自動車メーカーの韓ヒョンデ(現代自動車)とTSUTAYAなどを手がけるカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)が「ZEV(ゼロエミッションビークル)時代の共創パートナーとして」の協業で合意した。畑違いに思える両社がタッグを組む理由とは? 話を聞いてきた。
○1.3億人のビッグデータを活用
ZEV時代の新たなライフスタイルの日本浸透を図るという今回の協業。アジア各国へのグローバル展開も視野に入れているそうだ。
創業以来、時代に合わせた新しいライフスタイルの提案をミッションに掲げてきたCCCは今、世界的な脱炭素化の潮流を踏まえ、新たなモビリティライフの提案に取り組んでいる。代表取締役の高橋さんは、「持続性の高い社会の実現に向けてZEVに着目し、次世代のカーライフのあり方を模索していたなかでヒョンデとの出会いがあった」と語る。
一方のヒョンデは、トヨタ自動車、フォルクスワーゲングループに次いで販売台数で世界第3位に成長した巨大な自動車メーカーだ。CEOのチャン・ジェフンさんは今回の協業について、「人が中心という両社に共通するブランドコンセプトとビジョンの共鳴によって実現したもの」だと明らかにした。
ヒョンデが日本でも販売している電気自動車(バッテリーEV=BEV)の「IONIQ5」は広い車内空間を強みとし、快適で便利な「ラウンジ」にいるようなモビリティ体験を乗る人に提供しているそうだ。モビリティコンテンツの充実に向け、ユーザーのライフスタイルをさらに掘り下げたいとの思いもあって、CCCとの協業を決めたという。
そうした両社の思惑のなかで、大きな役割を果たすと思われるのがCCCが有する1.3億人(有効ID数)のビッグデータだ。
チャンさんは「移動空間のなかでどのようなニーズがあるかがわかるデータベースが必要であり、すでにデータをお持ちであるCCCから提供していただけることは両社にとって1番のメリット」と話している。
例えば「代官山T-SITE」では、SDGsをテーマに取り上げた雑誌の購買実数が他の書店(全国約800店舗)に比べ6~10倍以上であり、社会環境や環境問題に高い関心を持つ顧客が多く来店することが明らかになっている。このデータをCCCが持つ「顧客DNA」というプロファイリングにかけると、ビッグデータを基にユーザーの趣向をさらに深く掘り下げることが可能になるという。こうしたデータ分析結果を参照すれば、ヒョンデはユーザーの感性と融合したよりよいモビリティ体験を提案できる。
新たなモビリティサービスの創出に向けて、代官山T-SITEでは6月23日からヒョンデのカーシェアリングサービス「MOCEAN」(モーシャン)が始まっている。MOCEANとは、必要な時に必要な分だけヒョンデの車両をレンタルできるサービスのことで、2022年に横浜と沖縄で始まった。代官山T-SITEには2台のIONIQ5と専用充電器を用意する。
今後はCCCが展開する「シェアラウンジ」の利用者に向けて、プライベートな移動空間としてIONIQ5をラウンジのように利用できる「モビリティ」×「シェアラウンジ」のサービスを提案していく方針。CCCの他拠点におけるMOCEANの展開も検討するという。
現在、代官山T-SITEでは「Hyundai Week」を開催中(6月30日まで)。期間内にIONIQ5か燃料電池車「ネッソ」の試乗を予約すれば、IONIQ6のコンセプトモデル「フライング プロフェシー」も登場する映画『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』の鑑賞ペアチケット引換券がもらえる(先着50組100名)。対象試乗拠点は「ヒョンデカスタマーエクスペリエンスセンター横浜」だ。
安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら