。さらに驚くべきは、各層別の結果です。

はい。「マヨネーズ」は、全層でトップ。そう、「マヨネーズ」こそが「調味料総選挙」のトップ当選。「マヨネーズ」こそが「調味料総選挙」の与党。ニッポンは「マヨネーズ」の国――。
逆に総合でも層別でも2位を獲得した「醤油」は、さすがの安定感ですね。でもニッポンは「醤油」ではなく、まずは「マヨネーズ」の国、だったのです。
総合の総合の3位は「ケチャップ」。1位と合わせて「ケチャマヨ」。いかにも子供が好きそうな組み合わせですが、そういう昭和の子供が、嗜好性を保ったまま、令和シニアになって、全層で高い評価となったのでしょう。
あ、ここでダークホースを発見。男性層で「ケチャップ」を超えて3位に躍り出た「ガーリック」。ではここで、「ガーリック」の男性・女性での得票率を見てみましょう。

何と、男性の得票率が、女性の倍以上になっています。これ、「ガーリック」がお酒に合うメニューで多く使われることに加えて、まぁ、にんにくの香りの好き嫌いが影響してそうですね。
総合の4位の「ごま油」は、個人的には想定外の高水準だと思いました。「バター」は5位、かつ男性より女性の方でポイントが高く(男性:6.3%<9.8%:女性)、私の仮説はもろくも崩れ去りました。
続いて、下位を見ていきましょう。最下位とブービーは「料理酒」「みりん」。両方とも1%以下の低得票率。

上位の「マヨネーズ」「ケチャップ」と比べると、昭和の時代に言われた「洋食化」が今やシニア層にも行き渡った結果として、和食系調味料の得票が落ちたのかもしれません。あと、そもそも「料理酒」「みりん」って、味のイメージが分かりにくくって、回答できなかった人も多かったかも。
というわけで、まとめると、上位は「マヨネーズ」「醤油」「ケチャップ」ということになりました。ここで最後、唐突に「てりやきチキン」の話をしていいでしょうか?
実は「洋風てりやきチキン」、上位の「マヨネーズ」「醤油」「ケチャップ」を全部使うそうなのです(もちろん使わないレシピもあるでしょうが)。ということは、今後大ブームになる予感がしませんか?
そして「洋風てりやきチキン」が大ブームになると、今度は下位の「料理酒」「みりん」を使う「和風てりやきチキン」にブームに飛び火して、調味料市場全体の活性化につながるかも――なんて、そんなマーケティングは、ちょっとおめでた過ぎるでしょうか。うむ。やっぱり食品マーケティングは、冷や汗をかかなきゃ。

Sirabeeでは、音楽評論家、ラジオDJのスージー鈴木(すーじーすずき)さんの連載コラム【スージー鈴木のニッポンの民意】を公開しています。
毎回マーケットリサーチを実施し、そこから浮き彫りになる「ニッポンの民意」を世に問いていく連載です。今回は「調味料総選挙」に関する調査を掲載しました。