イオンスタイルに「エバラ焼肉のたれ」がないのは何故か? その…の画像はこちら >>
「あれ、なんで置いてないんだろう?」
うちの近所にある食品スーパー『イオンスタイル』での出来事です。食肉売り場で鹿児島牛のなかなかよい霜降り肉に半額シールが貼られていたのを即座にゲットした直後の話です。焼肉用の肉が手に入ったので、ついでに焼肉のたれも買って帰ろうと思ったのです。
焼肉といえばわたしの家ではもう50年以上『エバラ焼肉のたれ』と決まっています。いや、もちろんたまには浮気をします。叙々苑のたれとか、モランボンとか、いろいろと試すのですが、最後はエバラ焼肉のたれに戻ってきます。
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味の記憶というものがあって、小学生の頃に大好きだった食べ物は60歳になっても大好きなのですよ、人間というものは。エバラにはワンランク上の『黄金の味』というたれも存在するのですが、それよりも子どもの頃に食べた『エバラ焼肉のたれ』が一番おいしい。
それで冒頭のシーンです。置いてないんです。エバラ焼肉のたれが最大手といっていいイオンスタイルの食品売り場に! どうしたことでしょうか?
ちなみにエバラの焼肉のたれは業界シェア47%と圧倒的に売れています。若い方はご存知ないかもしれませんが、エバラが焼肉のたれを売り出す以前には「家庭用の焼肉のたれ」というものが存在していなかったんですね。
それまでは焼肉が食べたいときは町の焼肉屋さんに出かけなければ食べられなかった。それが1968年に初めて、家庭用が出現したのです。
それ以降、焼肉のたれといえばエバラというわけで、どのスーパーに行っても必ず置いてある定番商品になったのです。それがなぜか売っていない。この不思議がわかりますでしょうか?
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キユーピーマヨネーズ、ボンカレーゴールド、カップヌードル、キッコーマン醤油が置いていないスーパーなど本来はありえません。一番売れる商品なのにそれを置かない理由がないのです。それと同じでエバラ焼肉のたれが置いていないお店は経済の専門家としてみると不思議以外の何ものでもありません。
そういいながら自分でマッチポンプ的に解決篇をお話ししたいと思います。謎はすべて解けた! …のです。
イオンスタイルの焼肉のたれ売り場の中で、圧倒的に庶民的な価格で売られているのがプライベートブランド(PB)のトップバリュの焼肉のたれです。エバラ焼肉のたれと同じくらいの価格帯で内容量は350gとエバラよりも50g多くてお得です。そのトップバリュのパッケージをよくみると「製造元:エバラ食品工業」と書いてあるではないですか。
そうなんです。以前はスーパーのプライベートブランドといえば中小の食品メーカーがトップ企業の商品に味を似せて作るものだったのですけれども、最近では最大手のメーカーが商品提供するケースが増えています。
経済の観点からその理由を説明すると「他のメーカーに売上を取られるぐらいなら、自分の商品をプライベートブランドにしたほうがいい」ということです。セブンイレブンのセブンプレミアムでは昔よく食べたメーカーのお菓子がそのままセブンプレミアムの商品として売られていますよね。あの考え方です。
ちなみにトップバリュのカップ麺はしょう油味、カレー味、シーフード味ともに日清のカップヌードルに味が非常によく似ています。パッケージを見ると製造元は「明星食品」となっていますが、実は明星はいま、日清食品の子会社なんですね。おいしいわけです。
Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「なぜか一番売れる定番商品を置いていないスーパーの話」についてお届けしました。