30代が新NISAを始めたら将来いくらになる? 賢い活用方法と注意点を解説

結婚や出産、住宅購入など、人生のイベントが重なる30代。子どもや自分たちの将来を考え、教育資金や老後資金の準備も気になる頃です。一方、日常生活を振り返ると、「相次ぐ値上げで貯金が難しい」という人も多いでしょう。

そんな30代が資産形成に活用したいのが、2024年から始まる「新NISA」です。では、30代の方は新NISAを使うとどのようなメリットがあり、どのように運用するのがいいのでしょうか。ここでは、30代で新NISAを始めた場合の資産額のシミュレーションとともに、30代の新NISA活用術を解説します。

■新NISAの仕組みとは

NISAとは、NISA口座内で、毎年一定金額の範囲内で株式や投資信託を購入すると、そこから得られる利益が非課税になるという制度です。NISAには、いわゆる「一般NISA」のほか、「つみたてNISA」「ジュニアNISA」の3つの種類があります。

それぞれのNISAが年間に購入できる金額と非課税で保有できる期間は、以下の通りです。

・一般NISA…株式や投資信託等を年間120万円まで、最大5年間

・つみたてNISA…一定の投資信託を年間40万円まで、最大20年間

・ジュニアNISA…株式や投資信託等を年間80万円まで、最大5年間

※新規口座開設は2023年まで

そして、2024年1月からは現行のNISAのさまざまな点が改良された「新NISA」がスタート。新NISAには、主に5つの特徴があります。

1つめは、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」が新設されること。「つみたて投資枠」は現行のつみたてNISAに、「成長投資枠」は現行の一般NISAにあたります。現行のつみたてNISAと一般NISAは併用不可ですが、「つみたて投資枠」と「成長投資枠」は併用可能ですので、投資できる商品の幅は大きく広がります。

2つめは、年間投資枠が拡大することです。つみたて投資枠は年間120万円まで、成長投資枠は年間240万円まで非課税で投資でき、これらを合計すると、年間投資枠は360万円になります。

3つめは、1,800万円の「生涯投資上限額」が設定され、生涯で投資できる金額が大幅に増える点です。さらに、NISA口座内で購入した金融商品を途中で売却すると、その分の枠が復活して再利用が可能になります。

4つめは、制度が恒久化し、自分の好きなタイミングで始められるようになること。そして5つめは、非課税保有期間が無期限化し、これまでのNISAで必要だった課税口座への移行や「ロールオーバー」のような煩雑な手続きが必要なくなる点です。

なお、現行のNISAと新NISAは併用して使うことができます。
■30代が新NISAを運用するメリットとおすすめの活用方法

日本証券業協会によると、2023年3月末時点の年代別のNISA(一般・つみたて)口座数は、30代では256万口座と他のどの年代よりも高くなっています。全ての年代のうち30代で最も活用されているNISAですが、では、30代が新NISAを運用するとどのようなメリットがあるのでしょうか。

30代で新NISAを始めるメリットは、20代ほどではないものの、長い時間をかけて投資ができる点でしょう。

たとえば、新NISAで積立投資を行い、毎月5万円を積み立てていく場合、非課税投資枠を使い切るまでには30年という期間があります(5万円×12ヶ月×30年=1,800万円)。毎月の積立額が4万円の場合は、非課税投資枠を使い切るまでに37.5年かかります(4万円×12ヶ月×37.5年=1,800万円)。

つまり、今から老後に向けた資産形成を始めたとして、30~40年という年数をかけられるのです。また、投資できる期間が長ければ、非課税枠だけでなくその再利用も充分活用できるでしょう。

「投資に興味はあったけれど、20代のうちは実際に運用する余裕がなかった」という人も多いかもしれません。しかし、30代からでも遅くはなく、時間の長さを味方につけて有利に投資ができます。

30代の方が新NISAを始める場合、20代と活用方法は大きく変わらず、まずはつみたて投資枠を使い、世界各国の株式に分散投資する投資信託を積立購入するのがいいでしょう。

