集団リハビリ施設が各地で広がっている正規のリハビリとして認められるかが普及の課題

リハビリには理学療法士などの専門職が1対1でトレーニングなどを行う「個別リハビリ」と、一人の専門職と複数の患者や利用者グループで行う「集団リハビリ」があります。
集団リハビリには、「グループをつくって指導者が同じ動作を示しながら治療する方法」と、数人を対象として「1人のリハビリ専門職が一人ひとりの状態に合わせて個別のプログラムで治療する方法」があります。
そのほか、日常生活動作の機能などを訓練するレクリエーションなども、集団リハビリの一種です。
かつては一般病院などでも行われていましたが、2006年の診療報酬改定によって、医療機関で行われていた集団リハビリは診療報酬に算定できなくなってしまいました。
そのため、基本的に集団リハビリは介護施設や自治体などによって実施されています。
リハビリは、主に3つの時期によって目的や方法が異なっています。

このうち集団リハビリは、主に後遺症などを改善するため、介護施設などで行われるので生活期に用いられます。集団リハビリには、単なる機能回復だけでなく、さまざまなメリットがあります。
例えば、参加意欲の向上です。個別リハビリは1対1で受けるため、途中で投げ出してしまう方もいます。しかし、集団リハビリの場合は同じ目標を持った仲間と受けるため、参加への意欲が湧きやすいのです。
また、理学療法士が少なくても効率的にリハビリを行うことができるので、人材不足な介護施設には大きなメリットになります。
リハビリができる介護施設は、主に以下の通りです。
介護保険サービスでは、65歳以上の高齢者もしくは40歳以上65歳未満の特定疾患などで要介護認定を受けている方がリハビリを受けられます。
医療機関で受ける個別リハビリは日数や症状の制限がありますが、介護保険でのリハビリはそういった制限がなく、長期間のリハビリが必要な方に向いています。基本的には、日常生活全般の機能向上・維持が主な目的となっています。
理学療法士などの専門職が行う専門的なリハビリもあれば、介護職や看護師などが行うレクリエーションなどの生活リハビリがあります。
代表的なのは通所リハですが、近年はその数も増えています。

近年、集団リハビリを提供する場は介護施設だけにとどまりません。自治体などが運営する通いの場でも集団リハビリが行われています。
宮崎県では、2022年には集団リハビリを目的とした通所教室「結」を設置して、高次脳機能障がい者の社会復帰を目指して生活技能訓練などを行っています。
生活技能訓練とは、認知行動療法に即したリハビリテーション技法のことで、ストレス対処や感情コントロール法などのスキルを学びます。
高齢者だけでなく20代の方も参加しており、介護保険サービスにおけるリハビリとは異なりますが、民間でも集団リハビリを提供する団体なども生まれています。
このように介護保険が適用されない集団リハビリは、より気軽に参加できるうえに、要介護認定などの制約もありません。
集団リハビリは診療報酬から除外されているため、実質的に医療機関では急性期や回復期などの個別リハビリだけを行うようになっています。
専門的な集団リハビリは介護保険施設で行われるようになりましたが、全体的に理学療法士などの専門職が不足する傾向にあります。
そのため、自治体や民間で集団リハビリを提供する場合、専門職の確保が困難になります。
前述した宮崎県の通所教室では、外部の作業療法士や医学部の学生らの見学を積極的に受け入れ、人材に広く周知して将来的な人員確保に乗り出しています。

集団リハビリは効率的に行えるうえに、参加意欲が高まりやすいというメリットがあります。また、地域住民たちが積極的に参加すれば、地域のつながりを生むことにもつながります。
現在、各自治体で構築が急がれている「地域包括ケアシステム」の理念にも通じています。
介護施設や医療機関が積極的に実施するのが難しいのであれば、自治体などが場を提供し、医療機関や介護施設などから理学療法士を派遣するなどの仕組みづくりが普及のカギを握ります。
集団リハビリは、生活期におけるリハビリとしてメリットが多く、地域住民をつなぐ場にもなります。
地域包括ケアシステムのネットワークを活用して、医療機関や介護施設から専門職を派遣するなどの対策を打てば、全国的な普及につながるのではないでしょうか。