老舗デパートの、そごうと西武が米投資ファンドに売却されました。デパートがいわば「夢の国」のような場所として育ってきた昭和世代には、なんとも寂しく、残念なニュースでもあります。
今、デパートは二極化しているといわれています。地方の顔のような有名デパートが相次いで閉店する一方で、東京都心をはじめとする都市部大手の一部デパートは、コロナ明けも手伝ってインバウンドのお金持ち客が、ばんばん高額商品を購入していて、勢いを取り戻しています。その流れに乗れなかったのが、そごうと西武ということになるのかもしれません。
が、気になるのは、そごう・西武を買収したセブン&アイホールディングスは、コンビニ事業のガリバーであって、百貨店経営とは異なる戦略だったのではないかということです。
というのも、デパートに行って最初に目がいくのは、商品のディスプレーの際立ったセンスの良さや、エンターテインメントにも似た楽しさ、そして何よりも店員さんたちの働く活気と商品知識の豊富さです。
先日も某有名デパートで長時間、履いていても楽なヒール靴を探してウロウロしていたら、いかにもベテランの店員さんが近づいてきて「お探しはどのようなものですか」と声をかけてくれました。それからあれこれその店員さんと靴を履き比べて、30分ほどで納得のいく一足に巡り合うことができました。舌を巻いたのは、広い靴売り場の商品に対する知識の豊かさと、きめの細かさでした。これが百貨店の真髄(しんずい)だと思いました。
いつでも、何でもさっと買えるコンビニはなくてはならない存在です。が、一方百貨店の存在価値は、こうした店員さんたちの接客のプロ意識にあるのではないかと思えてなりません。そごう・西武の店員さんたちの今後を憂いています。(キャスター・安藤優子)