全国一“日本語指導が必要”な外国籍の子どもが多い愛知県 日本社会のためにも必要な「日本語教室」の現状とは?

日本語指導が必要な外国籍の子どもが、日本で一番多く暮らしている愛知県。子どもたちにとって、日本語の習得は生活のために必要不可欠です。そして、子どもたちへの日本語教育は、“日本社会”にとっても大きな意義を持っています。外国籍の子どもたちに日本語を教える、日本語教室の現状を調査しました。
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愛知県西尾市の日本語初期指導教室「カラフル」。来日したばかりで言語も習慣もわからない、市内に住む外国籍の小・中学生を対象に、基礎的な日本語や生活習慣を教えています。子どもたちは約3か月間、在籍する学校で週1日、残りの週4日は「カラフル」で勉強。日本社会に馴染めるように支援員が手助けします。
(日本語初期指導教室「カラフル」菊池寛子室長)「(前は)ブラジルの子がほとんどでしたが、(今は)ベトナムとかフィリピンとか、アジア圏がだいぶ増えてきている。(Q人数としても増えている?)増えています」文部科学省が調査した日本語指導が必要な外国籍の児童生徒数は、10年で2倍近く増加しています。
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その中で、最も人数が多いのが愛知県です。(愛知県多文化共生推進室・中村克成主査)「日本語指導が必要な外国籍の子どもたちの数は、(愛知県が)一番多い」
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愛知県は外国籍の児童生徒が1万人を超えており、全国で突出して多い状態。その理由は、自動車産業を中心に、工場などで働く外国人労働者が多く、家族を呼び寄せて日本で暮らす人が増えているためです。
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外国籍の子どもたちの「居場所」が他にもあります。愛知県犬山市にある日本語教室「寺子屋」には、午後4時過ぎになると外国籍の子どもたちが集まってきます。NPO法人「シェイクハンズ」が運営しており、週5日、午後4時から9時まで、スタッフやボランティアが宿題の面倒をみるなど、放課後学習を支援しています。
(NPO「シェイクハンズ」松本里美代表理事)「お子さんが日本語がわからなくて、学校で勉強もわからないし、忘れ物が多いし、けんかも多いと聞いたものですから。もうとにかく、受け皿は作らなきゃいけないと思って」
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代表の松本さんは、16年ほど前にボランティアで日本語教室を始めました。当初は数人だった子どもたちも、現在では、犬山市内に住む外国籍児童生徒の7割にあたる約80人が通っており、利用者は年々増えています。(NPO「シェイクハンズ」松本里美代表理事)「流ちょうに(日本語を)しゃべっているから大丈夫というのは全然違う。日本語が母国語じゃない子が普通に音読していても、わからない意味はいっぱいあるので。(学校の授業に)現実的に追いつくまで時間がかかるので、その間フォローをしている」
日本の学校の授業では、外国籍の児童・生徒が手厚い日本語指導を受けるのは難しいのが現実です。もし、日本語がわからない状態が続くと、不登校になってしまったり、孤立して犯罪に関わってしまったり、より数多くの問題を抱えることになります。そのため、日本語教室は外国籍の子どもたちにとっても、日本社会の安定のためにも、必要だと松本さんは話します。
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日本語教室が「居場所」となっているのは、子どもたちだけではありません。小学3年生のグアルディア・ケンタくんと、お母さんのジェシカさん親子。ジェシカさんはボリビア出身で、日本でケンタくんを出産しました。(グアルディア・ケンタくん)「(Q家では何語で話す?)スペイン語とか日本語とか。(Qどっちのほうが多い?)スペイン語」
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ケンタくんは流ちょうに日本語を話せますが、ジェシカさんは片言でしか話せないため、親子の会話は基本、スペイン語です。(ケンタくんの母・ジェシカさん)「私、日本語わからない。ひらがな・カタカナ・漢字。私は(ケンタの)宿題教えられない。本当にありがとう。寺子屋すごい」
保護者にとっても、日本語教室は心強い味方です。しかし、日本語教室にも悩みがあります。(NPO「シェイクハンズ」松本里美代表理事)「もう少し財政が豊かならいいんですけど、(子どもが)増えれば増えるほど人材は要りますからね。何人ボランティアさんがいても、足りるってことはない」
悩みは資金面の課題と人材不足です。教室運営は行政の助成金や企業の寄付などで賄っていますが、最近は特に電気代など、物価高騰の影響が重くのしかかっています。また、通う子どもが増える一方で、指導者の人材確保は難しいのです。
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2023年2月からボランティアとして来ている竹之内春巳さん。住友理工に務めながら、週1日ここで子どもたちの学習支援をしています。(週1日ボランティア・竹之内春巳さん)「フレックスタイムで水曜は、午後3時に上がらせてもらっています」
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これは、2022年から始まった新たな取り組みです。中部の経済団体が企業からボランティアを募り、愛知県などと連携して人材不足に悩む県内の日本語教室に派遣しています。(中部経済連合会国際部・野村一樹部長)「『今後も多くの外国人材に活躍してほしい』というのが企業の思いでありまして、当然家族も住みやすい環境づくりを目指しています」
グローバル企業が多い特性を生かし、家族と暮らす外国人労働者に「勤務地」として選ばれる地域づくりを目的としています。昨年度は、企業と日本語教室のマッチングイベントを2回開催。現在約60人がボランティア活動をしています。竹之内さんもその1人です。(週1日ボランティア・竹之内春巳さん)「僕でいいのかなって。ボランティアになかなか踏み込めない。でもやってみると楽しいし、自分も成長できます。『君たちも頑張って勉強して、この会社に入らない?』って目標を作れる。子どもたちに夢を与えたいです」
NPO「シェイクハンズ」の松本さんも、ボランティアの人に日本語を教わる中で、働くことへの憧れや親近感・社会への興味を持つきっかけになればと話します。日本語教室は、地域住民や企業など社会との接点を持つ拠点にもなっています。
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人口の減少で、働き手となる外国人なしには成り立たない日本。外国籍の子どもたちに対する手厚い支援や、環境づくりが求められています。
CBCテレビ「チャント!」7月10日放送より