8発プロペラの超異形旅客機、まさかの設計変更!…なぜ? でもやっぱり“フツーじゃない”細部設計

発表当初、片翼に4基づつ、計8基のプロペラ推進装置を持つユニークな姿で業界の度肝を抜いた新型旅客機案「メイブ01」が設計変更。推進装置の数が半分になりましたが、やはり“異色のデザイン”が細かいところに存在しています。
オランダのスタートアップ企業メイブ・アエロスペースが2029年初飛行にむけ開発を進めている44人乗りの新型電動旅客機「メイブ01(MAEVE 01)」は発表当初、“異形”とも呼べるような機体デザインを特徴としていました。これが直近になり大きく設計変更をしています。しかし、その新設計案でも“異色のデザイン”が細かいところに存在しています。
8発プロペラの超異形旅客機、まさかの設計変更!…なぜ? でも…の画像はこちら >> 「メイブ01」の新デザイン(画像:メイブ・アエロスペース)。
「メイブ01」は、2022年の発表当初、片翼に4基づつ、計8基のプロペラ推進装置を持つユニークな姿をしていました。「乗りものニュース」では2022年6月、同社はこの8基プロペラの効果について、次のように報じています。
「このレイアウトとしたのは、いわゆる冗長性や安全性を確保するためとのことです。現代のプロペラ旅客機で一般的なジェット燃料を用いて動かすエンジン『ターボプロップ』と比べると、『メイブ01』の電動プロペラは1基あたりのユニットコストが非常に低いことから、そのぶん多くのプロペラを搭載できるとのこと。また、稼働部品も少なく抑えられていることで、メンテナンスコストや騒音が最小限に抑えられるともしており、騒音は従来比で40%程度削減できるとしています」
しかし、2023年6月のパリ航空ショーで新たに発表されたデザインは、4基のプロペラを持ち、ターボプロップ・エンジンのコミューター機と同じような姿に変わっていました。
プロペラが半減した理由は明確にされていません。しかし、メイブ社は2022年11月、独シーメンスの設計ソフトを導入し、2023年4月に新しいCTO(最高技術責任者)にマーティン・ニュッセラー氏が就任しています。
ニュッセラー氏は、エアバスで電動航空機の開発に携わっていたと発表されており、大手電機電子企業であるシーメンスのノウハウも加えた結果、プロペラは半減したと推測されます。
こうして一見したところ、「メイブ1」は“異形の旅客機”とはいえなくなってしまった――かと思いきや、そうではありません。そのユニークな設計はプロペラ推進装置、それ自体にあります。
「メイブ1」のプロペラ推進装置には、ブレードと呼ばれる羽根がついています。ユニークなのは、この枚数です。
発表当初のイメージ図などでは、推進装置1基あたり、6枚の羽が描かれていました。しかし、現在の4基タイプの「メイブ1」の設計案では、1基あたり7枚の羽が備わる姿が描かれています。また、インターネット上では、8基デザインのときにも、7枚の羽根が付いたイメージ図も見ることができます。
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「メイブ01」の新デザイン。7枚の羽がついたプロペラが確認できる(画像:メイブ・アエロスペース)。
4基デザインとなった「メイブ1」は、機体全体も、胴体は直径3.6mの円筒形から、幅2.8m、高さ3.2mの楕円形へと変更され、最大離陸重量は25.9tに減ったとされています。しかしペイロード(機体の運搬能力)は約5t、プロペラを動かす出力は1.2MWと、こちらは変更ないとのことですから、機体のスリム化が図られたと考えられます。
一方、プロペラの羽が7枚になった理由は推測も含めて明らかになっていません。羽根は、プロペラ1基当たりが吸収する馬力が大きくなると枚数を増やすのが一般的とされています。
ただ、過去のプロペラ機は、2、3、4、5枚や早期警戒機E-2Dのように8枚と、360度を等分し遠心力を不均衡にしない枚数が使われてきたため、7枚は珍しいといえるでしょう。7枚羽根を採用したのは電動ゆえの理由があるのか、これからそれが明らかになることを期待したいところです。
今回の設計変更でプロペラ自体が4基になったことにより、航空会社は「メイブ01」を受け入れやすくなったとも考えられるでしょう。環境問題の高まりもあり各社が「二酸化炭素を出さない航空機」の開発を進めるなか、今後「メイブ01」がどのように開発が進んでいくかが注目されます。