介護助手の活用で得られた職員の負担軽減。利用者の笑顔や会話も増える!

2023年4月、厚生労働省は2022年度の実証事業である「介護ロボット等による生産性向上の取組に関する効果測定事業」の結果を報告しました。
この実証事業は、介護現場における業務効率化の効果を測定することを目的としています。見守り機器や介護ロボットのほか、介護助手の導入効果についても言及しました。
介護助手とは、おもに介護保険サービスを提供する施設で、介護職員をサポートする役割を担い、比較的簡単な作業を行うスタッフを指します。介護人材の確保と生産性向上を目的に、厚生労働省を中心に全国で推進されています。
先述した実証事業の結果によると、介護助手が直接的な介護業務とは関係ない関節業務を担う時間に比例して、介護職員の間接業務時間が削減されたことが実証されました。
この実証事業によると、業務時間の削減以外にも、さまざまなメリットがあることがわかっています。
例えば、介護助手が間接業務を担うことで、介護職員が「気持ちに余裕ができた」と回答した割合は73%に達しています。そのほか「精神的負担(ストレスなど)が軽減する」58%、「利用者に良いケアが提供できる」66%、「利用者とのコミュニケーションやケアの時間が充分に取れる」64%となりました。
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その結果、利用者にも変化が見られたという報告がされています。例えば、「利用者の表情の変化(笑顔になる頻度等)」は51%、「利用者の発語量※の変化」が44%となり、事業者・利用者ともにプラスの効果が得られていると考えられます。
※言葉を発する量。会話をする回数などを指す
では、どんな属性の方が介護助手を務めているのでしょうか。
先述した報告によれば、年齢は60歳以上が約6割。介護現場での就労経験を有する方は30%で、介護・医療に関する資格を有する方も25%。所有していた資格で最も多かったのは旧ヘルパー2級となっています。
介護助手になる方の中には、介護や福祉関係の職歴がある人も多く、経験豊富なベテランもいると推測されます。
また、資格を保有していなくても利用者と年齢が近いことから話し相手になりやすく、利用者が自然と会話をすることで、健康へのプラスの影響もあると考えられます。
さらに、高齢人材が活躍できるとあって、高齢者雇用の機会創出にもつながります。
介護助手の役割は介護職員のサポートであり、比較的簡単な作業を担いますが、その業務範囲は多岐にわたります。
福岡県が公表している『介護助手の手引き』には、その業務範囲例が記されています。
例えば入浴の介助は、次のような業務があります。
上記のうち、おもに介護職員が行わなければならない直接介護業務は、④脱衣・着衣、⑤入浴介助、⑨移動介助の3つ。そのほかの7つの業務は介護助手が担うことができる業務としています。
ほかにも、清掃や見守り、レクリエーションなど、介護職員の負担になりやすい業務を任せることができると考えられます。
介護助手を雇用するときは、事業者側が受け入れ態勢を整備しておくことがポイントになります。
まず必要なのは雇用契約。時給制のパートやアルバイト、派遣スタッフという雇用形態が多いようです。
また、雇用契約を結ぶ前に、改めて事業所内で行われている業務を洗い出す必要があります。先に述べた入浴業務の例のように、一つひとつの業務を洗い出し、何を介護職員が担い、何の業務であれば介護助手に任せられるのかを決めておく必要があります。
最初は、利用者に直接かかわりのある業務と、そうではない周辺業務とに大別。その後、利用者にかかわる業務のなかでも、専門的な技術や知識を必要としない業務を洗い出します。
こうして切り出した業務をリスト化しておくと、介護助手に任せる業務がより明確になります。
さらに、介護助手の円滑な導入に向けて、介護職員間で導入目的についての共通認識を持つことが重要です。
介護職員によって目的がバラバラになっていると、介護職員から介護助手に行う業務の指示などに一貫性がなくなることがあります。そうなると、介護助手が行う日々の業務に戸惑いが生じてしまい、利用者へのサービスの質が逆に低下しかねません。
基本的に直接介護は介護職員が担いますが、それぞれの職員に介護助手に行う指示出しの裁量を持たせることで、業務内容を決めるという方法もあります。
この方法を活用すると、介護助手の経験や技術、知識などを見極めて、より高度な業務を任せることができます。その際は、切り出した業務をA~Cというようなランク付けをしておき、未経験でもできる業務をC、少し経験があればできる業務をB、介護職員が行わなければならない業務をAなどと振り分けておきましょう。
そうすることで、Cランクを任せていた介護助手が経験を積んだら、Bランクを任せてみるなどの柔軟な振り分けもできるようになります。
あるいは、契約時から介護現場での経験が豊富だとわかっている場合は、あらかじめどんな経験があるのかをヒアリングしておき、研修期間でどこまでできるのか見極めておくなどの方法もあります。
介護助手といっても経験や資格によっては、介護職員並みの活躍が期待できます。介護事故などのリスク管理をしっかりすれば、メリットが大きい雇用制度だといえるでしょう。もし人材不足に悩んでいるのであれば、積極的に介護助手を活用してみてはいかがでしょうか。