「成田は最も着陸が難しい」ホント? ホーム空港にする航空会社パイロットの“プロ技”を見た!

成田空港を拠点に、世界に航空貨物を届けている貨物専用航空会社のNCA。実は成田が「着陸が難しい空港」というのが同社のパイロットの弁です。どこが難しく、どのように対処しているのでしょうか。
成田空港を拠点に、世界に航空貨物を届けている貨物専用航空会社のNCA(日本貨物航空)。同社のパイロットがそのなかでも「就航しているなかでは、もっとも着陸が難しい空港」と話すのが、実は成田空港なのだそうです。今回、その難しさを模擬体験することができました。
「成田は最も着陸が難しい」ホント? ホーム空港にする航空会社…の画像はこちら >>NCAの747-8(乗りものニュース編集部撮影)。
今回体験したのは、NCA施設内にあるボーイング747のフルフライトシミュレーター。NCAでは2023年8月現在、実機を運用している747-8Fのシミュレーターと、かつて実機を運用していた747-400Fのシミュレーターを保有しており、パイロットや整備士が訓練を行っています。このシミュレーターは計器類はもちろんのこと、操縦動作にあわせて映像や振動で実機を再現するものとなっています。
ここで、成田空港の強風が吹くパイロット泣かせの状況を再現してもらいました。
成田空港には、ほぼ南北を向く形平行に2本の滑走路が備わります。当初計画ではこのほかに横風用滑走路が設置される予定でしたが、実現しませんでした。そのため2023年現在も、横風制限範囲内であれば、パイロットはさまざまな準備をしたうえ、この平行滑走路への着陸にトライしなければなりません。
横風時の着陸では、カニ歩きのように機首を横に向けて進入する「クラブ方式」と、機体を傾けながらラダーを逆方向に踏み込み着陸する「サイド・スリップ方式」などがあり、このふたつを組み合わせた方式などで着陸に挑むことが多いのだとか。また、適切なスピードを保たないとパス(降下角度)をキープできないので、着陸直前は、速度のコントロールにも注意を払う必要があります。シミュレーターを用いた横風の着陸では、コクピットの左手に滑走路が見える状況から進入し、着陸寸前に機体を中央に向けるシーンが見られました。
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NCAの747フルフライトシミュレーター(乗りものニュース編集部撮影)。
また、もうひとつ気流の悪さから発生するのが、予期しない強い風の動き「ウインドシア」です。飛行機は着陸寸前にはかなり速度を落としているため、風の影響を色濃く受けます。ここで大きな風の変化をうけると、機体の姿勢や速度に大きな影響を及ぼすため、細心の注意を払う必要があります。
実際にシミュレーターでパイロットの方に「ウインドシア」発生からの着陸復行(ゴーアラウンド)をお願いしましたが、エンジンパワーを最大にしても速度が下がってしまう場面も。最終的には、機体姿勢と速度を“プロのワザ”で立て直しましたが、「通常であれば着陸せず、違う手段を考えます」とパイロットが話すような場面も発生するのが、成田空港の難しさのひとつでしょう。