糖質・プリン体70%オフの「サッポロ生ビール ナナマル」が登場 – 狙いは?

サッポロビールは8月23日、事業戦略説明会を開催。2023年1-7月の事業について振り返るとともに、下期のマーケティング方針についても説明した。この秋よりプリン体オフ・糖質オフの「サッポロ生ビール ナナマル」、また料理を引き立てるRTD「サッポロ クラフトスパイスソーダ」の2つの新商品を投入することで、事業をさらに成長させていくとしている。

○糖質・プリン体70%オフの缶ビール

サッポロ生ビール ナナマルは、糖質・プリン体を70%オフにした生ビール。同社によれば、糖質とプリン体ふたつのオフを訴求するビールは日本初。担当者は「生ビール本来のおいしさを我慢せず、でも身体にも気を遣いながら、晴れ晴れとした気持ちでお飲みいただける商品です。良質な素材が生み出す飲みごたえをお楽しみください」と説明する。

発売日は10月17日で、パッケージは350ml缶 / 500ml缶で展開。アルコール分は5%。価格はオープン、350ml缶の店頭価格は、黒ラベルと同等(=226円ほど)になる見込み。

○スパイスを使用した甘くないソーダ

サッポロ クラフトスパイスソーダは、食事を引き立てる”甘くない美味しさ”を追求したRTD(栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料)。レモンピール、ジンジャー、コリアンダーなどを漬け込み、爽やかな風味を引き出したスパイススピリッツを使用している。発売日は9月12日で、参考小売価格は350ml缶が168円、500ml缶が229円。

○ビール、RTDのカテゴリで市場を上回る成長

同社常務執行役員 マーケティング本部長の武内亮人氏は、2023年のマーケティング方針について「個性的なビールブランド+新市場を創造する新しいブランドにより、お酒の新たな魅力を提案しております。1-7月には主要ブランドの「黒ラベル」を軸にした新TVCMを打ち、フェス協賛などを通じてビールの魅力化を推進してきました。また新市場の創造に向けて、国産ホップのソラチエースを用いたビールを発売したほか、「ニッポンのシン・レモンサワー」(3月発売)の売れ行きも好調です」と紹介する。

1-7月の販売実績については、ビール、RTDのカテゴリで市場を上回る成長ができていると評価する。「年初に立てた計画に対して順調な進捗です。RTDについては過去最高売上も期待できる水準になっています」と武内氏。そして下期に投入する2つの新商品についても全力で訴求していく、と力を込めた。

新市場を創造「身体を気遣う人のビール」「料理を引き立てるRTD」
同社ビール&RTD事業部長の永井敏文氏は、この時期に2つの新商品を投入する狙いについて説明した。まずは市場背景について「コロナ禍を経て、消費者の間に身体を気遣う意識が高まっています」と分析する。実際、ここ数年でオフ系・ゼロ系のビールテイスト市場の販売規模は右肩上がりに拡大中だ。

サッポロ調べによれば、消費者は「身体への負担で気にしているもの」に糖質、カロリー、プリン体を挙げている。そして「プリン体がオフ・ゼロのビールがあれば買いたい」と答えた人の割合は60%に達した(2023年3月サッポロ調べ、n=180)。折しも2023年10月には酒税改正が実施される。市場では「新ジャンル」から「ビール」への流出が予想されており、サッポロでもこのタイミングを狙ってサッポロ生ビール ナナマルを投入する。

質疑応答でなぜ「糖質・プリン体70%オフ」にしたのか、と聞かれた永井氏は、糖質オフ、プリン体オフ、といった商品を日頃から購入している”オフ系ユーザー”をターゲット層に想定しているため、と回答。「ゼロ系ユーザーとオフ系ユーザーでは、その意識も全然違います。ゼロ系ユーザーは、とてもストイック。でもオフ系ユーザーは、健康に気を遣いながらもビールを楽しみたいというユーザーが多い。新商品では、そこを狙っていきたいという思いがあります」と説明した。

今回の酒税改正はRTDの価格に影響しない。しかし新ジャンルの価格が上がるため、相対的にRTDが買いやすくなる。この機会をとらえ、同社では新たな食中酒を提案する。

永井氏は「現在、食中RTDで流行っているものには無糖のチューハイがあります。すっきり甘くない味わいが食事の邪魔をしないと人気です。そこでサッポロでは、その一歩先を行く提案をしたい。サッポロ クラフトスパイスソーダは、料理を引き立たせます。ここが訴求のポイントです。食事中に飲むことで、食事も食中酒も相乗効果で美味しくなる、そんなRTDに仕上げました」と強調する。具体的な食べ合わせについては、個人的な感想と断ったうえで「例えば、生姜焼きや麻婆豆腐などの料理と一緒に飲むことで、料理の旨さ、深みが増したように感じられるでしょう」と説明した。

○「ビールの魅力化」を推進

サッポロでは、引き続きビールの魅力化推進にも注力していく。その主力となるのは『サッポロ生ビール黒ラベル』。2023年も引き続き、生の旨さをリアルに体験できる機会を積極的に創出するとともに、若年層を中心とした新規顧客の開拓にも力を入れている。

高価格帯ビールカテゴリのヱビスブランドは、市場のトレンドを上回って好調に推移している。永井氏は「2023年も幅広い顧客接点を活かしたアプローチでブランド全体の価値向上を図っていきます」と説明した。

ヱビスの物語に触れながら新しいビールの楽しみ方を発見できる施設「YEBISU BREWERY TOKYO」(東京都渋谷区)も2024年4月の開業に向けて準備を進めている。詳細については後日発表するとのこと。このほか恵比寿ガーデンプレイスでは8月25日~9月3日の日程で「YEBISU BEER HOLIDAY(ヱビスビアホリデー)」を開催する。ヱビスブランド樽生7種類を用意。「ヱビスビール発祥の地で多彩なヱビスと過ごす、とっておきの幸せ時間」をテーマに、恵比寿の街ならではの魅力的なヱビス体験を提供するとしている。

近藤謙太郎 こんどうけんたろう 1977年生まれ、早稲田大学卒業。出版社勤務を経て、フリーランスとして独立。通信業界やデジタル業界を中心に活動しており、最近はスポーツ分野やヘルスケア分野にも出没するように。日本各地、遠方の取材も大好き。趣味はカメラ、旅行、楽器の演奏など。動画の撮影と編集も楽しくなってきた。 この著者の記事一覧はこちら