ロシア上空迂回で超ロングフライトになった「ANA欧州線」運航はどう変化? 実乗&パイロットに聞く“工夫”

ロシアによるウクライナ侵攻により、ロシア上空を通過していたANAのヨーロッパ線は、ロシア上空を迂回する飛行経路を採用しています。今回その便に搭乗したほか、同便を担当するパイロットに話を聞くことができました。
ロシアによるウクライナの軍事侵攻により、2022年から国内航空会社各社はヨーロッパ線において、ロシア上空を迂回する飛行経路を採用しています。今回、実際にANA(全日空)便に乗りその迂回経路を体験したほか、このルートを操縦するパイロットからも話を聞くことができました。
ロシア上空迂回で超ロングフライトになった「ANA欧州線」運航…の画像はこちら >>ヒースロー空港から羽田空港へ向かうANA便(乗りものニュース編集部撮影)。
たとえばANAの羽田~ロンドン線は2023年現在、原則として、羽田発が北極上空を経由する北回りルート、ロンドン発がトルコやカザフスタン、中国上空を経由する南回りルートが採用されています。
時刻表上のフライト時間は羽田発が14時間25分、ロンドン発が14時間05分。ロシア上空を通る従前のルートとくらべて2時間から3時間ほど飛行時間が伸びており、時間で見ると、ANA国際線の最長路線である成田~メキシコシティ線(成田→メキシコシティ12時間15分、メキシコシティ→成田が14時間35分。データは2018年のもの)と匹敵、もしくは上回るロングフライトとなっています。
筆者が取材時、往路は8割程度、復路はほぼ満席といった状況でした。機内食は巡航後1~2時間後に1回、着陸2~3時間前に1回の合計2回。たとえばエコノミークラスの場合、1度目はフルセットの食事で、2度めはメインディッシュに加え、軽めのフルーツなどのスタイルで供されます。
消灯時間は食事提供のあいだ6時間程度といったところで、ビジネスクラスではフルフラット状態で寝られることはもちろん、エコノミークラスでもフットレストがついており、ある程度、脚を伸ばした状態での仮眠が可能です。
また、取材日は雲がかかっているため見ることができませんでしたが、往路の北回り航路では消灯時間中、北極上空を通ります。天気がよければ空から北極圏を眺めることができるのも、ロングフライトのなかの楽しみのひとつになりうるでしょう。
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欧州線の現状について説明してくれたANAのパイロット(乗りものニュース編集部撮影)。
同路線を運航するパイロットは「フライトが長くなるぶん、長さを感じさせないような工夫を、地上スタッフや客室乗務員、それぞれが凝らして部分が多く感じます。そういったところをぜひ感じていただければ」としたうえ、運航上の工夫や苦労を次のように話します。
「北極圏上空を通過する際には、磁気などの影響で無線が入りづらくなるのが、これまでの運航とは大きく違うポイントです。そのため、いろいろなところでアンテナを張り巡らせながら代替手段を講じて、クルー全員で安全運航を実現しています」
「万が一の際に目的地以外の着陸先として設定されている『代替空港』が、迂回ルートでは少ないというのもこれまでと違うところです。以前、北回りルートの東京発の便を担当したとき、カナダ北部やアイスランドの気象条件が悪く、代替空港として使用できないことがあり、フライト直前に回復の見込みが立たないとして、南回りルートに変更となったことがありました。時間的な制約があるなか、普段の想定と違った対応を求められるケースもあるのが、準備面などで従前とは違うところです」