「ザク・バズーカ」は戦艦並み!『ガンダム』世界の実体弾サイズ大きすぎる問題 驚異の推定3000mmも

『機動戦士ガンダム』は、リアリティを重視したロボットアニメの先駆けですが、その設定には常軌を逸したものもいくつか見られます。なかでも火砲の大きさは驚くものが並びます。それだけ大きいか実在する兵器と比較してみました。
アニメ『機動戦士ガンダム』には、レーザー兵器以外にも「60mmバルカン砲」や「120mmマシンガン」など、多種多様な実弾兵器が登場します。その多くが、18m程度の大きさを持つ巨大人型兵器「モビルスーツ」の手持ち兵器にもなっています。
こうした宇宙世紀の兵器は、現実世界の兵器と比較すると、どの程度の大きさなのでしょうか。代表的な7つを小さい順に見てみましょう。
30mmバルカン砲は、コア・ファイターの機首や、ガルマ・ザビ専用ザクの頭部に装備されている機関砲です。
現実世界の「バルカン砲」とは、アメリカ空軍の戦闘機や、航空自衛隊のF-15JやF-2戦闘機にも装備されている、20mm多砲身機関砲M61を指します。20mm砲身をガトリング砲のように6つ束ねており、それを高速回転させて発砲します。ちなみに「バルカン」が商標登録された関係で、厳密にバルカン砲と呼べるのは20mm機関砲M61のみです。
「ザク・バズーカ」は戦艦並み!『ガンダム』世界の実体弾サイズ…の画像はこちら >>A-10「サンダーボルトII」攻撃機が機首に装備する30mm回転式多砲身機関砲GAU-8(画像:アメリカ空軍)。
実際、「コア・ファイター」などと同一口径である、A-10「サンダーボルトII」攻撃機の30mm回転式多砲身機関砲GAU-8は「アヴェンジャー」と呼ばれています。「ガンダム」に登場する機関砲の多くがバルカン砲と呼ばれている理由は不明ですが、ひょっとしたら製造企業であるTOTOカニンガム社(架空)が、未来世界で20mm多砲身機関砲M61を開発・製造するゼネラル・エレクトリック社(実在)から商標を引き継いだのかもしれません。
60mmバルカン砲は地球連邦軍の「ガンダム」や「ジム」が頭部に備える機関砲です。現実世界の多砲身機関砲の最大口径は30mmですから、史実の第2次世界大戦時で用いられた戦車砲並みの大口径砲をバルカン砲にしたと言えます。
「ガンダム」に登場するものは、60mmカートレス3砲身短バルカンで、搭載弾数は50~600発(資料により異なる)なのだとか。性能は、毎分640発、射程6000m(有効射程3500m)となっています。
ちなみに、前出の20mmバルカン砲M61も戦闘機搭載のものは毎分4000発以上の発射速度を誇るのに対し、海上自衛隊の掃海艇や輸送艇などに搭載されている、派生型のバルカン砲JM61-Mでは毎分450~500発に抑えられているのでこちらに近い速射性能といえます。恐らく、反動や射撃可能回数の観点で、発射速度を抑えているのだと思われます。
なお、射程については現実のバルカン砲M61は有効射程810~1490mなので、口径が大きくその分炸薬も多いためか、距離は長いと言えそうです。
参考までに、ボフォース社の現役艦載砲である57mm70口径砲Mk.3は、発射速度が毎分220発、最大射程2万1000mの性能を持ちます。ロシアも、対空自走砲2S38に57mm機関砲を搭載しており、こちらの発射速度は毎分30発、最大射程6000mです。
『機動戦士ガンダム』の世界にはバルカン砲だけでなく、類似のガトリング砲も登場します。
90mmマシンガンは、地球連邦軍の「ジムコマンド」や、その敵ジオン軍の「ザク改」の手持ち武器です。ジオン軍の「ザクII」は、60mmバルカン砲でも撃破できるため、90mmでも問題がないと考えられたのでしょう。ガンダムNT-1「アレックス」では、腕部に90mmガトリング砲が装備されています。
ジオン軍の90mmマシンガンMMP-80は、120mmマシンガンから口径を下げ、速射性と命中率を上げたモデルで、地球連邦軍の「ジム」や「ボール」には通用しました。
現実にはこれほど大口径の機関砲は存在しません。イタリアが1987年にオトマティック60口径76mm対空自走砲(発射速度毎分120発、最大射程1万6000m)を試作したくらいです。
90mm砲といえば、アメリカのM36対戦車自走砲や、陸上自衛隊61式戦車と同一口径で、現在でもアメリカの装輪装甲車LAV-300などに搭載されています。
ジオン軍のモビルスーツとして有名な「ザク」の初期型、「ザクI」の手持ち武器がZMP-47D 105mmマシンガン。装弾数100~145発、重量5tです。現実世界の兵器としては、陸上自衛隊74式戦車など1970年代の西側主力戦車に多く使われています。また2000年代以降も陸上自衛隊16式機動戦闘車や、中国の11式105mm装輪突撃車といった装輪式戦闘車両の主砲としても用いられる比較的ポピュラーな口径です。
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サイコガンダムの手は、この4倍広い(イラストレーター:ハムシマ)。
