コミケで話題のオモシロ同人誌 絶滅危惧種の「宴会芸」まとめた一冊が圧巻だった…

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東京ビッグサイトにて開催された国内最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット102」(コミケ)。会場にはどこかマニアックで奇抜ながら魅力にあふれた同人誌が数多く並んでいる。今回は、いまやほとんど目にしなくなった「宴会芸」を研究した同人誌を紹介する。

今回2回目のサークル出展となる「日本宴会芸学会」が頒布していた同人誌『party people』は、数百年も前のものから最近の芸までを徹底的に研究し、実際に再現したという大作だ。
表紙には、頭と両手、そして片足に扇子を挟んだ芸を披露する男性モデル。真面目な表情とコミカルなポージングの対比がじつに滑稽である。本誌ページをめくるとその技は「松づくし」と紹介されていた。出典は1911年に発刊された書籍とのことで、きっと当時の人たちは盃を片手にコミカルな芸を見て盛り上がったのだろう。
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そんな具合に、「踊る大統領」(写真)「自虐のブタおに」「ヘリコプター」「悪玉踊り」など技名を紹介する形で、全27種が写真で掲載されている。中には葛飾北斎が描いた200年前の書物を参考にしているものもあり、大変興味深い。
そんな一冊を手掛けた同学会・会長である御手洗太さんにコミケでの反応について話を聞いた。
「コロナ禍による宴会控えの影響もあり、宴会芸は衰退の一途を辿っていますが、 コミケでは老若男女さまざまな人に手に取っていただき、新しい可能性を感じました。 宴会芸とは、古来、日本人がそこそこの熱量で取り組んできたにも関わらず、 誰一人として体系だって研究したことのなかった文化です。 そこを『あえて真面目に研究してみる』という当学会の方針を面白がっていただいたように思います。 ありがたいことです」(御手洗さん)。

宴会芸はもはや絶滅危惧種といっても過言ではないだろう。しかし、御手洗さんはそんな宴会芸こそ、当時の文化や人々の趣向を表す貴重な記録だとみている。
「当学会では文献を読み解くことで、『絶滅危惧』宴会芸を収集しています。主に国会図書館に収蔵されている文献が研究対象の基本です。時に 『宴会芸は時代を映す鏡』とも言われます。 明治宴会芸には情緒と風情があり。 70年代宴会芸にはアヴァンギャルド精神があり。 バブル期宴会芸は過激に下品なのです」(御手洗さん)。

御手洗さんたちは「日本宴会芸学会」という学術大会(リアルイベント)を定期的に開催し、文化の継承に努めている。2023年は108もの絶滅危惧宴会芸を連続上演したというからすごい。
「時代を超えて受け継がれてきた宴会芸には、現代でも通用する力があると感じています。 ファッションの世界で『90sレトロコーデがトレンド』などと言われるように、 『今年の忘年会は70年代アヴァンギャルド宴会芸で決まり!』というような時代が来たら、こんなに嬉しいことはありません」 (御手洗さん)。
宴会芸を愛し、広めようとする人たちの熱い思いがこの一冊には込められていた。同学会公式インスタグラムには300もの技が紹介されているので、気になった方はぜひこちらも見て欲しい。
キモカメコ佐藤:1982年東京生まれ。『sirabee』編集部取材担当デスク。
中学1年で物理部に入部して以降秋葉原に通い、大学卒業後は出版社経て2012年より秋葉原の情報マガジン『ラジ館』(後に『1UP』へ名称変更)編集記者。秋葉原の100店舗以上を取材し、『ねとらぼ』経て現職。コスプレ、メイドといったオタクジャンル、アキバカルチャーを精力的に取材中。