軽油って“軽い”の? なくならぬ「軽自動車に軽油」勘違い ガソリンと「混ぜるとヤバイ」これだけの理由

ガソリンで動く自動車に、間違えて軽油を入れてしまったというトラブルが相次いでいます。なぜ燃料の種類を間違えるとダメなのでしょうか。
「軽自動車だから軽油を入れればいいと思った」そんな笑えないトラブルが、相変わらず多発しています。
軽油って“軽い”の? なくならぬ「軽自動車に軽油」勘違い ガ…の画像はこちら >>ガソリンスタンドのイメージ(画像:写真AC)。
JAF(日本自動車連盟)の調べでも、その入れ間違いで出動に至ったケースが2022年10月だけでも全国で57件あったとのこと。同月の「燃料の入れ間違い」で出動した案件105件のうち57件ですから、いかに頻発するトラブルかがわかるでしょう。
「軽自動車は軽油」と思い込んでいたドライバーが少なくないことは、過去の調査からでも浮かびあがっていますが、この件数の多さ。もしかしたら「いくら違うからって、ちょっと間違えたくらいで車が壊れることはないでしょう」「軽油のほうが安かったので……」などと考えるドライバーもいるのかもしれません。
では、なぜガソリンと軽油は入れ間違えたらダメなのでしょうか。そもそも何が違うのでしょうか。
●何のクルマがガソリンで、何のクルマが軽油なのか
一般的にガソリンエンジンを積んでいるクルマがガソリンで、ディーゼルエンジンを積んでいる車が軽油です。「トラックだからディーゼル」「普通車だからガソリン」ということは全くなく、車種によって異なるため、注意が必要です。給油タンクの周辺にどちらの燃料を入れたらいいのか書いてある場合もありますが、レンタカーなどで普段乗らないようなクルマを借りる場合、うっかり勘違いするケースが少なくないことも分かっています。
●ガソリンと軽油は何が違う?
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンは、基本的な仕組みは同じで、蒸発させ圧縮した燃料を爆発させ、その威力でシリンダーを動かし、回転力に変えて車輪を回すものです。
しかし、燃料を爆発させる方法が異なります。ガソリンエンジンは火花で点火して燃やしますが、ディーゼルエンジンは蒸発燃料を圧縮時の加熱だけで「自然発火」させるものです。
そのため、ガソリンは比較的低い温度で燃えますが、ディーゼル燃料(軽油)は高い圧力下による高い温度でやっと燃えます。同じ油類といっても、その化学組成と性質は全く違うのです。
原油からの精製段階も異なり、それが1リットルあたりの単価の違いを生む要因のひとつです。
「軽油」の名は、重油を精製して軽くなったものだから、という程度の語源といいます。英語では「ディーゼル燃料」という表現が一般的で、公益社団法人 石油学会は「『軽油』は漢字として不適当であり,中油あたりが適当だったのかもしれない」とも述べています。
●入れ間違えたら、具体的に何のトラブルが起きるの?
ガソリン車へディーゼル燃料(軽油)を入れると、ディーゼルエンジンのように圧縮されないので、うまく点火されず、くすぶったようになります。排気ガスは黒く、モクモクしたものになります。
そのうち、火花を出す「スパークプラグ」というパーツが軽油にまみれていき、もう点火すらまともにできなくなってしまいます。
いっぽうディーゼル車へガソリンを入れても、やはり発火特性の違いからうまく燃えず、噴射ノズルや燃料ポンプへダメージがかかることとなります。排気ガスは白い煙になって出てきます。
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もし入れ間違えたことに気づいた場合、「燃やそうとしなければ」エンジン内へのダメージはありません。ガソリンスタンドや工場へ移送して、タンク内の燃料を抜き取るなどの処置を行ってもらいます。
なお、日本自動車販売協会連合会のデータによると、2022年に国内で販売された乗用車のうち、ガソリン車は42%に対し、ディーゼル車はわずか5.6%。ディーゼル車はマツダ・三菱の2社製がほとんどです。ともあれ、普段運転しないクルマに乗る場合は、その車種のエンジンがどちらのタイプなのか、きちんと確認しておくことが重要です。
本文を一部修正しました(8月20日9時50分)