9日、岐阜県中津川市で、犬の散歩中の男性がクマに襲われけがをしました。岐阜県では今年クマの目撃情報が増えていますが、実はクマの出没の増加は数年ごとに起きていて、ある自然現象と関連していると見られています。今年もその年なのでしょうか。取材しました。
今年は数年に一度の“危険な年”か クマの目撃情報が去年の1….の画像はこちら >>
(クマに襲われた男性)「距離にすると4~5メートル。(クマが)走ってきた」
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包帯姿が痛々しい70代の男性。9日朝、犬の散歩中に体長1メートルほどのツキノワグマに襲われたのです。男性は右肩をひっかかれて転倒。さらに襲われる事を覚悟しましたが…(クマに襲われた男性)「倒れて少しかじられるかと思ったが、犬が吠えていたから大事にはならなかった」連れていた愛犬のゴールデンレトリーバー・アンちゃんが吠えかかったことでクマは逃げていき、九死に一生を得たのです。
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男性の背中には縦に4本、クマの爪痕がくっきり残されています。男性は右肩の骨にひびが入るけがをしました。
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(クマに襲われた男性)「早く気づいて間合いを取っていれば、今回みたいなことにはならなかった」クマの出没は他にも。7月3日には高山市内にクマが現れ、70代の男性が腰のあたりを引っかかれて軽いけがをしました。岐阜県内のクマの目撃情報はことし4月から9日までに184件。去年は4月から7月末までで142件で、既に40件以上増えています。
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なぜクマの目撃が増えているのか。
専門家はエサになるドングリの凶作との関連を指摘します。(岐阜大学・野生動物管理学研究センター 淺野玄 准教授)「クマは秋にドングリの実を食べて冬眠に備える。ドングリの実(の量)は、周期的に良くなったり悪くなったりする。ことしはもしかしたら凶作の年になっているのかもしれない」
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ブナやミズナラなどのドングリ類は4年から5年ごとに凶作になるサイクルがあり、それに合わせるようにクマの目撃情報や被害が増えているのです。岐阜県での目撃情報のグラフを見てもはっきりと差が出ています。
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4年前の2019年に果樹園に現れたツキノワグマ。この年の目撃情報は平年の2倍から3倍近い854件。ドングリも凶作でした。
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そしてその5年前2014年のクマの目撃情報は実に1446件。11月には74歳の男性が襲われて死亡する最悪の事態も起きましたが、この年もドングリは不作でした。
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さらにその5年前の2009年には、高山市の乗鞍スカイライン畳平駐車場で観光客がクマに襲われ9人が重軽傷を負いました。この時期もナラ枯れなどでドングリが凶作でした。
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国の研究機関の森林総合研究所・動物生態遺伝担当の大西尚樹チーム長はこう話します。
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(森林総合研究所 大西尚樹チーム長)「(ドングリの凶作サイクルは)太古の昔から脈々と受け継がれている。数年に一度ドンと種をならして、一気に蓄えた栄養を使い切る。次の年は(ドングリの木は)ヘロヘロ。豊作があって、次の年に訪れる凶作の年にドンとクマが出てくる」
今年さらに増えるかもしれないクマの出没。もし出合ってしまった場合にどう身を守ればいいのでしょうか。
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(岐阜大学・野生動物管理学研究センター 淺野玄 准教授)「一番大事なことはクマと出遭わないようにすること。ラジオをつけたり複数人で大声を出したりして人がいることをクマに教えてあげると、クマは基本的に隠れたりその場から逃げたりする。それが一番大事な方法。万が一出あってしまった場合はクマをできるだけ刺激しないで、その場からクマの行動を見ながらゆっくり後ずさりして下がる」
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岐阜県は7月3日に「ツキノワグマ出没注意情報」を出し、山に入る際には複数人で行動したり鈴やラジオを身につけるなどの対策を呼び掛けています。