「ザクマシンガン」として比較的よく知られているのが、「ザクII」の120mmマシンガンZMC38III。単発と連射の切り替えができるため「ライフル」と劇中で呼ばれることもあります。
装弾数は100~145発、発射速度は毎分280発、有効射程は4200m。反動を抑えるため、初速が100m/秒と極めて遅く、「ガンダム」の表面装甲は貫通できませんでしたが、「ジム」や「61式戦車」などには有効でした。
なお、「ガンタンク」の主砲口径も120mmです。こちらは正式名称120mm低反動キャノン砲といい、とてつもない長砲身砲(推定125口径)ゆえに、射距離も240~260kmと「超」が付くほど長射程です。
現実世界の120mmクラスの砲は、陸上と水上の双方で多用されており、たとえば陸上自衛隊の90式戦車や10式戦車の主砲などから、海上自衛隊の護衛艦を始めとした各種軍艦の主砲、さらには高射砲や迫撃砲といった野砲でもよく見られます。
「ガンダム」「ガンタンク」とともに主要メカの一角を占める「ガンキャノン」。この機体の火砲の後継はガンタンクをしのぐ大きさです。
「ガンキャノン」の肩に装備されているのが240mm低反動キャノン砲です。設定で「ザクマシンガンに匹敵する連射性能を誇る」という文言がありますが、装弾数は40発程度なので、毎分280発で発射すると8.5秒で弾切れとなる計算です。
この「ガンキャノン」の砲より大口径なのが、「ザクII」のバズーカとして使われているH&L-SB25K/280mmA-Pです。口径は280mm。なお現実世界での280mm砲というと、「ポケット戦艦」として知られるドイツ海軍のドイチュランド級装甲艦が搭載していた52口径280mm砲が有名です。
「ザクII」が使用するザク・バズーカ、正式名称H&L-SB25K/280mmA-Pよりも大口径なのが、「ジャイアント・バズ」です。こちらは重モビルスーツ「ドム」の手持ち武器として登場したもので、型式番号GB03K/360mmが示すとおり、口径は360mmもあります。
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10式戦車の射撃シーン。主砲は120mm砲(画像:陸上自衛隊)。
口径360mmというと、旧日本海軍の伊勢型戦艦などが搭載した35.6cm主砲とほぼ同一といえるでしょう(連邦軍の戦艦用砲弾を流用したという資料もあります)。
なお、「ケンプファー」や「リックドムII」も同一口径のバズーカを装備していますが、サイズはかなり小さく、再設計されたものです。
一方、ライバルの「ガンダム」が使用する似た兵器に「ハイパー・バズーカ」なるものがあります。コチラは型式名「BLASH・XHB-L03/N-STD」といいますが、その口径は270mm、320mm、380mm、700mmと資料によって異なります。
設定画には、口径70cm、弾体の全長3.2mと書かれていますが、兵器のサイズ自体は「ジャイアント・バズ」よりやや小さいくらいです。
ちなみに、「ドム」の派生型である「ドム・トローペン」が用いる「ラテーケン・バズ」は「VAL-RB-T27/880mm」という型式が付与されていますが、この880mmは口径ではなく、砲弾の長さを指すようです。
では、最後に、架空世界だからこその桁違いの大口径砲を見てみましょう。
「ガンダム」や「ガンキャノン」「ガンタンク」などの母艦として多用される地球連邦軍の強襲揚陸艦「ホワイトベース」には、超巨大な実体弾を撃ち出す連装砲塔が装備されています。
資料によって、520mm、580mm、880mmと口径が異なります。大砲の全長がガンダムの長さ(18m)に近いため、そこから類推するとサイズ的には520mm砲が近いと思われます。これは大和型戦艦の46cm砲どころか、超大和型戦艦で予定されていた51cm砲すら上回る巨砲です。
ただ、「ガンダム」には、これ以上の艦載砲も登場します。それは陸上戦艦とも言われる、ビッグトレー級陸戦艇のもの。同艇には3連装大型砲と、艦首大型砲が搭載されています。
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大艦巨砲主義の極みは陸上戦艦かも(イラストレーター:ハムシマ)。
3連装大型砲は、プラモデルから推定するに、ホワイトベースの主砲塔よりかなり大きく、モビルスーツのサイズと比較すると、おそらく口径は900mmクラスではないでしょうか。ドイツが製作・運用した世界最大の列車砲が口径800mmなので、それ以上です。
加えてビッグトレー級陸上戦艦には、艦首に推定3mほどある超巨大砲が搭載されています。旧日本軍の30mm機銃弾が重量449.3g、戦艦の305mm砲弾が同452kgなので、そこから推察すると、3000mm砲弾は1発450tくらいある計算になります。ここまで巨大だと、どれほどの威力があるのか想像できません。史上最大の爆弾といわれる水爆「ツァーリ・ボンバ」が重量27tですから、単純計算でその約17倍の重さになります。
こんな大砲を搭載しつつ、ホバークラフトで浮上移動できる「ビッグトレー」は、とてつもない超兵器と言えるでしょう。