【千葉魂】監督室に若手集めた夜 苦しい時こそ会話し奮起促す 千葉ロッテ

その夜、指揮官は若手選手たちを監督室に集めた。初めての事だった。チームが3連敗となった6月30日のイーグルス戦(ZOZOマリンスタジアム)の試合後。吉井理人監督は20代前半の野手を監督室に呼んだ。グラウンドに向かう姿に、思うことがあった。
「ちょっと気合を入れるタイミングかなと思った。個人個人と話をしたことはあったけど、集めて話をしたのは初めてかな」
指揮官は選手たちを呼んだ理由を話してくれた。敗戦になった結果より以前。試合前から気になることがあった。
「試合前、ベンチに若い選手たちの姿がなかった。そこはグラウンドを見ながら気持ちを集中させていって、ヨシっと気合を入れていくタイミングだと思う。ベンチからグラウンドに飛び出す姿もどこか元気がなく見えた」(吉井監督)
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指導者としてのポリシーがある。自分の考えを一方的に指摘するのではなく、まず話を聞く。聞いてあげることで発見があり、会話として成立すると考える。
「選手との対等な関係が大事。日本ではどうしても監督と選手となると上下関係をつくってしまうけど、そうではない。関係は対等。だから聞くことから始める。相手の考えを理解してあげることが大事」
だから、この時もまず選手たちに問うた。「みんな、開幕した頃と比べて、どうかな。どんなことを考えてグラウンドに向かっているかな?」。選手たちは、みな同じような答えだった。「どうしても自分の事に精一杯になってしまっている」。6連戦が続いた交流戦期間に延長戦を3度も戦った。リーグ戦再開後も暑い日が続いている。疲れがたまりやすい時期。身体も思うように動かなくなってくる。開幕の頃は身体が軽く、颯爽(さっそう)と思い通りのプレーが出来ていたが、徐々に体が言うことをきかなくなり、納得のいかない結果が続くと、思考も気が付かないうちに内へと入り込み、視野も狭くなる。今、まさにそのような時期。苦しい時である。だから指揮官はあえてナイトゲーム後の遅い時間帯にも関わらず部屋に選手を集め、話を聞き、そして最後に少し笑みを浮かべながら想いを口にした。
「怒る気は毛頭なかった。みんなの話を聞いていて、そうだろうなあとは思った。ただ、やっぱり開幕の時はもっと覇気があったし、プロなのだからどんな時でも、なにがあっても自分自身で自分の気持ちを盛り上げてモチベーション高くグラウンドに向かってほしい。もう一度、開幕の頃の気持ちを思い出してチャレンジャーとして向かっていってほしいというような話をした」と吉井監督。
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監督室から姿を現した選手たちは皆、颯爽とした表情をしていた。10分ほどの時間だったが、この苦しい時期を乗り越えるためには必要な場だった。首位のホークスとのゲーム差は4ゲームに広がっている。引き離されないための正念場。歯を食いしばって、前へと進む時だ。気持ちを一つにして戦う。「今日をチャンスに変える」。今こそ開幕時に皆が言葉にしたチームスローガンを胸にグラウンドに立つ時だ。
(千葉ロッテマリーンズ広報 梶原紀章)