「達成感と寂しさ半分半分」卒業間近の小学生 黄色いカバーを6年間付け続ける

「贈ってくれた人の気持ちを大事にしたい」。沖縄市立比屋根小学校6年生の呉屋璃澄(りち)さん(12)は、入学時に配られた黄色いランドセルカバーを6年間付け続けている。カバーは低学年のうちにぼろぼろになったり、外されたりするのが大半だが、交通安全のボランティアや校長は「6年間付け続ける子に会ったことがない」と驚く。卒業まであと1カ月半。現在中学受験の真っ最中で、将来は患者に寄り添う優しい医師を目指す。(社会部・松田駿太)
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呉屋さんは大の黄色好きで、靴やTシャツなども黄色の持ち物が多い。ランドセルカバーは色もそうだが、エイサーをモチーフにした同市のマスコットキャラクター「エイ坊」のデザインも気に入っている。
「ランドセルカバーを使い続けることで、他の物も大切にしたいと思うようになった」と話す。
朝の交通安全ボランティアで、呉屋さんの登校を1年生の時から見守ってきた仲里一美さん(74)は「この子は高学年になっても横断歩道で左右をしっかり確認する。ランドセルカバーも目立つから、誰よりも交通事故に遭わないよね」と太鼓判を押す。

同小の長間清人校長は30年近い教員人生で、6年間ランドセルカバーを付ける児童に初めて出会ったという。1学期の終業式では全校児童に呉屋さんを紹介した。「当たり前のように物を大切にする姿は、後輩たちのお手本になっている」とたたえる。
ランドセルカバーの配布を担当する同市市民生活課の稲田光彦係長は「毎日背負い、友だちと遊んだり、大好きな先生と話したり、6年間の思い出がランドセルと一緒にあったと思う。交通安全の願いが、成長に寄り添ってきたことに感極まる思い」と喜んだ。
卒業式は3月23日。呉屋さんは「6年間付け続けてきた達成感と、もう付けられないんだという寂しさが半分半分」と、ランドセルカバーをいとおしむ。将来の夢は周囲から頼られるお医者さん。「中学に進んでも身の回りの物や人を大切にできる人でありたい」と笑顔で話した。