また、投資信託はつみたて投資枠だけでなく、成長投資枠でも買うことができます。つみたて投資枠と成長投資枠では購入できる商品が異なりますので、両方の枠を組み合わせ、運用商品の幅を広げることもおすすめです。
■30代が新NISAを使うときの注意点

30代になると、20代の時よりも収入が上がり、投資用の余裕資金ができる人も多いでしょう。一方、子どもが生まれて教育費がかさむなど、支出が増える時期でもあります。新NISAを始めたくても、「毎月の収入からはさほど資金を捻出できそうにない」と悩むかもしれません。

しかし、毎月の収入のみから無理して投資資金を出す必要はありません。たとえば、普通預金に長い間寝かせているお金はないでしょうか。低金利が続く中、銀行に預けているだけではお金を増やすことはできません。そこで、すぐに使う予定のない預金の一部を新NISAの積立資金に充ててみてはいかがでしょうか。

また、児童手当を積立に充てるのもおすすめです。中学校卒業までの児童を養育する人に支給される児童手当は、使わずに貯めていった場合、総額約200万円にもなります。児童手当は、3歳未満は一律月額1万5,000円、3歳以上小学校卒業前までは月額1万円(第3子以降は月額1万5,000円)、中学生は一律月額1万円が支給され、毎月の積立に利用することができます。

「児童手当は使わず、大学進学資金に」と考え、学資保険の保険料に充てたり、積立定期預金で準備したりしている家庭は多いでしょう。一方、大学進学までの時間を利用し、新NISAで子どもが小さいうちからコツコツ投資していくのも選択肢の一つになります。
■30代から新NISAを始めるといくらになる?

では、30代の方が新NISAで積立を始めると、将来どのくらいの資産額になるのでしょうか。

ここでは、35歳から65歳までの30年間、年利3%で(1)毎月2万5,000円積み立てた場合、(2)毎月5万円積み立てた場合の2パターンのシミュレーション結果をご紹介します。

(1)35歳から65歳までの30年間、年利3%で毎月2万5,000円積み立てた場合

30年間で積み立てた投資元本は「2万5,000円×12ヶ月×30年間」で合計900万円、運用益は546万7,826円、30年後の積立資産額は1,446万7,826円という結果になりました。毎月の収入や預金から積立資金を捻出してコツコツ運用していくと、ただお金を寝かせているだけでは得られないような成果を手にできる可能性があるのです。

30代から新NISAを始めても充分、将来のためにまとまった金額を用意することができます。
(2)35歳から65歳までの30年間、年利3%で毎月5万円積み立てた場合

30年間で積み立てた投資元本は「5万円×12ヶ月×30年間」で合計1,800万円、運用益は1,093万5,652円、30年後の積立資産額は2,893万5,652円という結果です。仮にシミュレーション通りにいけば、30年という時間をかけ、1,000万円以上の運用益が得られることになります。

もちろん、毎月5万円を積み立てるのは簡単なことではありませんので、家計に負担のかからない金額で始めてみましょう。積立額は途中で変更できますので、生活費を見直して支出が減ったり、収入が上がって余裕が出たりしたら増額を検討してみてください。

なお、ご紹介した金額はあくまでもシミュレーションであり、実際の運用では、必ずしも同じ結果が得られるわけではない点にご注意ください。
■新NISAを活用して資産形成を始めよう

30代は新しい家族ができるなどし、資産形成が気になり出す人が多い年代です。お得に運用できる新NISAを活用し、ぜひ投資を始めてみましょう。30代はまだ老後まで長い期間がありますが、少しでも有利に投資ができるよう早めのスタートを意識したいものです。

武藤貴子 ファイナンシャル・プランナー(AFP)、ネット起業コンサルタント 会社員時代、お金の知識の必要性を感じ、AFP(日本FP協会認定)資格を取得。二足のわらじでファイナンシャル・プランナーとしてセミナーやマネーコラムの執筆を展開。独立後はネット起業のコンサルティングを行うとともに、執筆や個人マネー相談を中心に活動中 この著者の記事一覧はこちら