マッハ5を展示! 世界の警察グッズを蒐集? 那須クラシックカー博物館の魅力

マニアックすぎない実用的な名車を数多く展示している那須クラシックカー博物館だが、楽しみ方は古いクルマの鑑賞だけではない。映画『スピードレーサー』のキャンペーンで作られた「マッハ5」の展示や、世界中から集めた「警察グッズ」のコレクションなど見どころは豊富だ。

○国内で2台しかない貴重な劇中車「マッハ5」を発見!

避暑地として知られる那須高原に「那須クラシックカー博物館」はある。航空機の格納庫を思わせる青色の2階建てドーム「IRON DOME」が目印だ。オーストラリアに住むオーナーは、マニアックなクルマではなく、日常的に使われていた昔のクルマを残したいとの思いで同館を設立した。

ここでは当然、たくさんのクラシックカーを見て楽しむことができるが、楽しみ方はそれだけではないとオーナーは話す。そこで今回は、映画の劇中車の展示やイラスト展など、那須クラシックカー博物館のクルマだけでは終わらない楽しみ方を紹介しよう。

まず注目したいのが、日本国内で一般公開されているのは那須クラシックカー博物館だけという「マッハ5」の展示だ。

マッハ5は2008年公開の映画『スピードレーサー』のキャンペーンで製作されたデモンストレーションカー。タイヤメーカー「横浜ゴム」と映画配給会社「ワーナー・ブラザース」が手掛けたマッハ5は、2008年の映画上映に合わせて日本全国を駆け回った。世界でわずか10台、日本では横浜ゴムとワーナー・ブラザースで2台のみが保管されているという。そのうち、横浜ゴムに保管されていた1台が那須クラシックカー博物館で展示されているのだ。

マッハ5はデモカーではあるものの、実際に撮影で使用されたクルマと全く同じ車両として製作されている。間近で見ると、その大きさとボディの輝きに圧倒されるだろう。映画を見ていない人も一度は見ておくべき1台だ。

○100時間以上かけて描かれる“実車よりも美しいイラスト”

那須クラシックカー博物館の2階では、Carイラストレーター林部研一氏の原画展が開催されている。林部氏は、1970年代のスーパーカーブームに感銘を受けクルマの絵を描き始めた。描く手法としてはデジタル画がメインで、線画からわかるようにグラデーションを使わず面で立体を表現。一枚の絵を描くのに費やす時間は100時間以上といわれ、「実車よりも美しく、写真よりきれいに」を基本理念としている。自動車雑誌、メーカー販促用イラスト、個人向けオーダーイラストなども多く手掛けている。展示コーナーでは、まるで実車を写した写真のような繊細なフェラーリやランボルギーニの原画を楽しめる。

また、クルマと水と墨をコラボさせた独自の作風でメルセデスを中心とした作画を手掛ける黒川芳樹氏の展示コーナーもある。モノクロのクラシックベンツからにじみ出る独特の風合いと世界観が楽しめるイラストだ。さらに、モーターレーシング・アートに取り組んでいるグラフィックデザイナー中津達氏の作品も展示。迫力あるタッチでF1などモータースポーツの躍動感あるシーンを描いている。

展示コーナーで気になった原画は、実際にその場で購入可能だ。また1階のショップでは、額縁に収められた実際の原画と同じ大きさのイラストやポストカードも買える。イラストをモチーフにしたバッグなども販売されているため、イラストを鑑賞したあとはショップにも立ち寄ってみてほしい。
○世界的に見ても珍しい「ポリスハット」を多数展示

那須クラシックカー博物館の展示内容の中でも、特にユニークなのが「世界のポリスハット展」だ。同時に「ポリスバッジ・ワッペン展」と「パトカーナンバープレート展」も開催されており見ごたえたっぷり。世界各国の警察官の帽子やバッジ、ワッペン、パトカーのナンバープレートなどを展示している。

1階ショップの併設展示スペースでは、警察官の帽子にこだわってコレクションしたという世界のポリスハットを展示。時代や国によって異なるポリスハットのディープな世界を堪能できる。世界的に見ても、ここまで多くの種類のポリスハットを展示している博物館はかなり少ないという。

ドラマや映画で一度は見たことがあるかもしれない「NYPD」(アメリカ ニューヨークの警察署)で実際に使われていた腕用ワッペンや胸バッジなどは2階に展示。普段あまり見かけることがないカンボジアやトルコの警察官のバッジやワッペンも興味深い。さらに、実際に使われていたパトカーの写真とともに、ナンバープレートが展示されている。パトカーに興味がなくても、壁一面にナンバープレートが並ぶそのさまは壮観。一度は見てほしい。

オーナーの渡辺清市氏は、夏に那須クラシックカー博物館を訪れるメリットを次のように話す。

「連日猛暑が続いていますが、那須クラシックカー博物館は屋内施設です。天候に左右されることなく楽しめると思います。涼しいIRON DOMEでクラシックカーを満喫してみてはいかがでしょうか。」

この夏、暑さを避けて楽しみたい人にはおすすめのレジャー施設だ。

室井大和 むろいやまと 1982年栃木県生まれ。陸上自衛隊退官後に出版社の記者、編集者を務める。クルマ好きが高じて指定自動車教習所指導員として約10年間、クルマとバイクの実技指導を経験。その後、ライターとして独立。自動車メーカーのテキスト監修、バイクメーカーのSNS運用などを手掛ける。 この著者の記事一覧はこちら