橋のガス管路点検にドローンを活用! 垣ガスとNTT本が取り組むインフラ業界の人手不足対策

大垣ガスとNTT西日本は8月8日、全向衝突回避センサーを搭載した小型ドローンによる橋梁ガス管路の点検を実施した。労働力不足によって設備点検が難しくなっているインフラ業界において、ICTを導入することで安全性向上・作業コスト低減を目指す。

○源橋のガス管路点検に小型ドローン

少子高齢化の進行を受け、あらゆる業界がいま人手不足の悩みを抱えている。とりわけその影響を強く受けているのがインフラ業界だ。高度経済成長期に整備された社会インフラが耐用年数とされる50年を超え、さまざまな設備の老朽化が進んでいる。安全な社会生活実現のため、これらの定期的な点検、必要に応じた補修や建て替えは最優先で求められるが、労働力が圧倒的に足りず今後のインフラ維持が危ぶまれているのが現状と言える。

このような状況において、各社は設備とサービス品質の維持を目指し、ICTを活用した“スマート保安”による安全性の確保、点検品質の向上、作業コスト低減への取り組みを進めている。8月8日、垣ガスはNTT本グループおよびNTTグループの各社と連携。岐県垣市の「源橋」にて小型ドローンを利した橋梁ガス管路の点検を実施した。

源橋は、岐県垣市宝和町と垣市桧町をつなぐ全長約371mの橋梁だ。徒歩による目視でもかなりの時間が掛かる源橋の点検だが、ドローンを活用することで移動せずともガス管路の細部まで、かつ河川にかかる箇所まで効率的に確認が行われていた。

高画質と衝突回避センサーを備えた「SKYDIO 2」
今回の点検で利用された小型ドローンは「SKYDIO 2」。102cmの狭隘部にも侵入できる小型サイズ、180度という広い可動域を有する4K・1,200万画素のメインカメラを備える。飛行時間の目安は約23分、最大通信距離は200mとなり、さまざまなインフラ設備の点検が可能だ。

その大きな特長は「全向衝突回避センサー (Visual SLAM)」にある。機体上下に設けられた6つの眼レンズカメラが常時360度を撮影し映像をAIで解析、自立飛行機能によって衝突を防ぐこと。この特長によって、橋梁下のようなGPSが届きにくいエリアや、強力な電磁波が発生する高圧鉄塔周辺のようなエリアでも安全な運用が行える。

大垣ガス 保安管理統括グループ GMの楠 洋平氏は、「我々が期待しているのは、やはり点検精度の向上です。日常の点検で確認できるのは目視の範囲に限られますが、真下が河川となっている点検部分のように人間が簡単に近づけないところもドローンであれば容易に確認できます」と、期待を寄せる。

大垣ガスがドローンを採用した大きな理由は、カメラの画質が高いことであるという。ガス管は経年劣化で腐食が進んでいくが、高画質で鮮明に映し出すことができれば早期に劣化を発見することが可能だ。

「我々ガス業界全体では、いまスマート保安の推進を進めています。ドローンの活用は、ひとつの業界の流れと言えるでしょう。今後はさまざまな技術を組み合わせてDXを進め、労働力不足の解消や、より効率的な作業に繋げていきたいと考えています」(大垣ガス 楠氏)
○人手不足がインフラ業界の共通課題

NTT西日本 岐阜支店 設備部 総括担当 担当課長の鈴木亮平氏は「私たちNTT西日本でも、インフラ設備の老朽化と人手不足は大きな課題になっています。インフラ事業者は同じ悩みを抱えていることでしょう。それを解決するためのDXのひとつがドローンの活用です。今回、大垣ガスさんと一緒に取り組む機会を得ることができましたので、今後は電気や水道といった事業者さまとも連携し、デジタル技術を使ってサービス品質向上やコスト削減に繋がる取り組みを進めていきたいと思います」と、取り組みの狙いを語る。

一方でまだまだ課題もある。ひとつは、インフラ事業者ごとに点検のやり方やノウハウが異なるため、使い方を最適化させなければならないこと。もうひとつは、点検撮影に留まることなく、AIなどを活用しつつ、より高い効率化を実現することだ。

「ドローンの活用は、まだまだ私たちも試行錯誤している取り組みです。そんな中で大垣ガスさんが一緒に取り組んでくれたことには、大変感謝しています。これをきっかけに、例えば大垣市エリアのインフラ事業者全体での共同点検といった形に広がれば。そして、ひいては岐県内のインフラ業界全体の維持発展、課題解決に寄与したいというのが私の思いです」(NTT西日本 鈴木氏)