被災地、また濁流にのまれ 長柄の女性「やりきれない」 19年房総半島台風・豪雨で被害

4年前の台風、豪雨の被災地が再び濁流にのみ込まれた。台風13号による大雨で千葉県内は8日、各地で被害が確認されている。安房地域では道路冠水や土砂崩れが発生し、大多喜町でも国道沿いの斜面が崩れ一時片側通行になった。長柄町の一宮川沿いの道路も水に漬かり、建物への浸水被害が起きた。同町にある鵜澤理容店も被害を受け、店主の鵜澤美砂子さん(78)は「こんなことが何度もあるとやりきれない」と嘆いた。
2019年9月9日の房総半島台風(台風15号)で甚大な被害を受けた安房地域では、台風13号の接近により8日未明から大雨に見舞われた。
鴨川市によると、JR安房鴨川駅西口周辺の複数箇所で道路冠水が発生。新実入トンネルの天津側入り口も冠水した。田原地区の市道では、路肩が1カ所崩落した。
市は市内の全小中学校を臨時休校にし、鴨川中や東条小など市内8カ所に避難所を開設。土砂災害警戒区域内の住民に避難指示を出した。このほか、南房総市は富山ふれあいスポーツセンターや、ちくら介護予防センターゆらりなど7カ所に避難所を開設。三原川の水位が上昇し氾濫する恐れがあるとして、周辺の住民に緊急避難を呼びかけた。
19年10月25日の房総豪雨で、一宮川沿いを中心に浸水被害が出た長柄町。針ケ谷地区にある鵜澤さんの店も4年前の豪雨の際、高さ約80センチまで水が押し寄せた。
鵜澤さんによると、8日午前9時ごろには店の前を走る県道が冠水し始めた。店内も水に漬かり、鵜澤さんは「被害は前回ほどではないが、また泥を撤去しないといけない。これ以上雨が降らないのを願うだけです」と話した。店を一緒に切り盛りする長男の元樹さん(50)は「配管から水が逆流して店に流れてきている。こんなことが続くようでは、長柄に住んでいられない」と声を落とした。
大多喜町の国道297号八声交差点では、道路沿いの斜面から崩れた土砂が車道や歩道を覆って一時片側通行になり、そばの喫茶店は水が入り込んで20センチほど浸水した。
喫茶店を経営する男性によると、土砂や石が側溝のグレーチング(格子ぶた)を覆って辺りの排水ができなくなった。男性は「午前11時半ごろに気がついたら土砂と水があふれていた。早く何とかしてもらいたい」と話し、側溝付近の土砂を手作業でどかしていた。