デジタル商品券、「抽選」でライバルに勝つには緻密な分析と作戦が重要

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「よしわかった。われわれはデジタル商品券に申し込むぞ」「ラジャー!」
今年6月、購入希望者の抽選受付を開始した東京・新宿区の「プレミアム商品券2023」を巡る鈴木家の作戦会議の様子です。今回の話、新宿区の住民ではないみなさんにもきっと役立つ話題ですのでご心配なく。まあお読みください。
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新宿区では昨年に続き、今年も地元の商店や飲食店を応援するお得なプレミアム付き商品券を発売することになりました。前回の話は別の記事で紹介しましたが、30%のプレミアムがついた13,000円分の商品券を一冊10,000円で販売するという人気企画です。
そしてここからが本題なのですが、人気企画だけあって毎回、購入は抽選制で当たった分しか買えません。昨年は家内と娘が3冊当せんした一方で、わたしは2冊しか当たらずとても残念な気持ちがしたものです。
その募集ですが、今回から新しい取り組みが始まりました。前回までの紙の商品券以外にスマホ決済するデジタルの商品券が導入されたのです。
そこで冒頭のシーンに戻ります。発行数は合計30万冊。新宿区民は希望冊数を最大5冊まで選んで応募します。鈴木家の場合、当然全員が5冊を申し込むのですが、問題はそこから何冊当せんするかが毎回の勝負です。
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新宿区の人口は約35万人ですが全員が申し込むわけではありません。あくまでこれまでの感覚ですが、10万人程度が申し込んで2~3冊当せんするというのが過去の結果でした。
しかし今回、ここに新たな条件が加わります。発行するのが紙の商品券が12万冊、デジタル商品券が18万冊と申し込みの段階で道が2つに分かれるのです。申し込めるのは紙かデジタルかどちらか。ここで作戦が必要になります。
「当せん確率が高いのはどちらだ?」
この問題に答えを出さなければ、先に進むことができないのです。ということで早速、比較を始めました。
当たる本数が多いのはデジタル商品券で数は1.5倍です。しかしデジタル商品券には使いやすいというメリットがあります。紙の商品券を持ち歩かなくても、スマホ決済と同じようにピッとやれば購入できるので、それを考えると人気が集まりそうです。
さらに言うと新宿区の商品券に限った話なのですが紙の商品券は台紙から取り外すのが難しい。ミシン目がそれほど大きくないせいで毎回、支払いの際に切り離すのが大変なのです。そう考えると「人気はデジタルに集まるかも…」というのがまずもっての第一印象でした。
「でもキャッシュレスに慣れていない高齢者はみんな紙に応募するんじゃないの?」
とうちの娘。それは一理あります。うちの場合は両親の分も代筆して応募してあげるのですが、そちらは最初から紙の商品券を狙ってはがきで応募します。80代の高齢者にデジタル商品券は無理というものです。
ここでポイントになるのが高齢者人口です。新宿区は実は結構若い人口が多い自治体です。65歳以上の高齢者人口は6万7,000人。人口全体の2割弱。言い換えると8割はスマホ世代というのが新宿区の競争状況。ますますデジタルには注意が必要です。
そこで実際にそれぞれの応募を試みることにしました。まずは両親の応募を代筆します。はがきに記入するのは住所と名前と希望冊数だけ。比較的簡単です。
次にスマホから応募してみます。これがはがきよりも簡単に応募できるのであれば募集はデジタルに集中するでしょう。
それでやりはじめてわかったのですが、まず最初に応募しようと思ったらスマホに専用アプリをダウンロードしなければなりません。そのうえでアプリ上で初期登録をして、最後にようやく応募できる。実に大変だということがわかりました。
「これはどう考えても紙の商品券の申し込みのほうが簡単だな」「ということは?」
「競争率が高いのは発行枚数が少なくて応募が簡単な紙の商品券だ。われわれは今回、デジタル商品券に応募するぞ」「ラジャー!」
というのが冒頭のシーンです。ちなみにラジャーの意味がわからない世代の方はガッチャマンでググってみてください。
結果は予測した通りでした。デジタル商品券を申し込んだ人は全員が申し込み分全部当せんしたそうです。紙の商品券を申し込んだうちの家族の高齢者は一人が4冊、もう一人が3冊とこれも結果は前回よりもよかった。
いずれにしても抽選に応募しようと思ったら当選確率を緻密に推測することが重要だというのが今回のレッスンです。

Sirabeeでは、戦略コンサルタントの鈴木貴博(すずきたかひろ)さんの連載コラム【得する経済学】を公開しています。街角で見かけるお得な商品が「なぜお得なのか?」を毎回経済理論で解説する連載です。
今週は「抽選応募の際、当せん確率を推測」をテーマにお届けしました。