炭疽菌の感染者が病院を逃げ出す ロシアが異例の発表

ロシア連邦のトゥヴァ共和国で6月下旬、炭疽菌(たんそきん)に感染し入院していた患者5人のうち4人が脱走していたことがわかった。ロシア国営のタス通信が18日付けで伝えている。
炭疽菌とは、どのような菌なのだろうか。厚生労働省検疫所は、ホームページで以下のように説明している。
《1~7日間の症状のない時期のあとに、皮膚の異常(皮膚炭疽)、消化器の異常(腸炭疽)や呼吸器の異常(肺炭疽)がおこります。(中略)全く治療を行わないと、20%程度が死亡します。腸炭疽の場合は、嘔吐、発熱がおこり、続いて激しい腹痛と血まじりの下痢が見られます。50%程度が死亡します。肺炭疽では、発熱、咳、呼吸困難や嘔吐がおこり、90%程度が死亡します》
公衆衛生当局によると5人の容態は安定していたというが、皮膚に発現した黒いかさぶた(皮膚炭疽症)がすべて治癒するまでは退院の許可は出せないそうだ。また、炭疽菌がヒトからヒトへと感染することは稀だが、皮膚炭疽症が根治していない場合は感染する可能性があるという。
炭疽菌は世界各地の土壌中に生息し、ウシやウマなどの草食獣が感染するケースが多い。今回のケースも、炭疽菌に感染した馬肉を食べたことが原因だという。
炭疽菌といえば、’01年9月に起きた「アメリカ炭疽菌事件」が有名だ。
同時多発テロ事件の1週間後に、米国内の大手メディア各社や上院議員のオフィスに炭疽菌が封入された容器が送りつけられ、開封した5人が肺炭疽を発症し亡くなった。
ニューヨークに本拠を置くワールドニュースサイトFuturism.comは、「ロシアの国営メディアはバイアスのかかったニュースやプロパガンダを発信することで知られているが、ロシア当局がこの炭疽菌に関する情報を表に出すことで何を得ようとしているかは不明だ」としている。
欧州宇宙機関によると、世界各地の永久凍土の融解が進みつつあり、様々な種の菌やウイルス、バクテリアが解き放たれているという。’16年にはロシア極北のヤマロ・ネネツ自治管区で炭疽菌の集団発生が起きたが、これは炭疽菌に感染したトナカイの死骸が溶けた永久凍土から露出したことによるものだとされている。