介護向けのゲーム機が続々と登場。そのリハビリ・介護予防の効果とは?

先日、洗剤や歯ブラシなどの生活用品の大手メーカーとして知られるライオンが、介護施設向けのゲーム機「TANO-LT」を開発し話題を呼んでいます。
高齢者が効果的な運動、機能訓練を行えるように支援することを目的としたゲーム機で、専用のモーションセンサーの前でプレイヤーが体を動かす、というのが基本的な利用方法です。どのくらい体を動かせているのかが点数化され、遊び感覚で取り組めます。
高齢世代になると体力、筋肉がどうしても衰えていきますが、それに合わせて体を動かさないでいると、衰えは加速。加齢によって心身が極度に衰えた状態である「フレイル」に陥る恐れもあります。それを防ぐため、楽しみながら体を動かせるのがTANO-LTです。
整形外科医・医学博士の松平浩氏と共同開発した「健口眠体操」をはじめ、TANO-LTの運動メニューは180以上。体を動かすのみならず、発声や脳活性化プログラムにも取り組めます。導入により、口腔機能、睡眠機能(自律神経)、運動器機能、認知機能などの総合的な向上・改善を図ることが可能です。
ライオンは「TANO-LT」の市場導入に先立ち、HITOWAグループの高齢者向け施設にて実証的導入を行っています。
同グループの施設で実際に使用してみたところ、利用者の足腰の健康、関節のしなやかさ、口腔機能(口唇・頬の力・動き、舌の力・動き)などにおいて明確に改善が見られたといいます。
これまで介護施設で行われてきた健康体操などレクリエーションも兼ねた運動トレーニングは、必ずしも科学的とは言えないものもあります。スタッフが共有スペースに入居者を集め、とりあえず一斉に行うなど、取り組んだことで実際にどのくらいの効果が出たのか、計測しないままになっている運動プログラムも少なくありません。
こうした状況に対し、ライオンは「科学的運動習慣」という新たな概念を提案。楽しみながら取り組みつつ、日ごろの運動の成果を客観的なデータにより測定するという考え方に基づいてTANO-LTも開発されています。
例えばTANO-LTでは画面に表示された動きに合わせてプレイヤーが体を動かしますが、ただ動かすだけでなく、センサーが骨格まで読み取って、どのくらい正しい動きができているのかを精密に点数化。リアルタイムで表示可能です。客観的なデータである点数を上げるため、努力ずるきっかけを作ることにもつながります。
今回は大手のライオンが参入したこともあって注目を集めていますが、実はすでに、福祉施設用リハビリゲーム機は多数開発・販売され、多くの介護現場で活躍しています。
いくつかゲーム機の例をご紹介しましょう。
こうしたゲーム機は、いわゆるゲームセンターに設置されているような機器で、見た目は娯楽目的のものと同様です。しかしあくまで高齢者の運動目的として開発され、現在では多くの介護施設で利用されています。
ゲーム機を使ったレクリエーション、機能訓練には以下のようなメリットがあります。
これまで紹介してきたのは、ライオンの「TANO-LT」も含めて、体を直接動かすゲーム機です。しかし「ゲーム」という分野で見た場合、テレビゲームもまた、近年では高齢者の趣味・レクリエーションとして捉えられるようになっています。
最近では介護施設でもテレビゲームを使ったレクリエーションが導入されるケースも多いようです。テレビゲームはテレビ画面を見て、コントローラーで画面上の人や物を動かすのが基本の遊び方。足腰を使わないので運動効果は限られますが、手先を細かく動かしたり、テレビ画面の情報を瞬時に読み取ったりと、認知機能を鍛える効果が期待できます。
また画面を見ながら自然と身体(上半身)が動く、男性でも楽しめるゲームが多いなど、メリットも多いです。普段あまり話をしない人と、テレビゲームを通して会話が増えるなどの利点もあります。
テレビゲームの内容は、パズル、囲碁・将棋、動物の飼育、車、対戦系(格闘技)など多岐に渡ります。最近では一部のテレビゲームは「eスポーツ」としても注目され、シニア世代のプロゲーマーチームもあります。
各種ゲーム機を実際に介護施設で運用する場合、課題としては以下の点が考えられます。
ゲーム機を導入後、入居者が使用に慣れて日常的に楽しめるようになれば良いですが、そうなるまでに時間がかかる可能性があります。導入時に時間・費用・手間の負担が大きくなるため、その点の対策を考える必要がありそうです。
今回はライオンがTANO-LTを開発したニュースを皮切りに、介護施設におけるゲーム機の実情について考えてきました。高齢者人口が増え続ける中、こうした高齢者向けゲーム機の開発は、各メーカーにおいて続々と進められるのではないでしょうか。