「スラムダンク」聖地の踏切に外国人殺到…観光客長時間撮影にポイ捨て 9月から平日も誘導員配置

日本代表の奮闘でバスケットボール男子W杯が盛り上がりをみせる中、バスケ漫画の名作「スラムダンク」の“聖地”で悲鳴が上がっている。作品に登場する江ノ電・鎌倉高校前駅(神奈川・鎌倉市)近くの踏切に連日外国人観光客が詰めかけ、車道での長時間の写真撮影やゴミのポイ捨てなどが深刻化している。近隣住民は「マナーだけは守ってほしい。いつになれば収まるのだろうか」と頭を抱えている。(坂口 愛澄)
江ノ電・鎌倉高校前駅から徒歩30秒に位置する、通称「スラムダンクの踏切」には連日、多くの外国人観光客が殺到し、迷惑行為が相次いでいる。記者が「どこから来ましたか?」と問うと、インドネシア、中国、韓国などアジア各国の名前があがった。
8月下旬の午後1時すぎ、湘南の青々とした海をバックに遮断機が下りると、外国人観光客らは自撮り(セルカ)棒や一眼レフを手にし、車道で写真撮影を開始。中には「フー!」と絶叫する男性もいた。
この踏切は、1993年に放送されたアニメ版のオープニングに登場する。しかし、聖地として再び注目を浴びるようになったのは、昨年12月に日本公開された映画「THE FIRST SLAM DUNK」の公開以降。韓国では今年1月、中国でも同4月に公開され、いずれも大ヒットを記録した。鎌倉市の担当者は「ここまでの反響は予想外。2、3年前から徐々に増加傾向にあったが、映画公開後は急激に増えました」と話した。
車道に出ると、登場シーンと同じ画角で撮影することができるため、観光客らは車を全く気にかけず隙を見計らっては車道へ飛び出す。キャリーバッグを引きずりながら撮影する人も見られた。近隣住民はいら立ちを隠せず、「周りを全く見ていないので危ない。自宅駐車場の入り口に外国人が立ち止まっていて困ってます」(50代女性)。1時間ごとに約100人の外国人観光客が行き交い、クラクションが止まらない時間帯もあった。1組あたり約20分程度滞在し、約3時間の取材で日本人観光客はわずか15人しかいなかった。
鎌倉警察署には苦情や通報の電話がかなり届いており「人がかなり集まっているといった内容が多く、6月は19件、夏休み期間に入った7月は37件でした」(担当者)。人出が多い土日と祝日は市が交通誘導員を配置するなどしていたが、平日も同様な混雑がみられるため対策を強化。9月1日からは市交通安全対策協議会と江ノ電が費用を折半して、平日も午前10時から午後6時まで誘導員を配置することにした。「観光客に来ないでくださいというのはできないので、ごみのポイ捨てなど、どう解決していくか自治体と相談しています」(市担当者)。
中国政府は8月10日に日本への団体旅行を解禁。訪日中国人客が本格化するのは10月以降と予想される。福島第1原発の処理水放出への反発でキャンセルも相次いでいるとされるが、聖地でのトラブルはいたちごっこが続きそうだ。
◆スラムダンク 1990年~96年に「週刊少年ジャンプ」で連載されたバスケットボール漫画。主人公の桜木花道の成長と挑戦を描いており、国内外に多くのファンがいる。昨年12月に公開されたアニメーション映画「THE FIRST SLAM DUNK」は、作者の井上雄彦さんが監督・脚本を務め、国内興行収入が148億円を突破した。