ローソンで人気の「チョコバッキー」、メーカー直販よりも値段が高い“3つの理由”

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「ええっ!チョコバッキー、シャトレーゼで買うよりも高いんだ」
これはローソンのレジで同行者がふともらした正直な感想です。でもわたしが思うに我々はローソンでチョコバッキーが買えることに感謝すべきで、些細な値段の違いを残念がる必要はありません。少なくとも経済学的な常識としては。
お菓子屋メーカーのシャトレーゼはもともとロードサイドの直営店がメインです。その人気商品がアイスクリームバー『チョコバッキー』で、直営店では1本64円(税込、以下同じ)、お得な6本入りは302円です。
このチョコバッキーの6本入りが最近、コンビニのローソンでも買えるようになりました。
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近所で買えるのは嬉しいのですが、価格が363円とちと高い。直営店よりも1本あたり10円高い計算です。
実はこの価格差、当たり前の話なのですが、そもそもの原点に立ち戻って解説してみましょう。シャトレーゼは前述のように一般のお菓子メーカーとは違い、直販のビジネスモデルが特徴なのですが、これには歴史的な理由がありました。後発メーカーだった上に工場が火災で全焼して卸に納品できなくなったことから、それ以降、それまでの販路がなくなってしまったのです。
それでシャトレーゼの社長によれば「山梨県の田んぼしかないような場所」にアイスクリームの冷凍ケースを10台持ち込んで直営販売を始めました。直営販売なので卸店への卸価格と同じ値段で小売を始めたそうです。具体的には100円のアイスを66円で売った。これがシャトレーゼの安くて美味しいお菓子の歴史の始まりです。
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この「直販で安売りする」という発想は爆発的にヒットして、誰も来ないと思っていた住宅地から離れた場所にどんどん車が押し寄せて、アイスは片っ端から売れていく。それで社長は国道16号線沿いなどのロードサイドに次々と直営店舗を開業してビジネスを広げていきました。
まあこんなわけでシャトレーゼのお菓子は全国的な人気になりました。ただこのような経緯から、お店は郊外に多くて、都心部ではあまり便利な場所にはありません。東京都心のわたしの近所だと中野駅まで電車で行くか、それとも新宿三丁目駅から歩いて10分以上かかるスーパーの中のお店しかありませんでした。
ところがコンビニのローソンがそのシャトレーゼ人気に目をつけ、人気のチョコバッキーを売り始めたのです。それが「直営店よりも10円高い理由は何か?」という今回の記事のポイントです。
この話、経済的に当たり前のポイントが2つと、ちょっと意外なポイントが1つあります。
当たり前なことの1つ目は「直販と間接流通では間に入るコストが違う」ということ。ローソンのような小売チェーンに商品を卸せば途中に入る人たちのコストが余計にかかりますから、どうしても価格は高くなる。もちろんその分、全国津々浦々のコンビニに届けられるのがメリットです。
2つ目にそもそもコンビニは便利な分、価格が高い業態です。わたしたちは便利だからコンビニをいつも使っているのですが、コカ・コーラにしてもカルビーのポテトチップスにしても一つ一つ比べてみればコンビニの商品はスーパーよりも高いですよね。それと同じです。
でもここでちょっと意外な3つ目のポイントがあります。
ローソンのような大手の小売流通で商品を販売してもらおうとしたら普通なら買い叩かれるものなのです。でもシャトレーゼの商品は買い叩かれていない。その理由はローソンが「チョコバッキーの集客力に期待をしているから」です。
ローソンでは最近、集客の目玉として無印良品の商品を意欲的に販売しています。集客力のある商品を並べることで他のコンビニと差をつけたい。それと同じで、全国的に人気なチョコバッキーを扱うことで他のコンビニの客にローソンに来て欲しい。
そんなことを考えると、経済的にはプレミアム価格で販売してもローソンにとっては「これはいい取引」になるのです。

Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「『チョコバッキー』、コンビニだとなぜ高いのか?」をテーマにお届けしました。