栄養素不足で歯ぎしりをする?

TBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』月~木曜日の11時から放送中!
9月6日(水)放送後記
生活の知恵を授かるコーナー「スーさん、コレいいよ!」。お話を伺うのは…生活は踊る”月1レギュラー”医療ジャーナリストで医師の森田豊さんです!
9月になりましたが、まだまだ暑い日が続いています。今年は「暑さ負債」という言葉も出てきて、暑さや疲れ、脱水傾向が日々蓄積されて、体調を崩す人も出ていますので、まだまだ熱中症対策が必要です。▼先月「食事で気をつけたいこと」をやりましたが、そのときに食事についていろいろと調べていたら、興味深い最新の研究結果が他にもたくさん出てきました。▼体に直結する「食」に関することも、まだまだ明らかになっていないことも多く、日々、研究が進められています。▼今回も、医学的見地に基づきながら、みなさんに紹介していこうと思います。
▼実は、歯ぎしり自体を減らす抜本的な方法は見つかっておらず、一般的な対処法は「マウスピースをして歯を保護する」などといった「対処療法」しかありませんでした。▼しかし岡山大学が、睡眠中に歯ぎしりをする人は、食物繊維の摂取量が少ない傾向にあることを明らかにしました。▼大学生を対象に過去1か月、35種類の栄養摂取量を調査・推定し、睡眠中の歯ぎしりをしている学生としていない学生でさまざまな栄養素の摂取量を比較しました。▼その中で学生の食物繊維摂取量を比較したところ、睡眠中の歯ぎしりをする学生はしない学生よりも、食物繊維摂取量が少ないことがわかりました。▼睡眠中の歯ぎしりは歯が欠ける、歯周病が進みやすくなる、顎が痛くなるなど、口の中や周辺に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。▼今回の研究結果は睡眠中の歯ぎしりの新たな対処法、予防法になる可能性があります。
▼私たち身体には五つの感覚、すなわち五感である「視覚」「触覚」「嗅覚」「聴覚」「味覚」がありますよね。▼これらは互いに影響を与え合っていて、特に「聴覚と味覚」など、2つ以上の感覚が影響し合いながら知覚することを、最近「クロスモーダル現象」と呼ばれます。▼「クロスモーダル現象」の例としては、風鈴の音色を聞いていると涼しく感じたり、部屋の温度は変わらなくても照明を青色にすると涼しく、オレンジ系の暖色にすると暖かくなったりするように感じたりします。▼実は料理や飲み物をとる際にも、それがどんな見た目か、どの場所で食べるか、歯ごたえや香りなどの、味覚以外の要素と互いに影響しながら食べたり飲んだりしています。▼この「クロスモーダル現象」を活用して、耳に入っている情報である聴覚によって、特定の味覚を大きくさせることもできることがわかってきました。▼低音、すなわち250ヘルツでは苦みが強調され、500ヘルツくらいだと甘味、1000ヘルツを超えるくらいの高音は酸味が強調されるとのことです。また、ピアノやフルートでなめらかに連続する旋律だと、甘味に紐づきやすいなど、音域だけでなく曲調も影響すると考えられています。▼実は、広告代理店の博報堂と東京大学の共同チームが「ビールの美味しさを増幅させる音楽」を開発したようなんです。1曲目は、ビールのクリーミー感を増幅させる音楽。2曲目は、ソーダ感、炭酸感を増幅させる音楽。3曲目は、のどごし感を増幅させる音楽。▼こちらの楽曲は音楽ストリーミングサービスのSpotifyで配信されております。▼同じビールを飲んでいるのに、音楽が変わると不思議と味わいが変化するということは、新たな美味しさの体験ができそうですよね。
▼こちらも先ほど紹介した「クロスモーダル現象」が関係しているかもしれない研究結果です。▼ロンドンの研究者であるバリー・スミス教授が、ブリティッシュ・エアウェイズの機内で、ノイズキャンセリングヘッドホンをつけた場合と、着けなかった場合での機内食の味の違いを調査しました。▼すると、ノイズキャンセリングヘッドホンをつけて、機体やエンジンからの「ゴー」という継続的なノイズがない状況では、機内食をとても美味しく味わえることがわかりました。▼騒音や振動によって食べ物の「甘い」「酸っぱい」「しょっぱい」という区別がつきにくくなることがその理由ではないかと考えられています。▼ただ興味深いことに、チーズや甲殻類、トマトや豆の「うまみ」は騒音に影響されないこともわかりました。これらを食べるときは、ヘッドホンを外しても関係がないということです。▼一方、騒音環境では「苦味が増す」ということも判明しています。▼機内食を食べる機会がある際は、ヘッドホンやイヤホンを上手に使ってみましょう。