「“菅田将暉に似てる”は光栄だけど恐れ多い(笑)」Z世代のネクストアイコン・のせりんの素顔。ジェンダフリーファッションにこだわる理由

枠にとらわれないルックスとセンスに、アパレルシーンがいま熱視線を送るのが20歳のモデル、のせりん(能勢倫)だ。“Z世代のネクストSNSアイコン”とも称される彼はいったいどんな人物なのか。のせりんのすべてがわかるインタビュー、その前編。
――ジェンダーフリーの要素を含め、奇抜なファッションで注目を集めているのせりんさん。いつからファッションに興味を持ち始めたんですか?のせりん(以下、同) 中学生のときですね。芸人の渡辺直美さんのセンスを見て、かわいいのはもちろん、何かに縛られず自由に表現する感じに憧れたんです。だから僕も当時から渡辺直美さんプロデュースの「PUNYUS」(プニュズ)ってブランドの枝豆イヤリングをつけたりして、他人と違うことをしたいっていうのはあったかもしれないですね。
――高校生になってファッションに変化は?高校3年間は三軒茶屋のビアバーでバイトして、自分で稼いで好きなものを買えるようになったり、Instagramを始めてそれをきっかけにサロンのモデルをやるようになったのは大きいと思います。それにヤンチャな子やアゲなギャルの多い高校に通ってたんですけど、洋服好きも多くて、ストリート系、ルード系、アメカジ系、韓国系、フォーマル系などいろんなファッションをする同級生がいて。僕は自分のファッションというのがなかったから、そこから影響を受けて、自分の着る服にも取り入れていたんです。――それがのせりんさんの“ジャンルレス”のルーツ。そういえば聞こえはいいけど、単に飽き性だから同じジャンルの服を着続けられないんです。だからひとつのファッションを突き詰めてる人には逆に憧れます。
――“ジェンダーフリー”になったのも高校時代から?高3くらいのときですね。高校にモデルをしている女の子の友達がふたりいて、家にも遊びに行ってたんです。そのときにキャミソールやスカートを借りて外を出ているうちに、「意外と着られるかも」と自信がついたんです。もともと体が細いから女性モノのサイズが合ってるんですよね。ただ、ワンピースやドレスなんかは着ないですよ。あくまで、“男が着てもカッコイイもの”、“かわいいよりイケてる”を意識します。
――ジェンダーフリーに対する世間の反応に思うことはありますか?けっこう聞かれることが多いんですが、正直どうとも思わないです。僕はまわりが気にならないから女性モノを着ますし、恋愛も、僕は女性と付き合ったことしかないのでわからないだけですけど、今後男性を好きになる可能性も十分にあるんじゃないですか。深く意識したことがないから気のきいたことは言えませんが、もしそういうことで悩んでる人がいたら、受け入れられつつある世の中だから一歩踏み出してみるといいと思います。
――のせりんさん自身が誹謗中傷を受けることは?エゴサまではしないからよくわかりませんね。SNSのDMで「オカマ」とか言われることはありますが、男性から「ヘアスタイルやファッションを参考にしてます」とか言われることのほうが多いし。そういうコメントは純粋にうれしいですね。“カッコイイ”だけじゃなくて、“カワイイ”と言われるのも全然うれしいです。「菅田将暉さんに似てる」ってよく言われて、とても光栄ですけど、どう反応したらいいのか恐れ多くて悩んでます。イケてる返しを見つけたいですね(笑)。――高校卒業後をどう過ごしていたか教えてください。絵を描くことがすごく好きだったんで、グラフィックデザイン系の専門学校に進んだんです。でもやりたかったことと違うなと思ってました。そのタイミングで今の事務所に声をかけてもらったんで、学校は2ヶ月で辞めました。そのときに親との衝突がありました。お父さんは“やりたいこと尊重派”だけど、お母さんは現実主義だから「食べていけるかわからないのに……」と言ってました。もちろん今ではお母さんも応援してくれてますよ。
――やはりモデル活動がメイン?芸能界に入った当初はそうでしたね。ファッションは好きなんで今後も続けたい。ただ、僕が世間に知ってもらえるようになったのは(恋愛リアリティ番組の)『オオカミちゃんとオオカミくんには騙されない』(AbemaTV、2022年8月~10月配信)に出てからですね。
――そこでも奇抜なセンスで存在感を放っていましたが、演技を評価する声も多かったです。あの番組に出演してから、お芝居のオーディションがよく入るようになりました。それまでいっさい演技の仕事も経験もなかったので、最近はレッスンを受けています。――そして、松岡茉優さんや芦田愛菜さんも出演する今年7月から放送中の新ドラマ『最高の教師 1年後、私は生徒に■された』(日本テレビ系)に出演が決定。オーディションは自分としてはうまくいった気がせず、結果も待たずに落ち込んでて、マネージャーと「次がんばろう」って話をしてたから合格って聞いてビビリました。しかも、これまではVTRやドラマのワンシーンの出演のみで、名前のある役はこれが初めて。これをきっかけに演技もがんばりたいなと思ってます。
――「オオカミ」ファンからは印象が変わったという声も。「オオカミ」のときは金髪のショートヘアでしたからね。年明けに黒くしてドラマが終わる9月まで変えられない。ここまで伸ばしたのは高校生以来だから懐かしい気分です(笑)。クランクアップしたらまた髪でいろいろと遊んでみたいし、ネイルもしたいですね。――撮影はどうですか?僕が演じる不破大成は、基本面倒くさがり屋でまわりを俯瞰して見るタイプ。僕と重なる部分も多いのでこのドラマを通して自分と向き合い、大きく成長できそうな感じがしています。撮影はワクワクした気持ちと同時に何もかもが初めての現場なので、正直にいうと不安が大きいです。でも毎回刺激的な現場で楽しさと、緊張が入り交じっています。共演者もすごい方ばかりで、毎回勉強になります。――現場にはなじめていますか?最初は緊張していたけど、今では学生時代に戻ったような気分でみんなと接することができてます。中でも共演者に水曜日のカンパネラの2代目ボーカル、詩羽がいたのは心強かったです。実は高校時代から顔見知りで、たまに仕事が被ることもあったんですけど、ここまでちゃんと一緒に仕事するのは初めて。現場では一番一緒にいます。
※出演中のドラマ『最高の教師…』の舞台は高校。後編では、実際にのせりんの人間形成に大きな影響を与えた彼の高校生活を細かく振り返ってもらった。そこでは今まで語ってこなかった“ヤンチャエピソード”も。取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班撮影/小木寛一