旅客機「重量級の団体が固まって乗ってもバランスが崩れない」のはなぜ? 小型機だとある“体重測ります”

旅客機には、フライトごとに異なる重さの航空貨物が搭載されるほか、客席のさまざまな場所に乗客が乗り込みます。これにより、機体のバランスが崩れないのはなぜでしょうか。
旅客機には、フライトごとに異なる重さの航空貨物が搭載されるほか、客席のさまざまな場所に、体重が軽い人からヘビー級の人まで、さまざまな乗客が乗り込みます。これにより、機体のバランスが崩れることはないのでしょうか。結論からいうと、「そうならないために都度、機体のバランスを計算したうえ、飛んでいる」となります。
旅客機「重量級の団体が固まって乗ってもバランスが崩れない」の…の画像はこちら >>JALの旅客機(乗りものニュース編集部撮影)。
たとえば、JAL(日本航空)が発行する機内誌「スカイワード」2023年4月号によると、同グループのJ-AIRのエンブラエル170(全長約30m)の場合、重心位置の幅を主翼付近の約60cm以内に収めなくてはならないのだとか。また、そのなかでも重心位置によって、フライトの操縦性や安定性が変わるため、フライト前に翼面の位置の設定を都度行うなどしています。
乗客については、1人あたりの「標準乗客重量」が事前に定められており、それをもとにフライト前に算出しています。航空局発行の「航空機の運航における乗客等の標準重量の設定について」によると、国内線の標準的なケースの場合、大人一人あたりの標準乗客重量は夏季で68kg、冬季で69kgで算出されるとのこと。
国際線では方面ごとに異なり、たとえば大人一人の標準乗客重量は、太平洋リゾート路線では夏季で64kg、冬季で66kg、欧米線では夏季で70kg、冬季で73kgとなります。
なお、たとえば相撲取りなど、標準乗客重量を適用出来ないような団体乗客については、実測、もしくは体重の申告が必要です。なお、これは、乗客座席数が30席未満の機体でフライトする場合は、個人乗客でもこのケースが適用されるとのことです。
航空会社が出発前、定められた座席に着席するよう呼びかけているのも、この重量バランスが崩れないようにするためというのも一因です。また、一部航空会社ではベルトサインが外れたあと席移動ができるケースもありますが、特段の事情がない限りは、その旅客が席を移れる範囲も、数ブロックに分けられた客席の区画「コンパートメント」のなかでのみ認められている場合が多いです。
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ANAの機内。このときは新型コロナ感染拡大下であったため、空席が多かった時期(乗りものニュース編集部撮影)。
また、航空会社では、この重心のコントロールを行うための専門スタッフを配置し、フライトごとに調整を行っていることが一般的です。
この「ロードコントロール」を行うスタッフは、フライト前に客室はもちろんのこと、搭載される航空貨物も含めた重量とバランスをコントロールし、最終的に出たデータをパイロットに送ることで、飛行中のバランス崩れが起こらないようにしています。この重量・重心計算はフライト前に必ずしなければならない項目のひとつで、過去にはこのシステムの不具合で、欠航が発生したケースも存在します。
こういった取り組みのため、たとえば客席の一区画にヘビー級のアスリートが座っていたとしても、旅客機の運航の安全性は確保されています。