「地元民以外立入禁止!」全国をサーフ旅するカップルYouTuberが受けた“ローカルルール問題”の洗礼…顔と車の写真が地元サーファーたちの間で出回り”指名手配扱い”されたことも

自作カスタムの軽バンに乗り、日本一周サーフ旅をしているYouTuberの“はるこやねん”さんと、その彼氏でマネージャーでもあるカジさん。前編ではここまで1年半にも及ぶ旅の苦労話などを聞いたが、後編ではこれまで自身のチャンネルでは語ってこなかったサーフシーンが抱える「ローカル問題」に対する思いに切り込んだ。
――全国を旅するなかでイヤな思いをしたことはありますか?はるこ 実はサーフィン界には“ローカル問題”っていうのがあるんですよ。よくあるローカルルールが「動画や写真を撮るな」とか、「動画にするときにその場所のポイント名を載せるな」といったこと。もっとひどいところだと、「地元の人間じゃない」という理由だけで、海に入った時点で追い出されることもあります。駐車場に入っただけでにらまれたり、地元の人しか駐車場に停められないように看板が立ってたり。本当は仲よくしたいし、みんなで楽しみたいって思うんですけどね……。カジ コロナ禍になってからサーフィン人口が増えたみたいで、地元の人としてはポイントが混雑するのがイヤなんだと思います。それはわかるんですが、相手を威圧したり勝手なルールを作るのは、やっぱりやりすぎじゃないかな、と。
インタビューに答えるはるこやねんさん
はるこ きっとサーフィンを愛する気持ちは同じだと思うんですよ。私たちもサーファー人口を増やしたい気持ちで活動しているし、サーフィンを楽しむ人が増えれば地域のサーフショップにもお客さんが増える。でも、価値観の違いなのか、なかなかそれが伝わらなくて。だから、撮影も閉鎖的なポイントは避けて、地元の方が歓迎してくれるポイントだけでやってます。本当はいろいろないいポイントを紹介して、サーフィン界を活性化させたいんですけどね。――本来のサーフィンルールはどのようなものなんですか?はるこ “前乗り禁止”と言って、ひとつの波にはひとりしか乗れないとか、基本的にぶつからないようにするための優先順位とかですね。そういうルールを守っていれば、本来みんなで楽しめるものだと思うんですよ。
――閉鎖的な地域は、けっこう多いんですか?はるこ 有名なサーフィン場は基本的にオープンなんですけど、地方に行けば行くほど閉鎖的です。有名なところでも、地元の人が先に入っていると少し冷たい空気を感じることもありますが、それなら時間をずらして入ればいいので、まだマシですね。
――閉鎖的なポイントは、地元の人しか知らない“秘密の場所”みたいな感じなんでしょうか?はるこ そう思いきや、Googleマップにも載っていて、誰でもわかる場所というケースも多いですよ。もう情報が全世界にオープンになっているのだから、隠したり排他しなくてもいいじゃんって思うんですけどね。ただ、私たちも楽しくサーフィンしたいので、ローカルなポイントでサーフィンしたり、撮影したりするときは、閉鎖的なエリアかどうか、事前に情報収集しています。――平和なエリアとそうではない場所があるんですね。カジ 関東はけっこう平和なんですが、四国や九州は怖いエリアもありました。地元のサーファーたちでチームみたいなのができてるんですよ。「〇〇のブランドのウェットスーツを着てないとダメ」という謎のローカルルールがあったりして、別のウェットスーツで行ったら「どこのヤツだよ?」って言われたこともあります。
――ちなみに一番イヤな思いをしたのは、どんなことでしたか?はるこ 海を見てただけなのに、後ろからずっとついてこられて「オイ、コラ」って言われ続けたりとか、あからさまに中指を立てられたこともありました。奄美大島では撮影をしていたら、私たちの車と顔が100人単位のLINEグループで晒されちゃって。“見つけたら報告”って感じで指名手配状態だったらしく、逐一、車を盗撮されて「今ここにいるぞ」と連絡網みたいに回ってたそうです。
カジ 各地域には地元のドンみたいな人がいて、その人がオープンだとみんな良心的なんですけど、閉鎖的だとみんな冷たいんです。ある意味、ドンを抑えれば物事はスムーズに進むのかもしれないけど、そこまで苦労したりもめごとが起きるのはイヤなので、そういったポイントはスルーしてます。はるこ 一方で、地元のドン自身はそこまで外部の人間を疎ましく思ってないのに、まわりが「あいつら、なんとかしてくださいよ」と騒ぐので、ドンが代表して言ってくるケースも。地元の同調圧力のせいでよそ者を排他せざるをえない、という状況はやっぱりあるみたいです。カジ それでも、地域にかかわらず若い世代はみんなでサーフィンを楽しみたいって人が多いから、世代交代が進んで、少しずつ雰囲気が変わっていってほしいですね。
――初心者でも、そのポイントが排他的かどうか見分けられますか?はるこ 行けば、雰囲気でなんとなくわかると思いますよ。挨拶の返事があるかないかは、わかりやすい判断材料のひとつ。あとは他県ナンバーの車がたくさんあったらオープンなんだな、とか。カジ サーフィンって他のスポーツに比べて挫折率がすごく高いと言われてるんですよ。それは波に乗るのが難しいからだけじゃなく、ローカルルールに悩まされて泣く泣くやめる人も多いからだと思います。はるこ 実際、私も初心者のときに『どけ!』とか『邪魔だ!』と言われて、浜辺で涙流しながら体育座りしたこともあります(笑)。それでも私は海が好きだから続けましたけど、だいたいの人はそこでやめてしまうんじゃないですかね。カジ でも、素敵なこともたくさんあるんですよ。初対面なのに、一緒にサーフィンして仲よくなって、食事したり泊まらせてくれた人もいます。本当にそういう心優しいサーファーさんも多くいることも忘れないでほしいです。
――SNSで広く発信する人が増えれば、「これはおかしいのでは?」と問題視されたりしそうなものですが……。はるこやねんさんたちは、YouTubeでは、ローカル問題について言及しているんでしょうか?はるこ 実は、あまりしていません。もめる原因になっちゃうから……。カジ すごく難しい部分なんですよね。個人のコンテンツでローカル問題に触れるとデメリットしかないような気がして。はるこ それに、ローカル問題に首を突っ込んでネガティブな内容を投稿しても、誰もいい気持ちにならないと思うんですよ。今日はいい機会をいただいので話しましたが、自分たちの動画では、まだ触れる勇気はあまりないですね。
彼氏でマネージャーのカジさん(写真右)
――波には乗るけど、波風を立てるのは好きじゃない……ってことですよね。はるこ ですね(笑)。始めた当初から変わらないのは、私たちがサーフィンを楽しむ様子を見てもらうことで、多くの人にサーフィンに興味を持ってもらえたらいいなという思いです。まだまだマイナーなスポーツですから。なのでこれからもポジティブで楽しい投稿を届けていくつもりです。私たちの動画が、誰かがサーフィンを始めるきっかけになったなら最高ですね。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班