藤井七冠が対局する「銀鱗荘」から魅力を再発信・小樽市…あの街行く北海道

多くの歴史的財産を抱える全国的観光地の小樽市が、今夏、新たに注目を集めている。“時の人”将棋の藤井聡太七冠(21)が小樽で7月25、26日に王位戦、11月10、11日に竜王戦に臨む。会場となるのは、このほど国の登録有形文化財に登録された老舗高級旅館「銀鱗荘」だ。観光名所の「小樽運河」も、今年竣工(しゅんこう)100周年を迎えた。(取材・小林聖孝)
小樽港東端の平磯岬の高台に豪壮で優美なたたずまいを見せる「銀鱗荘」。明治後期に余市町で建てられたニシン御殿を移築、1939年に旅館として開業。このほど、近代和風ホテルの「旧本館」と、ニシン倉庫を改修したレストラン「グリル銀鱗荘」が、国の登録有形文化財になった。
施設は家具製造販売大手「ニトリ」が2018年に取得、子会社「ニトリパブリック」が運営。対局室は、新館の特別和洋室「鶴」。最上階の5階で、石狩湾や小樽市街を一望できる。似鳥靖季(はるき)総支配人は「有形文化財登録の年に、大事な対局が実現し感謝。全国の皆さんに施設、小樽の魅力を再発信する機会にしたい」と期待する。レストランも、和食からフランス料理まで充実。藤井七冠の“勝負メシ”にも対応可能だ。
対局地の観光地巡りも注目されるが、同総支配人が「乗り鉄」として知られる藤井七冠へ“お薦めスポット”に挙げたのは「小樽市総合博物館」。明治時代に道内で活躍した蒸気機関車など、貴重な鉄道車両が多く展示されている。サプライズ訪問が実現するか―。
◇小樽市 地名はアイヌ語の「オタ・オル・ナイ」(砂浜の中の川)に由来。古くから港湾都市として発展。人口約10万7000人。歴史的建造物も多く、全国的観光都市となっている。出身有名人も多く、スキージャンプの1980年レークプラシッド五輪70メートル級銀メダルの八木弘和、陸上短距離の小池祐貴、女優の宮本信子、お笑い芸人の加藤浩次らがいる。
〇…小樽観光のシンボル小樽運河は1923年に完成して以来、100周年。小樽運河100年プロジェクト実行委員会も設立、秋にかけて記念イベントも展開予定。小樽観光協会の松木道人さんは「節目の年に、歴史とグルメが凝縮された運河エリアで、新たな発見をしていただきたい」と話した。
〇…“藤井効果”は小樽市内にも波及。老舗和菓子店「小樽つくし牧田」では、人気のシマエナガが将棋の駒「歩」を持つ特別仕様の練り切りを発売中。牧田浩司社長は「シマエナガ和菓子は4年前から販売していますが、今回の特別仕様は一番の反響。ぜひ、ご本人にも試食していただきたい」と希望した。