茨城ダッシュから阿波の黄走りまで…全国にある危険な“ご当地走り” 評論家が指摘「行為は概ね3つに集約」

夏休みを迎え、レジャーなどで、自分の住まいでない地域で車を運転する機会が増えるかもしれません。全国の「危険なご当地走り」をまとめました。
全国には、愛知県の「名古屋走り」、大阪府の「大阪走り」、茨城県の「茨城ダッシュ」、長野県の「松本走り」、岡山県の「岡山ルール」、愛媛県の「伊予の早曲がり」、徳島県の「阿波の黄走り」といった様々な呼び名の「ご当地走り」があります。「岡山ルール」はウインカーを出さないで強引に割り込む車線変更です。
このため、岡山県の道路には「ウインカーを促す」道路標示がある場所もあります。
「伊予の早曲がり」と「松本走り」や「茨城ダッシュ」は、いずれも青信号で直進車よりも右折車が先に曲がる行為です。
愛媛県では非常に多いため、「伊予の早曲がり禁止」と書かれた札を掲げて交通安全運動も行っています。 「阿波の黄走り」は、信号が黄色の際でも進む、赤でも進入することがあるということです。
「ご当地走り」は、様々な呼び名がありますが、全国の車事情に詳しい自動車評論家の国沢光宏さんによりますと、概ねこの3つに集約されるということです。
「名古屋走り」について国沢さんは「1つが突出するのではなく、全般的にマナーが悪い」としていて、3つのご当地走りが全て行われているといいます。名古屋文化を題材にした、安藤正基さんの「八十亀ちゃんかんさつにっき」(一迅社)でも、「名古屋走り」を題材にしたマンガが描かれています。 安藤さんの漫画では「ウインカーなしの車線変更に次ぐ車線変更」。
「制限速度プラス20キロは当たり前の速度超過」「異常なまでの車間距離」。
「すべて名古屋では日常茶飯事」と紹介されています。
過去にウインカーを出さないで車線変更して事故を扱った牧野太郎弁護士は、事故を起こした当事者に聞くと「昔からやってる」「みんなやってる」「いつもどおりしたら事故にあってしまった」といった反応で、あくまで牧野弁護士の印象としながらも、事故を起こした本人に悪気がなく「それが当たり前」の感覚なのではないかと話していました。
JAFが2016年に行った交通マナーのアンケートでは「まったく思わない」「あまり思わない」「やや思う」「とても思う」の4段階の回答で「ウインカーを出さない車が多い」という質問について「とても思う」と答えたのは、全国平均の29.4%に対し愛知県は32.7%、ワーストは岡山県の53.2%でした。「無理な割り込みをする車が多い」という質問で「とても思う」と答えたのは、全国平均の17.6%に対し、愛知県が22.3%、ワーストが大阪府の24.5%という結果でした。
いずれも愛知県は全国平均を上回り、運転マナーが悪いと思っている人が多いようです。「ご当地走り」が生まれた背景について国沢さんに聞くと「長野走り」は「松本城などがある城下町では右折レーンが少なく、後ろを待たせないようにという気遣いからではないか」としています。名古屋は車線が多いため、車線変更の機会も多く、煩わしさからウィンカーを出さなくなったのではないかと説明しています。警察庁の調査によりますと、2022年の交通事故での死亡者数は1位が大阪府の141人、2位が愛知県の137人、3位が東京都の132人で、岐阜県は75人で11位、三重は60人で15位でした。
ただ愛知県は、車の保有台数が全国で最も多いため事故が多いという視点から、車1万台あたりの人数を調べると、1位が岡山県で0.48人、2位が高知県で0.46人、3位が岐阜県で0.44人、三重県は0.39人で8位、愛知県は0.26人で42位でした。※自動車検査登録情報協会の数値(2023年3月)の数値を元に算出
この結果を踏まえて国沢さんは「名古屋走りはあくまで『一部の不届き者』が起こしていることではないか」説明しています。2023年7月5日放送