名古屋市で1日約6700個回収されている粗大ごみ。実はその回収ルートは、実際に回収にあたっている職員が経験をもとに手書きで作成しているのです。時間も手間もかかるこの作業を効率化しようと導入が検討されているのがAI・人工知能!果たして活用ができるのか、取り組みを取材しました。
手書きで1時間かかる”粗大ごみ回収ルート“、AIだとたった1…の画像はこちら >>
名古屋市北区の北環境事業所。午前8時過ぎ、回収の準備が行われていました。
紙の地図に引かれた赤い線が回収ルート、黄色いマークが収集ポイントと最短距離で効率よく回収できるよう考えられています。それを入念に確認し、職員2人で手際よく粗大ごみを回収していきます。
名古屋市の粗大ごみの回収は各地区で月に1回。元々は決められた場所に持ち込む方法でいつでも受け付けていましたが、25年前から、予約した上で有料の粗大ごみシールを貼って家の前に出し、市がそれを一つずつ回収する方法になっています。大きさも回収場所も、毎回バラバラです。
CBC
(名古屋市 環境局・山中幸一作業係長)「(Q地図を基に回収ルートを決めるのか)いろいろ申し込まれる品目があるので収集車に積みきれるだけの数をいかに効率よく回るか、という視点で地図を組んでいます」
網の目のように走る、細い路地を通って回収していくのに一番重要なのが地図に記された、手書きの赤いルートです。
(名古屋市 環境局・山中幸一作業係長)「収集する職員が経験をもとに、一番最適な収集コースを描くよう線を引いている」
この日だけで、名古屋市で8478個が回収されました。
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回収された粗大ごみは、北名古屋市にあるごみ処理工場へ。金属を取り除いた後、高温で焼却され、最終的には「溶融スラグ」という道路舗装の材料に生まれ変わっています。
午後2時半になると次回分のルート作りです。
CBC
(北環境事務所・新井聡史技士)「予約の入った家を蛍光ペンで塗って、地図を作るときに分かりやすくしています」
予約があった家を黄色の蛍光ペンで塗り、手書きの赤い線で結んでいきますが…。
(北環境事務所・新井聡史技士)「特に一方通行に気を付けるとか、見やすいように。重なるところはちょっと気を付けて書かないと分かりにくいので」
CBC
行きつ戻りつ回収し、単純に最短を一筆書きで結ぶわけではありません。例えば四つ角など、左折したいと思っても実際は進入禁止。細い道を通れば近道ですが、実際は自転車も通れない場所だったりします。現場を知っていないと作れない、このルートの作成こそ、実は一番大変な仕事です。
(北環境事務所・新井聡史技士)「(Q一枚作るのにどれくらい時間がかかるの)慣れていないと時間がかかっちゃいますね。1時間ほど」
CBC
そこで名古屋市が、新たに導入を決めたのが、AI・人工知能。人の代わりに、自動で回収ルートを作ろうというのです。先進技術を使って行政サービスを効率化する取り組みを、ベンチャー企業の誘致も兼ねて4年前から行っています。この日は受注した東京のIT企業が打ち合わせに来ました。
(名古屋市 環境局・山中幸一作業係長)「前に比べたらきれいに線を引けているなという印象」
AIが自動作成した回収ルート。予約情報を読み込んだAIが、粗大ごみの大きさや個数などから回収にあたる車両を割り振ります。そして、道路の混雑状況なども加味した上で最短ルートを作成します。完成までたった10分です。ところが…、
CBC
(名古屋市 環境局・山中幸一作業係長)「ここの右折がセンターラインが切れていて3車線またぎの右折なので、さすがに僕らはやらんだろうなという話はしていた」
道路を横断して右折となっていますが、現場は広い道路を突っ切ることになり現実的ではありません。人が作るルートとは違いました。
現在はまだ、無理な右折やUターンするルートを作る場合もあり、すぐ導入というわけにはいかない段階。ですが、今後AIに学習させていくことで、よりよいルートが出来ると言います。
CBC
(名古屋市 環境局・山中幸一作業係長)「物流の分野でもかなりAI化やデジタル化が進んでいる。技術的にうまくマッチできるかを試してみたい。生活道路を通る収集車が余計なところを通らないのは、市民にとってもメリットだと思う」
人手不足が進む中、現場の手作業や経験に頼ってばかりはいられないこれからの時代。より効率的な無駄のない行政サービスを行うため、人工知能に頼る場面は確実に増えそうです。
CBCテレビ「チャント!」1月31日放送より