〈神戸・6歳男児遺棄〉逮捕された母親やきょうだいたちも監禁した祖母から“虐待”を受けた過去…「頭にネット包帯を被っていた」「ウチではあの子たちを三度保護しました」…修くん(6)はベランダにだされて「助けて」と

兵庫県警捜査1課と神戸西署は6月22日、神戸市西区玉津町で同居していた母親(57)を約3カ月間監禁したうえ鉄パイプなどで殴ってけがをさせたとして長女の穂坂沙喜(34)、次男の大地(32)、双子の次女の朝美(30)と三女の朝華(30)の4容疑者を監禁と傷害の疑いで逮捕した。また同日、行方がわからなくなっていた沙喜容疑者の長男、修(なお)くん(6)が自宅近くの草むらでスーツケースに入った状態で死んでいるのが見つかり、県警は死体遺棄容疑の可能性もあるとみて調べている。
4人の逮捕容疑は、6月20日ごろまでの約3カ月間、自宅内の押し入れに施錠をして母親を監禁、6月19日ごろに鉄パイプで背中を殴打してけがをさせた疑い。母親は4人が出かけたすきに逃げ出し、20日夜に車いすに乗った状態で神戸市垂水区内の路上で保護されて事件が発覚した。県警が4人の行方を探していたところ、22日午後3時ごろ、神戸・三宮のセンター街で4人を発見、修くんの遺棄場所も割り出した。県警は司法解剖をして死因を調べる方針だ。
穂坂一家が暮らしていた集合住宅(写真/共同通信社)
一部報道では修くんは自宅の2階ベランダに閉め出されて近所の人に「助けて」と叫ぶ姿も目撃されていたという。また、数日前に4人組の男女が頭からフードを被ってスーツケースを自宅から運び出すのを見た近隣住民もいたという。社会部記者が解説する。「一家は10年ほど前から今の集合住宅に引っ越してきており、逮捕された4人はともに無職で、複数に知的障害がある可能性が高い。修くんの母親の沙喜容疑者は障害者スポーツの大会に陸上選手として出場したことがあり、過去には保育園や携帯ショップで働いていた」修くんは、体にひもを付けて歩かされていたり、近隣住民が修くんの家から頻繁に怒鳴り声を聞いていたことからも虐待を受けていた可能性が高い。そのいっぽうで、沙喜容疑者がボーイフレンドとともに修くんと買い物に行く姿も目撃されている。「行政は6年近く一家を支援しているようだが、修くんの父親が誰かは把握できていない。また沙喜容疑者や他のきょうだいは、幼少期に修くんと同じような虐待を母親から受けていたとも言われている」(社会部記者)穂坂家がかつて暮らしていた集合住宅の近隣住人が証言する。
穂坂一家が暮らしていた集合住宅(撮影/集英社オンライン)
「穂坂さん一家はこの団地に10年以上前まではお母さんときょうだい5人で住んでました。上から沙喜さん、長男、次男の大地さん、下に双子の女の子ですね。まだ子供たちが小学生の頃、上の子3人は母親から虐待を受けてたようです。夜9時を過ぎても団地の公園や階段部分でランドセルを背負ったまま家に帰らない子供たちの姿を見ましたし、体にはよく大きいアザもつくっていました。ひどい時には長男が頭に怪我をしていてネット包帯を被ってました。夜に子供が外にいた時、心配なのでうちで保護してあげて、話を聞くと自分から進んで詳しくは言わないものの、『お母さんに殴られたの? 叩かれたの?』と聞くと『うん』と頷いてました。自分だけでも長男は2回、大地くんは1回保護したことがあります。まだ当時は虐待とかで騒がれる時代じゃなかったから、保護して警察に連絡をしても母親の元に返されるだけでした。沙喜さんのことは保護したことはないものの、私の娘にはボソッと母親からの暴力を漏らしていたそうです。母親を監禁するなんて恐ろしいことですが、昔虐待されてできた心のキズが影響しているような気がして、いたたまれない気持ちになります」
通っていた保育所が、修くんが虐待を受けていた可能性を指摘しており、神戸市こども家庭センターが対応に当たっていた。同センターが取材に応じた。「4月24日に保育所の方から区役所に通報がありました。内容としては『修くんの右肩とお尻にアザができていて、本人も叩かれたと言っている』という内容だったとのことです。ただ、いつ誰にどのように叩かれたのかは聞き出せなかったので、同日中に区役所の担当者が穂坂さん宅へ訪問したものの修くん本人には会えず、お母さんとおばあさんにお会いできただけだったようです。当センターには5月1日、区役所から情報共有の連絡がありました。同日に区役所が再度、穂坂さん宅へ訪問したところ、『子どもが育てにくい、預かってほしい』といった相談をされ、当センターにつないでいただいた形です。翌日の午前中に穂坂さんへ電話連絡したところ、対応されたおばあさんからも『子どもが育てにくい』とうかがったので、午後1時ごろに当家庭センターに来所していただく約束になりました」ところが、時間になっても祖母も沙喜容疑者も一向に姿を見せなかったため、同センターは午後4時までに計4回電話をかけたという。そして午後4時半ごろ、祖母から折り返しの連絡があった。「おばあさんがおっしゃるには『お母さんが一時保護に納得せず、修くんも一時保護を嫌がってしまって訪問できなくなった』とのことでした。GWが明けて5月9日午前11時過ぎに電話をしたところ、1度目は出られず、2度目におばあさんが出られて、一時保護について『お母さんとまだ相談中です』の一言だけで電話が切れてしまいましたので、直接訪問をしました。この際に対応されたのは、おばあさんと叔父の大地さん、叔母の朝美さんです。主に対応されたのは大地さんで、修くんが乱暴な子で育てにくい一面はあるものの、今現在は落ち着いている状況で、沙喜さんもまだ納得していないので一時保護は必要ないとのことでした」
自宅付近に供えられていた花束(写真/共同通信社)
この訪問時、同センターの担当者は母親の沙喜容疑者と修くん本人への面会を強く求めたが、大地容疑者らは頑として応じなかったという。「お母さんは一時保護に納得していないし、修くんも今は落ち着いてるけど急に会わせて興奮状態になると困るからという理由で断られました。大地さんにはパンフレットを用いて、子どもの行動観察や発達検査も行えるといった一時保護の内容についてご説明させていただき、何かあればご連絡くださいということで話は終わりました」このやり取りから1カ月半後、修くんは変わり果てた姿で見つかり、祖母は監禁から逃れて保護された。3世代6人が暮らしていた穂坂一家に何が起こったのか。県警が慎重に調べを進めている。
※「集英社オンライン」では、今回の事件について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected]@shuon_news取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班