水素で走るBMWが日本上陸! 何が目的?

BMWの「iX5 Hydrogen」が日本にやってきた。水素で発電し、作った電気でモーターを回して走る燃料電池自動車(FCV)だが、日本上陸の目的は? 水素満タンでどのくらい走れる? 実車を確認して話を聞いてきた。

○水素を充填するインフラ整備は進むか

「iX5 Hydrogen」はBMWのSUV「X5」をベースとする「燃料電池実験車両」だ。BMWグループでは2020年代後半にFCVを市場投入する予定で、それに向けドイツや米国などの主要国で実証実験を行っている。今回は日本でも公道での実証実験を行うことを決め、3台のテスト車両を導入した。ちなみにBMWは、2011年からトヨタ自動車と共同でFCVの基礎研究を行っている。

FCVは水素で発電してバッテリーに電気を貯め、その電気でモーターを回して走るクルマだ。電気で走るという意味では電気自動車(バッテリーEV)と同じだが、BEVのバッテリーを充電するのに比べるとFCVへの水素充填は極めて短い時間で済む。「iX5 Hydrogen」の場合は約3分程度の水素充填で約500kmを走行可能。BMWのBEV「i4」の場合、バッテリー0%の状態から約80%までチャージするのに、90kWの充電器で約40分かかるという。

FCV普及のネックとなるのは水素ステーションの少なさだ。BMWによれば、世界で稼働している水素ステーションの数は2023年3月現在で1,000カ所以上。2020年には545カ所だったというから急増してはいるようだが、ガソリンスタンドやBEV用の充電施設と比べればインフラの脆弱さは明白だ。日本で稼働中の水素ステーションは163カ所とのこと。一方でガソリンスタンドは、数を減らしているといっても3万カ所近くある。その差はかなり大きい。

日本政府は2023年6月に改訂した「水素基本戦略」で水素の利用拡大に向けた意欲的な姿勢を示した。今後15年で官民合わせて15兆円の投資を行い、水素の供給を現状の6倍ほどの規模にあたる1,200万トンまで増やす計画だ。なのでFCVの普及に向けては追い風が吹いているともいえるが、ガソリンのようにセルフで充填できる水素ステーション(欧州にはあるらしい)も含め、日本で水素インフラ網の整備が進むかどうかに注目したい。