靴は捨てて買い替えた方が安い …でも本当のお気に入りは自分で修理をしよう

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「ああ、ちょっとはみ出しちゃったけど、シンナーで落とせばいいか」
真夏の炎天下の日曜日、いわゆるDIYでこの日、何をしていたかというとお気に入りの靴の修繕というか、色の塗替えです。
歩く時の癖でわたしの場合は、右足が靴の左足を削るように歩くので革靴の横の部分が通常よりも早く痛みます。それともう一か所、かかとの部分もなぜかよく削れる。こうして2年ぐらい履いていると靴全体はまだ大丈夫なのに部分的に革が痛んでくるのです。
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一般的に革靴の革は表面が染めてあるので、そこが擦れて削れると内側の白い層がむき出しになってきます。だから古い革靴はちょっとみっともないのです。
さて、先に経済学の話をします。現代社会は消費社会といわれますが、その象徴ともいえる現象として修理代よりも新品の靴の方が安いという事実があります。
最新の工場で大量生産と分業を駆使して靴を作るコストのほうが、修理屋さんがひとつひとつ綻びた箇所をチェックしながら手作業で修理するよりもコストが圧倒的に安い。だから普通は靴がボロになってきたら買い替えるのがコスパ的には最適解です。
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でもお気に入りの靴の場合はどうでしょう。しかもそれがもう廃盤でネットで探しても手に入らない靴だったとしたら?
私は、新しい靴を履き始めて1~2か月目のタイミングでめちゃくちゃ気に入った場合、必ずネット通販で同じものを買い増しするようにしています。デザインも履き心地もどちらもフィットする靴ってなかなか見つからないですからね。
そして今回の話はその後、一足目がダメになり、次いで二足目がぼろくなってきたときの話です。

私のお気に入りの靴はヨーロッパのMBTという靴です。この靴、ソールの部分が円弧を描いたような形をしたちょっとおかしなデザインです。これ実はわざと靴底を不安定にすることで、履きながら足腰を鍛えることができる特別な靴なのです。
もう20年以上、MBTを履いてきたのですが、MBTは最後の最後で寿命がきて履けなくなるとき、靴底の円形部分がぼろぼろになって機能しなくなります。そうなるまでは約3~4年ほど。
それで冒頭の話なのですが、ひとつめの靴の寿命が来て、ふたつめの同じ靴を一年半前におろしたのですが、この一年半で革靴の表面が削れてしまいました。買い替えようにもこの靴はもう廃盤です。
そこで今回は靴を修理することにします。
具体的にやることは革靴の表面を塗り直すのです。靴の修理に使える手軽な塗料は2種類あって、ビジネスでよく使う光沢のある黒や濃茶の革靴ならコロンブスの「アドカラーチューブ」を使って削れた部分を上から色を塗ります。
それで今回のケースですが、カジュアルな革靴の場合は「染めQ」のスプレーで全面塗装するという方法があるのです。今回はせっかくなので色は元のグレーから思い切ってベージュに変身させます。
色を塗り替えたい靴の革以外の部分をできるだけ丁寧にマスキングテープで覆って、ベランダの床に新聞紙を多めに敷いて、風がない日に一気にスプレーで色を塗ります。
あくまで経験則ですがこの作業、真夏の休日、起床直後のまだ気温が上がり始める前に行うといいと思います。スプレーした後の渇きが早く、その日のうちに次の工程に進めるからです。
夕方、スプレーの塗料が完全に定着したころを見計らってマスキングテープを外します。素人なのでスプレーをかけるときに塗料を吸い込んだマスキングテープが浮いてしまって、ところどころ白い部分にも塗料がつくのですが、そこはシンナーを含んだ布切れでこすって落とします。
こうして新しい靴紐を通せばできあがり。見た目がぼろくなってしまった古靴も新品っぽく蘇ります。ただ、「染めQ」のスプレーだけで3,000円しますし、休日一日分の労賃がかかっていますよね。
「お気に入りの靴は修繕するよりも、一足余計に買っておいたほうが安い」
というのが今回の記事の本当のレッスンです。ぜひ覚えてね。

Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「廃盤になった靴」についてお届けしました。