〈日大アメフト部・大麻疑惑〉悪質タックル問題から生まれ変わった部が再び窮地に「最近は騒がず大人しいいい子ばかりだった」と近隣住民は動揺、部員は直撃に…

「フェニックス」の愛称で知られる日本大学アメリカンフットボール部員が、学生寮(東京都中野区)で違法薬物の大麻を所持していたという疑惑が発覚した。大学側はアメフト部の活動を停止させ調査に乗り出すとともに警視庁に協力を依頼した模様だ。5年前の悪質タックル問題を受け、生まれ変わったはずの“不死鳥”は窮地に立たされている。
関係者らによると「寮内で大麻を吸っている部員がいる」などの情報があり、大学関係者が7月上旬に調べたところ、部員のロッカーから植物片が見つかったという。大学は、7月22日には保護者説明会を開き、「犯罪事実を確認すれば厳正に対処する」などとして、監督・コーチら全スタッフ、退部者を含めた部員全員から聞き取り調査を行なっていることや警視庁に相談していることを明らかにした。これに伴い、同部は全体練習を当面停止しているという。
日大アメフト部寮(撮影/集英社オンライン)
同部は1940年に創部、大学日本一決定戦である毎日甲子園ボウルでは、関西学院大の33回に次ぐ21回の優勝を誇る東の雄だ。チームカラーは関学大の青に対して日大が赤で、長年にわたる「青と赤」のライバル関係を築いてきた。ところが2018年、その関学大との春の定期戦で、パスを投じて無防備になった関学大の選手に、日大の守備選手が背後から危険なタックルを浴びせて全治3週間のけがを負わせた。タックルは、審判がプレー終了のホイッスルを吹いたしばらく後に行われたことが、関係者や観客らが撮影していた動画ではっきりとわかり、この動画が瞬く間に拡散されたことで大炎上。タックルをした選手が実名、顔出しで記者会見に臨み、これが監督やコーチの指示によるものだったことを明らかにするなど、前代未聞の展開を見せた。
2018年のタックル問題の際会見した内田前監督(写真/産経新聞)
この影響で同部は一時活動停止に追い込まれ、関東大学リーグでも下部に降格。公募で新監督を決めるなどスタッフも刷新された。2020年には関東を制し、甲子園ボウルで関学大と対決するなど復活ののろしを上げたが、昨2022年シーズンは関東大学最上位リーグの7位に甘んじていた。
今回、大麻とみられる薬物が見つかった部員寮の周辺もにわかに騒がしくなってきた。近くに住む60代の女性はこう語る。「悪質タックル問題の前までは、まだやんちゃな学生もいて、夜の11時過ぎでも窓を開けっ放しで大声を出したり、酔っ払って騒ぐ子もいて、そのたびに近所のお父さんたちが注意しに行ってました。でも最近は、そういう近所迷惑な行為もまったく影をひそめるようになって、うちの主人も『最近の子は大人しいねえ』なんて言ってたほどです。朝に出かけて、練習が終わったら夕方に帰ってきますし、夜中に出入りっていうのもまったく見ない。本当に真面目ないい子たちですよ」別の60代の女性も、日大アメフト部員たちには好印象しか持っていなかった。「どの子もみんな、会えば気持ちよく挨拶をしてくれるし、奉仕活動の一環で近所の公園の掃除も4人くらいで定期的にしてくれています。そういうときには子どもたちにも優しく接してくれる、いいお兄ちゃんばかりで、近所の人たちからしたら息子に近い感覚ですよ。最近は猛暑だから、庭の水やり中に通りかかった彼らに水をかけてあげると喜んだりしてね。そういう意味でも、今回の大麻騒ぎは物事の善し悪しを判断できない『子供』の部分が出てしまったんですかね。例のタックルの件はすっかり落ち着いていたし、いい子が多いことを知ってるだけに残念です」
日大アメフト部の寮(撮影/集英社オンライン)
60代の男性も残念そうだ。「昔はやんちゃな学生が多くて『騒ぐんじゃない!』ってよく注意したものですけどね。タックル事件以降は、コロナの流行りだしたあたりからですかね、まったく迷惑だと感じることもなくなって、最近の子はそういうバカなこともしないんだって思ってたくらいですから、大麻が見つかったっていうのは驚いてますよ。町内で清掃活動なんかがあればみんなで真面目に取り組んでくれたし、試合とかで夜の遅い時間に帰ることがあっても、静かに寮に入ったりと近隣にも気遣いできる学生ばっかりなんだけどね」寮の近くには、広報部員として活動する日大生も姿を見せていた。「普段は部活動の活躍ぶりを紹介する学内向けの記事作りをしているんですけど、今日は顧問からの指示で念のため寮の写真だけ撮りに来ました。大学側からは調査の進展具合なども一切説明がなくて、そもそも報道されるまでこんな騒ぎがあったこと自体、知らなかったんです。夏休み中なので学内で情報が回ってくるということもないので、自分も戸惑ってます」
寮に帰ってきたアメフト部員たちにも声をかけたが「自分たちもわからないことばかりで、答えられることがないです。学校に聞いてください」「すみません、自分たちからは何も話せないです。本部に連絡してください」と、困ったような表情を見せるだけだった。アメフト部員がよく訪れるという近所の定食屋の女将さんも、心配そうだ。「あの子たちはみんな体も大きいからガッツリしたお肉系のメニューに、ご飯も大盛りで頼んでくれるんだけど、もっと食べれるでしょってさらに大盛りにしてあげることもあるんですよ。『今日もお疲れ様ね』と声をかければ『ありがとうございます! お腹空いてます!』と返事をしてくれたり、食べっぷりもすごく気持ちがいいんですよ。本当に大きい息子が増えたみたいな気持ちですよ。そんな息子みたいな子たちが大麻なんてやってて欲しくないし、何かの間違いだったらいいんですけどね。前のタックルの件が騒がれてたときも、気まずいのかお店に来ることが少なくなったりしたことがあったんです。今回の大麻が事実だったとしても、関係ない子たちは気兼ねなくご飯を食べに来てほしいですね」
日本大学(フェイスブックより)
8月2日午後6時頃、林真理子理事長は報道陣に「私どもで調査を始めましたが、違法な薬物が見つかったとかいうことは一切ございません」「なんとか学生を信じたいという気持ちでいっぱいです」と答えた。※「集英社オンライン」では、今回の事件や大学にまつわるトラブル、不祥事について取材をしており、情報を募集しています。下記のメールアドレスかTwitterまで情報をお寄せ下さい。メールアドレス:[email protected]@shuon_news取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班